コアコンピタンスとは
コアコンピタンスとは
コアコンピタンスとは、他の企業が真似することができない能力のことです。
Core(コア)は「核」を意味し、Competence(コンピタンス)は「能力」や「力量」、「適正」を意味しています。すなわち、企業が持つさまざまな能力のうち、「企業の核となる能力」がコアコンピタンスというわけです。
コアコンピタンスを具体的に言い表すならば、「市場における競合他社が決して真似できない能力」や「競合他社を圧倒するほど高レベルな能力」となるでしょう。
また、コアコンピタンスと認められるためには、以下の3つの条件を満たさなくてはなりません。
- 顧客に対し何らかの利益を提供できる能力であること
- 競合他社が真似することができない、または真似しにくい能力であること
- 複数の製品や市場に対応することができる能力であること
自社が保有する能力がこれら3つの条件を満たしていれば、その能力はコアコンピタンスであるといえます。
コアコンピタンスを有する企業は、競合他社に対して市場における差別化が図れ優位性を保つことができるため、成長を続けることが可能になります。
そもそもコアコンピタンスの概念は、経営学者であるゲイリー・ハメル氏とC.K.プラハラード氏が「ハーバード・ビジネス・レビュー」に寄稿した論文で提唱したことで誕生しました。
その論文の内容は後に『コア・コンピタンス経営(The Core Competence of the Corporation)』として出版され、コアコンピタンスという考え方が世に広まるきっかけとなったのです。
コアコンピタンス経営とは
コアコンピタンス経営とは
経営学者であるゲイリー・ハメル氏とC.K.プラハラード氏が提唱した「コアコンピタンス経営」を簡潔に表すと、『自社の核となる技術・能力を活用した経営』となるでしょう。
コアコンピタンス経営は、特に“ものづくり”を行っている企業にとって重要な経営手法といえます。
コアコンピタンスは、競合他社が簡単にコピーできるものではありません。ものづくり企業の場合、市場において「差別化」が重要な意味を持ちますので、コアコンピタンス経営が最適な方法であるといえるのです。
コアコンピタンス経営の手法は以下の3点と考えられています。
- 自社のコアコンピタンスを正確に把握する
- 自社のコアコンピタンスを強化する
- 新たなコアコンピタンスを創造する
この3点を通じて企業を長期的かつ安定的に成長させることが、コアコンピタンス経営の目指すものといえるでしょう。
コアコンピタンス経営に必要な3つの条件
コアコンピタンス経営に必要な3つの条件
先ほどコアコンピタンスの説明の中で、「コアコンピタンスとして認められるための3つの条件」を挙げました。この3つの条件は、コアコンピタンスの特徴でもあり、そのままコアコンピタンス経営に必要となる条件にもなります。
改めて、3つの条件を確認しておきましょう。
- 顧客に対して何らかの利益を提供する能力
- 競合他社が真似できない、または真似されない能力
- 複数の製品や市場に対応できる能力
コアコンピタンス経営には、この3つの条件が必要となりますので、それぞれについて解説していきます。
条件(1)顧客に対して何らかの利益を提供する能力
条件(1)顧客に対して何らかの利益を提供する能力
自社の持つ能力が他社より優れていた場合であっても、顧客に対して利益を提供できないものであれば、市場で生き残ることは困難です。
当然のことながら、事業を成功させるには“顧客”が必要です。顧客に対して、自社の能力を活用して製品やサービスを開発したとしても、利益が提供できなければ取引は停止されてしまうでしょう。その結果として、自社も利益を得られなくなってしまいます。顧客に利益を提供できなければ、自社も利益を獲得できませんので、事業の維持や拡大は困難となるわけです。
言い換えるならば、自社が持つ独自の技術や能力を活用し、顧客に利益を提供できる製品やサービスを開発することが、コアコンピタンス経営には必要な条件なのです。
条件(2)競合他社が真似できない、または真似されない能力
条件(2)競合他社が真似できない、または真似されない能力
自社が独自の能力を持っていたとしても、競合他社にいとも簡単にコピーされてしまうようであれば、企業経営は窮地に陥ってしまいます。
競合他社が参入するハードルが低い分野で、自社の能力を簡単に真似できるものであるならば、それは自社独自の能力とは呼べません。企業は常に市場に出てくる他社の製品やサービスを観察しています。そのため、ヒットした製品やサービスを見つければ、改良を加え、より良い製品やサービスとして市場に出してくる可能性があるのです。
市場において、競合他社よりも圧倒的な優位性を維持するためには、誰もが簡単には思い浮かばない斬新な能力でなければいけません。
例えば、長年積み重ねて築き上げた「熟練の技術」は、競合他社が簡単に真似できるものではないためコアコンピタンスになり得ます。
競合他社が容易にコピーできない能力は、コアコンピタンス経営を進めるうえで欠かせない条件だといえるでしょう。
条件(3)複数の製品や市場に対応できる能力
条件(3)複数の製品や市場に対応できる能力
市場は常に動いていますので、現在ヒットしている製品が今後もヒットし続けるとは限りません。そのため、企業は常に新製品や新サービスの開発に力を入れています。
自社の能力が、たとえ競合他社が簡単に真似できない能力だったとしても気を抜けません。特定の市場で1つの製品やサービスを作るためだけにしか活用できない場合には、その能力は市場における価値を失ってしまうからです。
例えば、特定の市場にしか対応できない製品やサービスの場合、その市場が消滅してしまうと、能力を失うことになるでしょう。また、自社の能力を活用して1つの製品やサービスしか作れないのであれば、その製品やサービスが売れなくなってしまうと、その能力は価値を失います。
特定の市場を失ったとしても、異なる市場においても売れる製品やサービスであれば、リスクヘッジを図ることが可能です。複数の製品や市場に対応することができる普遍的な能力が、コアコンピタンス経営には必要だといえるでしょう。
コアコンピタンス経営のメリット
コアコンピタンス経営のメリット
コアコンピタンス経営の概要と条件について説明してきましたが、ここからは、コアコンピタンス経営を導入した場合のメリットについて解説していきます。
コアコンピタンス経営のメリットとしては、以下の3つが挙げられます。
- 市場の変化に対応しやすくなる
- 新たな事業を創出しやすい
- 経営の長期的な安定が図れる
コアコンピタンス経営を導入することで得られるこれらのメリットについて、解説していきましょう。
メリット(1)市場の変化に対応しやすくなる
メリット(1)市場の変化に対応しやすくなる
コアコンピタンスとは、特定の製品やサービスを指しているわけではありません。コアコンピタンスは、製品やサービス開発の根幹となる技術や能力のことです。そのため、市場が変化した場合でも、変化に合わせて柔軟な対応ができるのです。
市場のニーズに応じ、技術や能力の活用方法を柔軟に変化させ、多方面に応用することができれば、市場の急激な変化が起こったとしても業績が急に悪化してしまう可能性は低いでしょう。
つまり、コアコンピタンス経営は市場の変化に対応することができ、リスクの軽減も図れるのです。
メリット(2)新たな事業を創出しやすい
メリット(2)新たな事業を創出しやすい
技術や能力は、特定の分野だけで活用されるものではありません。事業の分野が変わった場合でも、自社の技術や能力を活用することは可能といえます。
例えば、富士フイルムはもともと、フイルムの精密技術を扱う会社でしたが、フイルムに利用していたナノテクノロジーを活用して美容分野への進出を果たしました。このように、自社の技術や能力を他の分野で応用することで、新たな事業が創出できることもあるわけです。
さまざまな業界と連携して技術提供を行うことで、製品やサービスなどの新たな事業を創出することも、コアコンピタンス経営を導入することで可能になるといえるでしょう。
メリット(3)経営の長期的な安定が図れる
メリット(3)経営の長期的な安定が図れる
製品やサービスを提供する場合には、故障や不具合が見つかってしまうこともあるかも知れません。その故障や不具合が見つかった際に、顧客から「もう不要だ」と思われてしまうと、競争力を失い市場から消えてしまうことも考えられるでしょう。
一方で、コアコンピタンスは自社の核となる能力ですので、企業内で共有されている限りは失われることはないのです。
コアコンピタンス経営は、自社独自の技術や能力を活用して経営を行う手法です。確固たる技術や能力を活用し、新たな製品やサービスを作り出していければ、長期的に利益を出し続けることができるため、経営の安定を図ることができるのです。
コアコンピタンス経営のデメリット
コアコンピタンス経営のデメリット
コアコンピタンス経営のメリットに続いて、デメリットについても見てみましょう。コアコンピタンス経営のデメリットは、以下の通りです。
- 技術の陳腐化
- 技術者離れの影響を受けやすい
これら2つのデメリットについて、それぞれ解説していきます。
デメリット(1)技術の陳腐化
デメリット(1)技術の陳腐化
コアコンピタンス経営の根幹となるのは、企業の核となる技術といっても過言ではありません。根幹を成す独自の技術があれば、市場で優位性を保つことは可能です。
しかし、どのような技術でも時代が移り変わり、進歩していくことで、段々と陳腐化してしまいます。
コアコンピタンスは時代の移り変わりや進歩にも柔軟な対応が可能ではありますが、特定の技術の強みに依存している場合、大きな変化への対応が遅れてしまい、対応ができなくなる可能性もあるので注意が必要です。
時代の流れや市場の変化、技術の進歩など大きな変化があった場合に備え、視野を広く持って新しい技術への投資を行うようにしましょう。
デメリット(2)技術者離れの影響を受けやすい
デメリット(2)技術者離れの影響を受けやすい
コアコンピタンスの根幹を成す技術は、それだけが存在していても意味はありません。技術を扱い、活用することができる技術者がいてはじめて役に立つものです。
自社の技術が、現在在籍している技術者によって成り立っている場合、技術者の退職や離職によってコアコンピタンスを失ってしまう可能性があります。企業経営の先行きに不安がある、技術者の待遇に問題がある、働き方への不満を募らせている、といった場合に技術者離れが起きてしまうことも考えられるでしょう。
また、近年は深刻な人手不足もあり、技術者をすぐに確保することも難しい状況にあります。技術者が納得のいく働き方や、仕事へのモチベーションを高く保てるような環境づくりを心掛けるようにしましょう。
これからの時代、「技術の継承ための人材確保」が課題となることは容易に想像がつきます。労働環境の整備と体制づくりに取り組むことは、非常に重要になるのです。
コアコンピタンス経営を成功に導くポイント
コアコンピタンス経営を成功に導くポイント
ここからは、コアコンピタンス経営を導入して成功に導くためのポイントについて、3つを挙げて解説していきましょう。
ポイント(1)コアコンピタンスの強化
ポイント(1)コアコンピタンスの強化
自社のコアコンピタンスが、いつまでも独自の強みであり続けるという保証はどこにもありません。ビジネスの世界は変化が激しいため、コアコンピタンスを失ってしまう可能性もあるわけです。
ですから、コアコンピタンスを持っていることに満足せず、常に技術開発や人材育成を行い、企業としてコアコンピタンスを強化していく必要があります。自社のコアコンピタンスを強化し、さらに新しい業界や分野に展開していけるように進化することが成功のポイントだといえるでしょう。
ポイント(2)人材の確保と定着
ポイント(2)人材の確保と定着
コアコンピタンスを維持し強化していくために、人材は欠かせません。技術を継承し強化していくための人材がいなければ、コアコンピタンスを維持することは不可能に近いといえます。
先ほど「デメリット」でもお伝えしましたが、コアコンピタンスを維持するには、技術者の存在が不可欠です。しかし、深刻な人手不足から技術者の確保が難しいということも前述の通りです。人材を確保し、定着・育成ができる環境整備は急務といえるでしょう。
働き方改革などを積極的に進めていき、人材の確保と定着を図っていくことがコアコンピタンス経営のためにも重要です。
ポイント(3)長期的な視点の取り組み
ポイント(3)長期的な視点の取り組み
現在のビジネスシーンにおいては、どのような企業であっても短期間で成果を出すことが難しくなっています。
それはコアコンピタンス経営も同様で、短期間で容易に成果が出るものではありません。自社の分析や競合他社との比較、社内の環境整備など、長期的な視点でじっくりと取り組んでいくことが必要なのです。
さまざまな角度や視点から自社を分析し、最適なコアコンピタンスを見つけましょう。そして、それを強化していくことで市場の優位性を確保、維持していくようにすべきです。
コアコンピタンスの維持にはBPOの活用を
コアコンピタンスの維持にはBPOの活用を
企業経営に欠かすことができない経営資源は「ヒト」です。「モノ」や「カネ」、「情報」も確かに欠かせない経営資源ではありますが、それらの資源をヒトが活用することではじめて利益を生み出すことができるのです。
しかし、「ヒト」の経営資源には限りがあるため、企業活動のすべての分野でコアコンピタンスを維持していくのは難しいといえるでしょう。すべての経営資源を分配して企業活動を行ってしまうと、あらゆる分野においてコアコンピタンスを失ってしまう恐れもあるのです。
コアコンピタンスの維持には、企業活動の中でもコア業務に経営資源を集中させるようにすることが重要不可欠です。そのためにも、コア業務以外のノンコア業務は外部へアウトソーシング(BPO)することがコアコンピタンスの維持には有効なのです。
企業経営において、コアコンピタンスを維持するためにはBPOを活用することが最善の方法だ、ということは覚えておきましょう。
BPOサービスならパーソルビジネスプロセスデザインへ
BPOサービスならパーソルビジネスプロセスデザインへ
ここまで説明してきたように、コアコンピタンス経営を導入して、強みを活用した製品・サービスの開発を行うことで、長期的に安定した経営を実現させることが可能です。
自社が持つコアコンピタンスに満足することなく、しっかりと強化していくことで競合他社との競争の中でも優位性を維持することができるのです。
コアコンピタンス経営を導入したいと考えている場合には、本記事で解説したメリット・デメリット、成功のためのポイントを把握しておくことで、スムーズに推進することができるでしょう。そして、コアコンピタンス維持に欠かすことができないBPOサービスを依頼するのであれば、実績豊富なパーソルビジネスプロセスデザインにお任せください。
私たちパーソルビジネスプロセスデザインのBPOは、多くのお客様に選択いただいております。その理由には、BPO専業として50年以上やってきたノウハウを有している点が挙げられます。
高いセキュリティ環境でビジネスを遂行しているのはもちろんのこと、お客様によって異なる特有の業務対応を得意としています。また、専門コンサルタントによる業務調査・業務分析で速やかに業務を切り分け、運用フェーズでの可視化も徹底させています。
お客様のニーズに合わせて柔軟に対応することを得意としておりますので、BPOをはじめたいという場合や、何かお困りのことがある場合には、ぜひお気軽にご相談ください。