BPRとは何か?
BPRとは何か?
まずはBPRについて見ていきましょう。BPRは「Business Process Re-engineering」を略した用語です。野村総合研究所では、以下のように定義しています。
『BPR』(読み:ビーピーアール) 業務本来の目的に向かって既存の組織や制度を抜本的に見直し、プロセスの視点で、職務、業務フロー、管理機構、情報システムをデザインしなおすこと。 ※引用:野村総合研究所「BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)」 |
この定義にもある通り、BPRは目指す目的にあわせて業務の仕組みそのものを変えていく手法です。今の仕組みに不備や限界があることを認め、長期的な視野に立ち組織や仕事の進め方を作り直します。必要性のない業務は廃止されていきますので、「業務改革」とも呼ばれます。
BPRが注目されている一つの背景に、会社全体の利益よりも部門の利益を優先してしまう「タコツボ化」の増加が挙げられます。各部門がバラバラに動いてしまうとシナジー効果も得られず、会社の発展も期待できません。そういった事態を打開しBPRを成功に導いていくためには、経営層の積極的な関与が必須といえるでしょう。
そのうえで、BPRを実現していくには、以下に示すさまざまな手法が使われます。
- 組織を横断したプロジェクトの結成
- 既存の組織やしがらみにとらわれない、ゼロベースの思考による発案
- IT技術の活用
- 現場に任せる範囲の拡大や見直し
業務改革と業務改善との違い
業務改革と業務改善との違い
BPRで行われる「業務改革」は、「業務改善」とどう違うのでしょうか。「仕事をより良く進める」という点では同じですが、両者には以下に示すような大きな相違点があります。
項目 | 業務改革 | 業務改善 |
---|---|---|
既存業務の内容や業務フロー | 仕組みの維持を前提としない。実際には一度解体し、作り直す場合も多い | 守ることが前提。効率化や無駄をなくす工夫などは代表的 |
最適化の範囲 | 全社を通じた最適化が行われる | 部門内の部分最適にとどまる |
変化への対応 | 有効な手法の一つ。事業環境の激変にも有効 | 限界がある |
社内の抵抗 | 大きくなる場合がある | 少ない |
「業務改善」は、現状の仕組みを壊さずに“効率化”などで収益の向上や労働環境の改善を狙っていく手法です。現状の仕組みを壊しませんので、関係者の理解も得やすいでしょう。
一方で「業務改革」の場合には、仕組みを解体しますので今の立場を失ってしまう方も少なくありません。役職や職務がなくなり、配置転換を迫られる方もいるかも知れません。
そうすると社内の抵抗も大きくなりますが、それらを抑えていくには経営層から強い意志を示していく必要があるでしょう。
BPOとは何か?
BPOとは何か?
続いてBPOです。BPOは「Business Process Outsourcing」を略した用語です。野村総合研究所では、以下のように定義しています。
『BPO』(読み:ビーピーオー) 企業活動における業務プロセスの一部について、業務の企画・設計から実施までを一括して専門業者に外部委託すること。 ※引用:野村総合研究所「BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)」 |
上記のとおり、BPOは業務プロセスを委託する手法です。自社から逐一細かな指示を出すのではなく、業務内容をまるごと委託して「進め方」や「結果の分析」も含めて任せてしまうのが特徴です。
BPOによって得られる代表的なメリットとして、以下のものが挙げられます。
- 委託先のノウハウを活かして業務を改善できる
- 限られた人員をコア業務に集約し、人手不足を和らげられる
- 経費を節減することができる
詳しいメリットについては、後ほど改めて解説いたします。
BPOとアウトソーシングの違い
BPOとアウトソーシングの違い
BPOはアウトソーシングの一種ですが、両者には以下の違いがあります。
- アウトソーシング……単純業務を切り出し、外部に委託する
- BPO……業務プロセス全体をまるごと外部に委託する
業務の計画や進め方は、代表的な相違点です。アウトソーシングの場合は、発注元が決めます。一方でBPOは業務プロセスも委託の対象ですから、受注者が決めます。自由度が高い代わりに創意工夫が求められる点がBPOの特徴といえるでしょう。
BPRとBPOとの違い
BPRとBPOとの違い
BPRとBPOには、大きな違いがあります。
先ほども説明した通り、BPRは全社にわたって業務プロセスや業務の必要性をゼロベースで見直す、業務改革の手法です。一方でBPOは、業務全体を外部に委託する手法です。BPOの実施にあたってBPRや業務改革が必須というわけではありません。
BPRとBPOは、「目的」と「手段」の関係にある点も押さえておきたいポイントでしょう。よくあるケースとしては、「BPRを実施すべく社内のリソースをコア業務に集約するため、BPOを活用してノンコア業務を委託する」といった流れです。
RPAとは何か?
RPAとは何か?
BPRやBPOが検討される場面では、RPAという用語もよく耳にします。RPAは「Robotic Process Automation」の略であり、一般社団法人日本RPA協会では以下のように定義しています。
RPAは、これまでの人間のみが対応可能と想定されていた作業、もしくはより高度な作業を人間に代わって実施できるルールエンジンやAI、機械学習等を含む認知技術を活用した新しい労働力を創出する仕組み(Digital Labor)となります。 ※引用:一般社団法人日本RPA協会「日本RPA協会設立」 |
実務においては、人間がPC上で遂行する一連の作業について、プログラムを用いて自動化することに活用されます。このプログラムは、RPAでは「ソフトウェアロボット」または「ロボット」と呼ばれます。
RPAは、プログラムを用いて自動化するために活用されますので、繰り返しの作業や定型的な作業を得意としています。進め方や業務フローが確立されている定型業務の場合、RPAを用いて自動化することで正確さを保ちながら時間や労力を大幅に削減することが可能になります。
BPR・BPOとRPAとの違い
BPR・BPOとRPAとの違い
BPRとRPA、またBPOとRPAがまったく異なるものであることは、感覚的にわかる方も多いでしょう。しかし「それぞれの相違点を端的に教えて」と聞かれると、説明が難しいかも知れません。どのような違いがあるのか、ここから詳しく確認していきましょう。
BPRとRPAとの違い
BPRとRPAとの違い
BPRとRPAには、明確な違いがあります。
BPRは業務改革の手法のことを指しており、必ずしもIT技術の導入は求められません。一方でRPAはプログラムを用いた業務の自動化ですから、IT技術の活用が必須です。
もう1つの相違点は、やはり「目的」と「手段」の関係にあります。RPAは、BPRで定めた目的や目標をかなえる手段の一つです。
一方で、初めから「RPAの導入ありき」でBPRを策定することは、ベストな方針を立てられなくなる恐れがありますので推奨できません。
BPOとRPAとの違い
BPOとRPAとの違い
BPOとRPAは、意味が異なります。BPOは「業務プロセスを外部委託すること」であり、RPAは「プログラムを用いて業務を自動化すること」です。
BPOとRPAは、どちらかしか選べないものではありません。例として、コールセンターの業務で考えてみましょう。コールセンターの業務について、進め方も含めてすべて外部委託することは、BPOです。
その委託先で「問い合わせ内容を自動的に集計し主な指標を自動的に算出したい」と、RPAを導入することもあるでしょう。そうすると、この場合には「BPOとRPAを併用して効率的に業務を進めている」という例になるわけです。
BPRを実施するメリットと具体的なステップをご紹介
BPRを実施するメリットと具体的なステップをご紹介
ここからはBPRに焦点を当て、どのようなメリットが得られるのかを解説していきます。BPRを実施するうえで必要なステップについても、あわせて確認していきましょう。
BPRの実施により得られるメリット
BPRの実施により得られるメリット
BPRを実施することで、具体的に以下のようなメリットがもたらされます。
- 業務全体を「見える化」でき、企業全体として業務を最適化できる
- 適切な「権限の委譲」により意思決定がスピードアップされ、変化に強い企業になれる
- 社内に埋もれた人材の能力を引き出し、従業員の満足度を向上できる
- 組織の壁にとらわれず顧客ベースでの施策を実施でき、顧客満足度が向上する
- 組織を超えた従業員同士の交流が進んでいく
くわえて、業務改善を実施した場合と同様、以下に挙げるメリットも得られるでしょう。
- 業務の属人化を防げる
- 業務の効率化により、生産性が向上する
- 企業価値が向上し、競争力もアップする
- 企業の利益が向上する
BPRの実施には、多大な労力とコストが掛かります。しかし、業務改善よりもはるかに大きなメリットが得られることは魅力といえるでしょう。
BPRを実施する8つのステップ
BPRを実施する8つのステップ
大きなメリットが得られるBPRですが、それではどのように実施していけば良いのでしょうか。BPRを実施するステップは、大きく8つに分けられます。どういったステップがあるのか、以下の表にまとめてみました。
ステップ | 項目 |
---|---|
1 | 改善すべき点を広くヒアリングしたうえで、目的や目標を設定する |
2 | 対象の業務範囲を決め、優先順位を決定する |
3 | 現状の業務内容や業務フロー、組織などを分析し、課題を把握する |
4 | 戦略や方針を策定し、実施する方法を検討する。必要に応じて、BPOなど外部のリソースやツールの活用も検討する |
5 | 新しいビジネスプロセスを設計する。スケジュールも検討する |
6 | 策定した計画を実行し、進捗状況を把握する |
7 | 期待通りの効果が出ているか、課題は生じていないか、業務をモニタリングする |
8 | 業務のモニタリング結果や現場へのヒアリングなどをもとに、BPRの効果を検証する |
BPRは大きな変革につながるものですから、慌てて実施しようとするのは失敗への近道になってしまいます。少し手間が掛かったとしても、現状をじっくりと把握したうえで確かな情報をもとに改革を実行していくと良いでしょう。
BPOの対象業務とメリット、導入の流れを解説
BPOの対象業務とメリット、導入の流れを解説
BPOは、前述したように「業務改革を行う手段の一つ」ですから、“対象業務の選定”が重要になります。適切に実施することで、さまざまなメリットがもたらされるでしょう。
では、「どのような業務がBPOに適しているのか」「どのように導入を進めれば良いか」という点について、確認していきましょう。
BPOが適している業務
BPOが適している業務
BPOは以下のとおり、さまざまな業務に適しています。
- バックオフィス業務(総務や人事、経理、受付など)
- コールセンターやコンタクトセンター、ヘルプデスク業務
- IT関連業務(システム運用やWebサイトの制作など)
- コンサルティング業務
- マーケティング業務
以上のように、企業で扱う多くの業務は、BPOが可能です。
ただし、何でもBPOの対象にしていくというわけではありません。BPOの選択で重要なポイントとして、その業務が自社にとって非常に重要な「コア業務」なのか、「ノンコア業務」なのかという点が挙げられます。
限られた自社のリソースはコア業務に集中させる一方、ノンコア業務にBPOを適用していくと良いでしょう。そのため、同じ業務であっても、企業によって「BPOの対象とするかどうか」は分かれるところです。
例えば、コールセンター業務を本業とする企業にとっては、コールセンター業務をBPOの対象にすることはあり得ません。一方で、製造業や官公庁の場合は、コールセンター業務を切り離してBPOの対象とすることは有効な施策になりうるわけです。
BPOを導入するメリット
BPOを導入するメリット
冒頭でも少し触れましたが、BPOの導入でどのようなメリットがあるかというと、以下の点が挙げられます。
- 社内の限られたリソースを、コア業務に集中投下できる
- ノンコア業務の遂行に要する設備投資や教育の費用を抑えられる
- 業務遂行の費用を変動費にできるため、トータルでの経費削減が期待できる
- プロセスの可視化により、リスクマネジメント強化できる
- 委託先のノウハウを活用することで、高い効果や顧客満足度の向上が期待できる
- 法令改正をキャッチアップする手間が省ける
以上のようにBPOは、人手不足に悩む企業やコア業務にリソースを集中させたい企業にとって多くのメリットを享受できる手段だといえるでしょう。
BPOを導入する4つのステップ
BPOを導入する4つのステップ
自社へBPOを円滑に導入していくためには、踏んでいくべきステップがあります。ここからは、BPOを導入して円滑に実施していくために必要な4つのステップをご紹介していきます。
ステップ(1)社内で抱える課題を整理し、BPOを導入する業務を切り出す
ステップ(1)社内で抱える課題を整理し、BPOを導入する業務を切り出す
BPOを成功させるためには、「導入する目的」にくわえ「対象となる業務範囲」を明確にすることが欠かせません。まずは社内で抱えている課題を整理したうえで可視化し、「BPOで解決できるかどうか」をチェックしていきましょう。
課題の解決にBPOが適していることがわかったら、BPOを活用して業務を切り出していく「目的」を明確にするべきです。
BPOは、会社間の契約ですので“あうんの呼吸”では進んでいきません。認識の相違が起きてしまわないよう、事前に対象業務や依頼する業務の範囲をはっきりさせておきましょう。
ステップ(2)委託先の会社を選ぶ
ステップ(2)委託先の会社を選ぶ
対象業務が決まったら、委託先の会社を選んでいきましょう。提案依頼書(RFP)を作成して提案の評価基準を定めたうえで、さまざまな会社から出される提案を比較検討していきます。
委託先を選ぶうえで、提案内容が評価基準をクリアしていることは重要です。そういった点では、豊富な実績を持つ企業や委託したい分野に明るい企業は選ばれやすいでしょう。また、コミュニケーションを円滑に進められることも重要なポイントになります。
ステップ(3)引き継ぎをスムーズに行う
ステップ(3)引き継ぎをスムーズに行う
委託先の企業が決まったら、業務の引き継ぎを行っていきます。選定された企業は、委託される業務について豊富なノウハウを持っているものの、委託元のビジネスルールなどについては詳しく知らない場合があります。
そのため、選定した企業に丸投げしてしまうことや、「専門とする企業なのだから、詳しく伝えなくてもわかってもらえるだろう」と考えてしまうのは、好ましい結果につながりません。必要な情報は積極的に提供して、スムーズな立ち上げに協力することが重要になります。
ステップ(4)サービスの状況を継続してチェックする
ステップ(4)サービスの状況を継続してチェックする
BPOの効果をあげるためには、委託先へ移管した後もチェックすることが重要になります。
取り決められたサービスがしっかり提供されているかをモニタリングするとともに、何か問題などが発生していないかなどをチェックしていきましょう。
BPOサービスならパーソルビジネスプロセスデザインへ
BPOサービスならパーソルビジネスプロセスデザインへ
BPRとBPOは、「目的」と「手段」の関係にあるとお伝えしましたが、適切なBPRを実現するためには、適切なBPOを選択する必要があります。
私たちパーソルビジネスプロセスデザインのBPOは、多くのお客様に選択いただいております。その理由には、BPO専業として50年以上ご支援してきたノウハウを有している点が挙げられます。
高いセキュリティ環境でビジネスを遂行しているのはもちろんのこと、お客様によって異なる特有の業務対応を得意としています。また、専門コンサルタントによる業務調査・業務分析で速やかに業務を切り分け、運用フェーズでの可視化も徹底させています。
お客様のニーズにあわせて柔軟に対応することを得意としておりますので、BPOをはじめたいという場合や、何かお困りのことがある場合には、ぜひお気軽にご相談ください。