コアコンピタンスとは
コアコンピタンスとは
先ほど導入でも触れたように、コアコンピタンスとは簡単にいうならば「他社にはない自社だけの強み」のことを指します。もともとの概念は、経営学者であるゲイリー・ハメルとC.K.プラハラードの共著である『コア・コンピタンス経営』の中で提唱されたことで広く知られるようになりました。
英語で記述すると「Core competence」となり、コア(核)となるコンピタンス(能力、力量)を表していますので、企業の「核となる能力」と訳されます。ビジネスにおいては、「競合他社が真似することのできない、圧倒的にレベルの高い能力」と捉えられています。
具体例を挙げると、自動車会社が持つ他社よりも優れた性能のエンジン製造技術や、コンピューター会社の小型部品の製造技術があります。コアコンピタンスとして認められるには、以下の条件を満たさなくてはいけません。
- 何らかの利益を顧客にもたらす能力
- 競合他社が真似できない、真似するのが難しい能力
- 複数の製品、市場に対応可能な能力
長期にわたって安定的に成長している企業は「コアコンピタンスがある」といわれますので、自社のコアコンピタンスを発見し、重点を置いて強化することが重要になるでしょう。
ケイパビリティとは
ケイパビリティとは
コアコンピタンスと似た言葉として知られているのが「ケイパビリティ」です。ケイパビリティは、「能力」や「才能」などの意味を持つ単語です。ビジネス用語として使う場合には、企業成長の根源となる強みや優位性、アピールポイントといった意味で使用されます。
ケイパビリティという言葉は、ジョージ・ストークス、フィリップ・エバンス、ローレンス.E.シュルマンの3人が1992年に発表した論文によって知られるようになりました。その中で、ケイパビリティは「バリューチェーン全体を通しての組織の遂行力」として定義されています。
このことから、ケイパビリティは製品や市場、技術など単体のプロセスではなく、事業全体のプロセスについての強みのことを指していることが分かります。つまり、研究開発から始まり、製造・販売に至る一連のプロセスにおいて、他社と比較し優位性がある部分をケイパビリティと呼ぶわけです。
具体例としては、「フランチャイズとの結びつき強化による販売力の向上」や、「物流におけるロジスティクスの実現」などが挙げられるでしょうか。
ケイパビリティは、組織力を向上させていくことで価値を高め、競争優位性を強めていく事業戦略といえるでしょう。
コアコンピタンスとケイパビリティの違い
コアコンピタンスとケイパビリティの違い
コアコンピタンスとケイパビリティについて説明してきましたが、どちらも企業活動における「強み」や「優位性」を意味する言葉としては共通しています。しかし、両者は似ているようではありますが、着目する点において違いがあります。
コアコンピタンスはバリューチェーンにおける特定の技術に焦点をあてたもので、ケイパビリティはバリューチェーン全体のプロセスにおける組織の能力に焦点をあてたものです。
つまり、コアコンピタンスは特定の技術にフォーカスしている点、ケイパビリティは組織の能力にフォーカスしている点で大きな違いがあるのです。
以上のように、コアコンピタンスとケイパビリティには違いがありますが、企業経営において競争優位性を高めるためにはどちらも重要な要素です。それぞれの意味や違いを正確に把握したうえで、適切に使用するようにしましょう。
コアコンピタンスの特徴とは
コアコンピタンスの特徴とは
先ほどコアコンピタンスと認められるための条件をいくつか提示しましたが、コアコンピタンスと認められる条件は、そのままコアコンピタンス経営の特徴と言い換えることも可能です。
ここでは、そのようなコアコンピタンス経営の特徴をそれぞれ解説していきましょう。
特徴(1)何らかの利益を顧客にもたらす能力
特徴(1)何らかの利益を顧客にもたらす能力
自社の持つ能力が競合他社より優れていたとしても、顧客に対して利益をもたらさない場合には、自社の利益にはつながりません。そのため、コアコンピタンスは、顧客に利益をもたらすことが求められます。
具体例として、自社に競合他社が真似できないほどの高い技術力があった場合を考えてみましょう。
高い技術力があったとしても、その技術力を使って他社より高性能で付加価値のある製品を作り出せなければ意味がありません。高い技術力を用いて高性能で付加価値の製品を作り、提供できてはじめて顧客に利益をもたらすことができるのです。
このように、顧客に利益をもたらすことができれば、自社にも利益をもたらすことが可能となり、「コアコンピタンス」と呼べるようになるでしょう。
特徴(2)競合他社が真似できず、真似するのが難しい能力
特徴(2)競合他社が真似できず、真似するのが難しい能力
独自の能力や技術を生み出すことに成功しても、簡単に競合他社に真似されてしまってはコアコンピタンスとはいえません。
ビジネスチャンスがあれば、競合他社がすぐに参入することができる分野においては、競合他社が簡単に真似できる能力は強みと認められないのです。あくまでも、競合他社が真似できない、または真似することが難しい能力であることが前提となります。
つまり、コアコンピタンスとは「競合他社を決して寄せ付けることのない圧倒的な能力」であることが求められます。
例えば、長い年月をかけて築き上げてきた熟練の技術は、競合他社が一朝一夕で真似ができるものではありませんので、コアコンピタンスと呼ぶに相応しい能力といえるでしょう。
特徴(3)複数の製品、市場に対応可能な能力
特徴(3)複数の製品、市場に対応可能な能力
競合他社が真似できない能力を持っていたとしても、特定の市場、特定の製品にしか対応できないのであれば、コアコンピタンスとはいえません。例えば、特定の市場でしか対応できない場合、その市場が消滅してしまっては能力を活かすことができなくなってしまいます。
特定の市場や製品においてしか発揮することのできない能力は、ビジネス環境の変化に弱いため、競争力を失い通用しなくなる可能性が高いからです。
複数の製品や市場に対応できる能力として考えられるのは「ブランド力」ではないでしょうか。コアコンピタンスに加え強いブランド力があれば、特定の製品や市場にとどまらず複数の製品や市場でも効果を発揮することが可能です。
そうして、複数の製品や市場に対応することが可能となれば、競争力を失うことなく能力を活かすことできるのです。
コアコンピタンスを見極めるために必要な5つの視点
コアコンピタンスを見極めるために必要な5つの視点
「自社のコアコンピタンスが何なのか」を的確に見極めるために必要な視点としては、以下の5つが挙げられます。
- 模倣可能性(Imitability)
- 移動可能性(Transferability)
- 代替可能性(Substitutability)
- 希少性(Scarcity)
- 耐久性(Durability)
ここでは、5つの視点それぞれについて解説していきましょう。
視点(1)模倣可能性(Imitability)
視点(1)模倣可能性(Imitability)
模倣可能性は、競合他社が自社の保有する技術や能力を簡単に真似できるかどうかという視点です。
自社の強みである技術や能力を使い、顧客に利益をもたらす製品やサービスを開発したとしても、競合他社に簡単に真似されてしまっては競争優位性を保てません。このような場合には、コアコンピタンスがあるとはいえないのです。
逆に、競合他社が簡単に模倣する可能性が低い場合や、特定の分野において自社に追いつくことが難しい場合には、市場における競争優位性が保てます。このような、特定の分野を独占できるほどに高いレベルの技術や能力については「コアコンピタンス」として認められるでしょう。
視点(2)移動可能性(Transferability)
視点(2)移動可能性(Transferability)
移動可能性とは、自社が保有する技術や能力が、「複数の製品や市場に応用が可能であること」や、「幅広い分野で展開が期待できること」についての視点です。『汎用性』や『応用性』と言い換えても良いでしょう。
自社の技術や能力が、他の製品やサービスに応用できれば、ビジネスの拡大につながります。ビジネスチャンスが拡大することで、競合他社に対して市場優位性を保つことが可能になるのです。
自社の技術や能力について、継続的に新しい製品やサービスを提供できる場合にはコアコンピタンスがあるといえます。
視点(3)代替可能性(Substitutability)
視点(3)代替可能性(Substitutability)
代替可能性とは、自社の技術や能力が他のものと置き換えることができるかどうかという視点です。自社の技術や能力が、競合他社の保有する技術や能力で代替できてしまうのであれば、自社の強みとはいえません。
コアコンピタンスと認められるためには、代替することのできない、唯一無二の技術や能力を自社が保有していることが求められます。代替がきかないということは、市場優位性を保つことが可能ということです。
代替不可能で、唯一無二の技術や能力はコアコンピタンスと認められます。
視点(4)希少性(Scarcity)
視点(4)希少性(Scarcity)
希少性とは、文字通り「数が少なく珍しい」ことをいいます。ビジネスの考え方では、「自社の技術や能力が珍しい」ことや「自社の技術や能力に付加価値が存在する」ことです。
通常、希少性については、模倣可能性と代替可能性を満たしていることで認められます。自社の技術や能力を活用して開発した製品やサービスであっても、同様のものが市場に出回っていれば、埋もれてしまうかもしれません。
模倣されにくく、代替されにくい、すなわち希少性が認められると、市場での注目度は上がり、需要が高まることが期待できます。
模倣可能性、代替可能性、希少性という3つの視点を高い位置で維持することで、市場優位性を保つことが可能になるのです。
視点(5)耐久性(Durability)
視点(5)耐久性(Durability)
耐久性とは、「短期間で強みが消滅しないこと」や、「長期間にわたり、競争優位性を維持できるかどうか」をいいます。
自社の技術や能力のレベルが非常に高いものであっても、短期間で消えてしまうようであれば、自社の利益にも貢献することはないでしょう。そのため、長期間にわたり市場で優位性を保てることは重要なポイントになります。
耐久性の高さは、コアコンピタンスの精度をはかるものであり、価値や信頼性を保証するものといえるでしょう。耐久性の高い技術や能力は、コアコンピタンスがあると認められるのです。
コアコンピタンスを見極めるためのステップ
コアコンピタンスを見極めるためのステップ
自社のコアコンピタンスを見極めるために必要な視点を解説してきましたが、ではどのようにして見極めていけば良いのでしょうか。自社のコアコンピタンスを見極めることができるようになるには、次に解説する3つの段階を踏む必要があります。
自社のコアコンピタンスを見極めるためのステップとは、「自社の強みや優位性の把握」、「自社の強みの評価」、「強みの絞り込み」です。順に説明していきましょう。
ステップ(1)自社の強みや優位性を把握する
ステップ(1)自社の強みや優位性を把握する
まず行うのは、自社の強みや優位性を把握することです。自社の強みや優位性を把握するためには、一般的にも使われる以下の方法を用いると良いでしょう。
- ブレインストーミング
- SWOT分析
ブレインストーミングは、時間を限ったうえで自由に話し合いさまざまなアイデアを出し合う手法です。一つの部署だけでなく、あらゆる部署の人員を集めて行うことで、さまざまな角度から自社の強みや優位性を把握できるでしょう。
SWOT分析は、自社の内部環境や外部環境を分析するのに役立つ手法です。自社が置かれている内部環境と外部環境について、強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)の4つの要素から分析を行います。
強みだけでなく、弱みや脅威というマイナスの側面も把握することで、最悪の事態も含めた戦略立案が可能です。
ステップ(2)自社の強みを評価する
ステップ(2)自社の強みを評価する
上記の手法によって把握した自社の強みや優位性について、評価を行います。評価は、洗い出したすべての強みや優位性についてリスト化し、コアコンピタンスの3つの条件に該当するかを精査する方法で行います。
強みや優位性を評価する際に気をつけるのは、主観的な評価を行わないことです。裏付けとなる根拠を数値化し、客観的な評価を行うようにしましょう。その際には、比較基準となる競合他社と相対的に評価することが重要です。
ステップ(3)強みの絞り込みを行う
ステップ(3)強みの絞り込みを行う
自社の強みの評価を行い、コアコンピタンスに該当する強みが複数出てきた場合は、絞り込みを行うことも必要となります。
この場面では、今後の経営方針にも重大な影響を与えることになりますので、経営陣と共に行うことになります。自社の「将来あるべき姿」や「市場の未来」を考えながら実施しましょう。
一般的に、設定したコアコンピタンスを大きく変更することはほとんどありません。設定したコアコンピタンスをもとに市場へ参入することになるため、非常に重要な決定を行うということを認識しておくようにしてください。
コアコンピタンスの維持に活用したいBPO
コアコンピタンスの維持に活用したいBPO
企業経営に決して欠かすことができないのは経営資源です。その中で最も重要なのが「ヒト」でしょう。その他の経営資源である「モノ」、「カネ」、「情報」はヒトが活用してはじめて有用な資源となるからです。
ここで押さえておいていただきたいのは、ヒトをはじめとする経営資源には限りがありますので「すべての企業活動においてコアコンピタンスを維持すること」は困難であるということです。もし、経営資源をすべて分配してしまった場合、企業活動のあらゆる分野でコアコンピタンスを失ってしまう可能性があります。
そのため、コアコンピタンスを維持するためには、企業のコア業務に経営資源を集中させることが重要です。つまり、“ノンコア業務”については外部へアウトソーシング(BPO)することが有効といえるのです。
コアコンピタンスを維持しながら企業経営を行うにはBPOの活用が効果的ですので、検討してみても良いかもしれません。
BPOサービスならパーソルビジネスプロセスデザインへ
BPOサービスならパーソルビジネスプロセスデザインへ
コアコンピタンスを見極めることで、企業の強みを把握し市場での競争優位性を保つことができます。自社の強みを知っているか否かによって、ビジネスチャンスは大きく変わってくることでしょう。
一方で、コアコンピタンスを維持するためには、企業のコア業務に経営資源を集中させることが重要です。そのためにも、ノンコア業務については外部へアウトソーシング(BPO)することが有効といえます。
私たちパーソルビジネスプロセスデザインが実施しているBPOは、多くのお客様に選択いただいております。その理由には、BPO専業として50年以上やってきたノウハウを有している点が挙げられます。
高いセキュリティ環境でビジネスを遂行しているのはもちろんのこと、お客様によって異なる特有の業務対応を得意としています。また、専門コンサルタントによる業務調査・業務分析で速やかに業務を切り分け、運用フェーズでの可視化も徹底させています。
お客様のニーズに合わせて柔軟に対応することを得意としておりますので、BPOをはじめたいという場合や、何かお困りのことがある場合には、ぜひお気軽にご相談ください。