委任契約とは|混同しやすい契約との違いや契約書に必要な項目8つの紹介

委任契約とは|混同しやすい契約との違いや契約書に必要な項目8つの紹介

委任契約とは、社内で実施する法律行為にかかわる業務を外部に委託する契約方式です。社内で活用すると、スキルが必要な業務を専門家に依頼できたり、人材不足を解消できたりします。

本記事では、業務委託の一種である委任契約の委託側が知るべき項目を解説します。

類似している準委任契約や請負契約などの違いも紹介しておりますので、どの契約を選択すればよいか悩んでいるご担当者は、ぜひ最後までご覧ください。

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目次

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    委任契約の定義

    委任契約の定義

    委任契約とは、法律行為に関与する業務の遂行を委託する契約です。( 民法第643条

    第六百四十三条

    委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。

    引用: 民法|e-Gov法令検索


    たとえば、不動産から土地を購入する際に別の人に代理として、手続きを依頼する行為が挙げられます。

    本来、委任契約は 民法第648条第1項 により、特約がない限り報酬を支払う必要がありません。もし、報酬を受けると事前に定めていた場合は、 民法第648条第2項 により履行後に支払われるため、金銭トラブルを避けるためにも契約書の中で明確にしましょう。


    委任契約の具体例

    委任契約の具体例

    委任契約の定義は言葉で理解できるものの、具体的な活用場面までイメージできない方も多いのではないでしょうか。

    本章では、委任契約の具体例を2つご紹介します。

    • 税理士への税務代理
    • 弁護士への訴訟代理

    どちらも法律行為に関与する業務のため、委任契約での締結が必要となります。

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    税理士への税務代理

    税理士への税務代理は「税理士法」に関与しており、法律行為に該当するため委任契約を結びます。

    たとえば、以下の内容をもとに会社の税務業務を税理士へ委任します。

    税務申告関連
    • 所得税、法人税、消費税などの各種税務申告書の作成および提出
    • 年末調整や源泉徴収票の作成
    • 税務署との交渉や対応(例:税務調査の立ち会い)
    税務相談
    • 節税対策や資金繰りに関するアドバイス
    • 税制改正への対応提案
    税務代理
    • 税務署や市区町村との交渉や手続き代行

    会社の税務業務の遂行をまとめて実施してもらう場合は、委任契約を結びましょう。


    弁護士への訴訟代理

    弁護士への訴訟代理も、法律行為に該当するため委任契約として締結させます。

    委任事項の内容としては、以下の通りです。

    訴訟代理業務
    • 原告または被告として裁判所に提出する訴状・答弁書などの書類作成
    • 裁判所での代理出廷
    • 相手方との和解交渉
    法律相談
    • 訴訟の法律的な助言
    • 訴訟戦略の立案
    • 証拠の収集および準備のアドバイス
    書類作成
    • 裁判所などへの提出書類

    弁護士への訴訟代理では、正当な裁判を進めるために弁護士への委託契約を結びます。


    委任契約と類似している他の契約との違い

    委任契約と類似している他の契約との違い

    次に、委任契約と類似している他の契約との違いを解説していきます。

    委任契約 法律行為に関与する業務の遂行を目的とした契約
    準委任契約 法律行為以外の行為に関連する業務の遂行を目的とした契約
    請負契約 完成した仕事(例:成果物)や、その結果に対して報酬を支払う契約
    派遣契約 派遣会社が労働者を他の企業に派遣し、派遣先企業の指揮命令下で業務を遂行する契約

    まずは自組織が委託したい業務内容を洗い出しましょう。委任契約との契約形態の違いについて、次に詳細を解説していきます。


    準委任契約と委任契約の違い

    委任契約 準委任契約
    法律行為に関与する業務の遂行を目的とした契約 法律行為以外の行為に関連する業務の遂行を目的とした契約

    準委任契約とは、法律行為以外の行為に関連する業務の遂行を目的とした契約です。( 民法第656条

    委任契約との大きな違いとして、業務の遂行として委託できる内容が「法律行為以外」となることが挙げられます。

    法律行為に関与している場合は「委任契約」、関与していない場合は「準委任契約」となります。

    たとえば、委任者が自社のシステムの運用管理を受任者に依頼する場合は、法律行為以外の業務遂行となるため準委任契約が適切です。


    請負契約と委任契約の違い

    委任契約 請負契約
    法律行為に関与する業務の遂行を目的とした契約 完成した仕事(例:成果物)や、その結果や結果に対して報酬を支払う契約

    請負契約とは、完成した仕事(例:成果物)や、その結果に対して報酬を支払う契約です。( 民法第632条

    第六百三十二条

    請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

    引用: 民法|e-Gov法令検索


    委任契約と請負契約は、外部に委託する目的が「業務の遂行」か「成果物の完成」かによって異なります。

    「成果物の完成」を目的としている場合は請負契約となり、「業務の遂行」の場合は委任契約として契約を結びます。


    派遣契約と委任契約の違い

    委任契約 派遣契約
    法律行為に関与する業務の遂行を目的とした契約 派遣会社が労働者を他の企業に派遣し、派遣先企業の指揮命令下で業務を遂行する契約

    派遣契約は、派遣元から労働者を受け入れる際に必要な契約です。

    委任契約と派遣契約も、契約を取り交わした両者の関係性が異なります。派遣契約は、派遣会社が労働者を他の企業に派遣し、派遣先企業の指揮命令下で業務を遂行する契約です。委任契約と名称は似ていますが、派遣契約は委任ではありません。

    派遣契約の場合、派遣先の上司は派遣スタッフに対して、業務に関する直接の指揮命令ができます。派遣契約を結んだ後、それぞれの責任分担は以下の通りです。

    • 業務遂行責任:派遣労働者
    • 具体的な業務指示や業務管理責任:派遣先企業
    • 派遣労働者の雇用責任:派遣元企業

    一方、委任契約を含む業務委託契約の場合は、契約を交わした後も指揮命令権が存在しないため、直接の指導は違法行為となります。


    委任契約の契約書に必要な8つの項目

    委任契約の契約書に必要な8つの項目

    ここでは、委任契約の契約書に記載するべき項目や記入例を紹介します。

    ※本章で記載されている契約書の文章は、一般的な参考例として掲載しています。実際の契約書作成は、個々の状況や法的要件が異なるため、ご使用はお控えください。

    ※本記事の内容をそのまま流用された場合に生じるいかなる問題や損害に関しても、当サイトでは責任を負いかねるため、ご了承ください。

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    業務内容

    契約書には、委任する業務内容や範囲を記載しましょう。具体的に記載すると、双方の認識の擦り合わせができるだけでなく、契約後のトラブル防止にもつながります。

    もし、今後契約する中で業務内容の変更などが発生する場合は、その旨も合わせて記載しておくのがおすすめです。

    第○条(委任業務)

    1. 委任者は受任者に対し、●●●●に関する業務(以下「本件業務」という。)を委任し、受任者はこれを受任する。

    2. 委任者及び受任者は、本件業務の内容を、書面による合意により変更ができる。

    3. 受任者は、善良なる管理者の注意をもって本件業務を遂行するものとする。


    契約期間

    委任契約の期間も契約書の中に記載します。業務内容によっては、「業務を長く続けていて欲しい」と考えてしまうかもしれませんが、「〇〇年〇〇月〇〇日まで」と日時を明確に提示しましょう。

    契約延長を視野に入れている状態の場合は、事前に契約書に文言として添えておくと更新の際にスムーズに進められます。

    第○条(契約期間)

    本契約の有効期間は、令和●●年●●月●●日から令和●●年●●月●●日までとする。

    期間満了の1ヶ月前までに別段の意思表示がない場合、本契約は1年間自動更新されるものとし、以後も同様とする。


    契約解除に関する取り決め

    民法第651条第1項 では、「委任は、各当事者がいつでもその解除ができる」と記載されています。今後の契約の中でも契約解除が発生する可能性もあるため、事前に契約書に記載しておきましょう。

    第○条(契約解除)

    委任者及び受任者は、相手方が次の各号のいずれかに該当する場合、本契約を解除ができる。

    1. 本契約に違反し、相当な期間を定めて催告したにもかかわらず、是正しないとき

    2. 破産手続開始等の申立てを受けたとき

    3. 本契約を継続しがたい重大な事由が生じたとき

    本契約の解除は、損害賠償の請求を妨げないものとする。


    報酬金額と支払方法

    委任業務に対する報酬金額と支払方法も契約書に記載します。金額などは双方の同意の上で契約を進める必要があるためです。

    着手金の有無や支払いタイミングなども事前に細かく決めておくと、後々のトラブルを防げます。

    第○条(報酬及び支払方法)

    委任者は受任者に対し、本件業務の報酬として以下のとおり支払うものとする。

    1. 報酬額:月額金●●●円(消費税別)

    2. 支払期日:毎月末日締め、翌月15日まで

    3. 支払方法:受任者が指定する下記銀行口座への振込

    振込先は以下のとおりとする。

    (振込口座情報)

    振込手数料は委任者の負担とする。


    知的財産権

    委託する業務の中で成果物が発生する際、著作権を含む知的財産権の所在地を明確にする必要があります。

    もし成果物の納品後に委託側に知的財産権がない場合は、使用の制限がかかります。

    第○条(知的財産権)

    本件業務に関連して受任者が作成した成果物に関する一切の知的財産権(著作権、特許権、商標権等を含む。)は、受任者に帰属するものとする。

    委任者は、前項の知的財産権を利用する場合、受任者の事前の書面による承諾を得るものとし、その対価は別途協議して定めるものとする。

    受任者は、委任者に対し、合理的な範囲で著作者人格権を行使しないよう努めるものとする。ただし、受任者の人格権が重大な侵害を受ける場合には、この限りではない。


    諸経費

    業務遂行中の諸経費に備えて、委託側か受託側のどちらが負担するか、事前に決めておきましょう。

    諸経費の範囲も合わせて定めておくと、契約前に双方の認識を揃えられるため、金銭に関するトラブルの発生を防止できます。

    第○条(諸経費の負担)

    本件業務の遂行に必要な諸経費の負担は、以下のとおりとする。

    1. 委任者負担:業務に必要な機器、ソフトウェア、備品等の費用

    2. 受任者負担:通勤費用、通信費用等の一般管理費

    前項に定める以外の費用が発生する場合は、委任者と受任者が協議の上、負担者を決定するものとする。


    秘密保持契約

    委任契約と同時に、秘密保持契約も締結しておきましょう。秘密保持契約とは「業務に使用する自社情報を社外に開示するのを禁止する契約」です。

    業務委託を進める中で、会社の情報を渡す場面も出てきます。万が一自社の情報を外部に漏らされると競合に知られたり、社員の個人情報が悪用されたりするなどの影響が考えられます。

    外部漏洩を未然に防ぐためにも、秘密保持契約も合わせて相手に提示しましょう。

    第○条(秘密保持)

    委任者及び受任者は、本契約に関連して知り得た相手方の情報を、第三者に開示・漏洩してはならない。

    前項の義務は、本契約終了後も3年間継続するものとする。


    損害賠償

    契約時に締結した内容から違反した行為や不正が発覚すると、程度によっては損害賠償の対象となります。

    契約内容から逸脱した行為や不正を防止するためにも、損害賠償の条件や算出方法、予定金額は契約書に記載しておきましょう。

    第○条(損害賠償)

    委任者及び受任者は、本契約に違反し、相手方に損害を与えた場合、その損害を賠償するものとする。

    前項の損害賠償の範囲は、相手方に発生した直接かつ通常の損害に限るものとし、その上限額は、第○条に定める月額報酬の3ヶ月分相当額とする。


    委任契約を締結する前の注意点

    委任契約を締結する前の注意点

    最後に、委任契約を締結する前に注意するべき点を2つ紹介します。

    • 契約締結前に条件を決定する
    • 委任契約が3ヶ月以上の場合は収入印紙を用意する

    契約締結前に条件を決定する

    委任者と受任者で契約締結前に、条件を話し合って細かく決定しましょう。契約書に不明瞭な状態で契約内容を記載していると、後々のトラブルに発展する可能性があるためです。

    たとえば、契約内容が曖昧な状態で業務を続けると、両者間で以下の認識の違いが発生してしまいます。

    委任者(発注側)の主張 受任者(請負側)の主張
    「この業務を頼んだら、関連する〇〇の作業も含まれているのは当然」 「明確に指示されていない作業は対象外」「追加の要望は、別途契約が必要」

    認識の違いによるトラブルを避けるためにも、契約内容はミーティングを介して十分に擦り合わせましょう。


    委任契約は収入印紙が必要な場合がある

    委任契約を締結する際は、原則として印紙用紙は不要とされています。しかし、第7号文書に該当可能性もあるため、注意が必要です。

    第7号文書には、1通につき4,000円の税額がかかります。委任契約を締結する機会が多い場合は、収入印紙代の予算も確保することをおすすめします。


    委任契約が適している場面を理解して有効活用しよう

    委任契約が適している場面を理解して有効活用しよう

    委任契約とは、社内で実施する法律行為にかかわる業務を外部に委託する契約方式です。たとえば、会社の税務関係を税理士に委任するなどが挙げられます。

    自社の法律行為に関与する業務の委託を視野に入れている方は、本記事を参考に委任契約を活用してみてはいかがでしょうか。

    委任契約が適していない場合に遭遇した場合は、準委託契約を視野に準委任契約も視野に入れてみましょう。

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