<コロナ禍の経理部門>48%の企業において5割以上が出社
一般社団法人日本CFO協会と一般社団法人日本CHRO協会の調査によると、2020年のコロナ禍における緊急事態宣言中、48%の企業で経理部門は「5割以上出社」していたことがわかりました。回答した131社の内、半数近くの企業で多くの従業員が出社を余儀なくされていたのです。
※参考:一般社団法人日本CFO協会/一般社団法人日本CHRO協会 「日本CFO協会、経理部門・財務部門のコロナ禍における実態調査 第3弾調査結果と考察を発表」
「全く出社しなかった」と回答したのは6%と低い数字に留まり、「100%出社して対応した」と回答した企業の経理部門は10%となりました。
政府から自粛が求められている状況下で、「感染リスクがある」と認識しているにもかかわらず、経理でテレワークが十分に実施できない課題が浮き彫りになった形です。では、なぜ経理部門ではテレワーク対応が難しかったのでしょうか?次の章では、その理由について解説します。
「経理はテレワークができない」といわれる理由
続いて「経理はテレワーク対応ができない」といわれる理由を3点、解説します。
理由(1)請求書など紙媒体の業務が多い
理由(1)請求書など紙媒体の業務が多い
経理は、請求書や経費精算書、納品書など紙媒体の業務が多く含まれるのが特徴です。取引先から送られてきた請求書を受け取り、中身を確認する必要がある場合、出社して対応せざるを得ません。
経費精算が紙媒体の場合、経理部門だけでなく他部署の従業員も指定の用紙に記入して申請するために出社する必要があります。出社した経理担当者は、紙の申請書類と領収書を突き合わせ、正確に記載されているかを確認するのです。
また、紙での業務にはファイリングなどの保管作業が必須です。保管場所は社内キャビネットや倉庫であるため、担当者は出社して対応しなければなりません。さらに、必要な書類を探す際にも出社が必要になります。
以上のように、経理は紙ベースの業務に多く対応するためテレワークが難しいと考えられています。
理由(2)書類に押印が必要
理由(2)書類に押印が必要
日本は“ハンコ文化”が根強く、請求書や見積書など取引先に対する書類に押印が求められる慣習があります。コロナ禍での緊急事態宣言下でも、押印が必要となり出社を余儀なくされる経営者や従業員が多くいたとして話題になりました。取引先によっては、契約書や請求書に社印の押印や自筆サインを省略して送付するのは、容易ではないからです。
しかし、押印が必要なケースは取引先に対してだけではありません。業務フロー上、経費精算書など主に社内で取り扱う書類であっても、上長の押印がなければ申請が承認されないケースもあります。
このように、社内外の書類の処理業務がハンコに縛られた状態であっては、テレワークの実現は難しいといえるでしょう。
理由(3)セキュリティ面でリスクがある
理由(3)セキュリティ面でリスクがある
経理は財務情報など機密情報が含まれるケースが多く、自宅への書類やデータの持ち込みはセキュリティ面で懸念が残ります。セキュリティ対策が十分に整備されていない環境での業務は、紛失や漏洩リスクが高いからです。
例えば、会社から自宅へ資料を持ち出す最中で電車に置き忘れたり、郵送時の誤配などで紛失したりするリスクがあります。また、経理データをメールに添付して送信する場合、パスワードが設定されていなければ漏洩の恐れもあるでしょう。
さらに、自宅のパソコンを家族と共有していると、家族が誤ってデータに触れてしまい、内容が変更されてしまうリスクもあります。
未公開の経理情報が流出してしまうことで、企業価値や社会的信頼性が落ちてしまうかもしれません。経理のテレワーク化はこのようなセキュリティリスクがあるため、どうしても「出社したほうが安全だ」と考えられてしまうのです。
経理業務をテレワーク化するための具体的方法
それでは、どのようにすれば経理業務をテレワーク化できるのでしょうか?ここでは具体的な方法を3点ほど挙げて解説します。
方法(1)ペーパーレス化に徹底して取り組む
方法(1)ペーパーレス化に徹底して取り組む
まずはペーパーレス化に取り組み、紙媒体の作業を徹底してデジタルに置き換えることが重要です。経理業務のペーパーレス化が実現すると、請求書の印刷や郵送、管理にかかる負担が軽減されます。
企業が経理のペーパーレス化に取り組むメリットは、業務効率化だけではありません。2022年1月に、ペーパーレス化を促進する電子帳簿保存法が改正され、要件が緩和されました。また、企業は決算関係書類や帳簿、税務関係書類などを、2023年12月末までに電子保存することも義務付けられたのです。
その結果、書類をスキャンしてデータ化しクラウドやサーバーに保管する必要も生じますので、今後は紙ベースでの一元管理は難しくなるでしょう。紙と電子保存が混同すると、経理作業がより煩雑になる恐れがあるため、企業はペーパーレス化に向けて徹底的に取り組むことが重要なのです。
見方を変えれば、電子帳簿保存法に対応することで、経理業務のテレワーク化を推進できるともいえるでしょう。
電子帳簿保存法改正については、こちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひ併せてご参照ください。
※参考:『電子帳簿保存法改正について徹底解説!期間や対応すべき点から罰則まで』
方法(2)ハンコを不要にする
方法(2)ハンコを不要にする
経理でリモートワークを実現するため、企業は「脱ハンコ」を推進する必要があります。ハンコ文化を継続すると、押印するために出社を余儀なくされるからです。
請求書を発行する際、紙に印刷して押印するのが一般的な商習慣です。しかし法律上、請求書への押印は義務ではありません。押印がなくても問題はないのです。その一方、ハンコは「信頼性を高める」という役割があります。そこで現在は、ハンコの代替手段として『電子署名』や『電子印鑑』が広まりつつあります。
つまり、経理のテレワーク化を進めるには、請求書や経費精算書、稟議書などへのハンコを不要にしたり、電子署名などを導入したりすることが重要といえるのです。また、ハンコが不要になれば、業務フローを改善しやすくなり、業務効率化や生産性の向上も期待できます。
方法(3)決済業務を電子化する
方法(3)決済業務を電子化する
決算業務を電子化すれば、自宅からでも経理業務ができるようになります。具体的な方法として挙げられるのは、インターネットバンキングの導入です。これにより、従業員への給与支払がどこからでも可能になります。入出金データを会計ソフトと連携すると、通帳記帳や転記が不要になり業務効率化も実現できます。
また、経費精算については、従業員が領収書をスマホで撮影して申請し、振込予約をすることで出社する必要がなくなります。
このように決済業務の電子化を検討することで、経理のテレワークを促進できるでしょう。
経理業務におけるテレワーク導入ポイント
経理業務にテレワークを導入するメリットは、新型コロナウイルス感染症が再流行した場合でも従業員の安全性を確保しながら、業務を継続できるという点です。ペーパーレス化や決済の電子化などを進めておけば、アフターコロナ時代だけでなく災害時にも早期復旧がしやすくなります。
そんな経理業務におけるテレワークの『導入ポイント』について、4点を挙げて解説していきます。
ポイント(1)デジタル化を念頭におく
ポイント(1)デジタル化を念頭におく
経理業務のデジタル化は、テレワークを推進するうえで欠かせません。領収書や請求書、経費精算を紙ベースではなくデジタル処理できれば、自宅から仕事がしやすくなるからです。
例えば、会計ソフトを導入すると経理業務のテレワーク化を実施しやすくなります。会計ソフトには大きく分けて、クラウド型とインストール型の2つがあります。クラウド型は、銀行口座やクレジットカードのデータを自動で取得して反映が可能です。自動仕訳も設定しやすく、業務効率化を図りやすいのが特徴といえます。
一方、インストール型は通帳や伝票を見ながら会計ソフトに手入力する必要があります。また、パソコンにソフトをダウンロードするため、特定のパソコンでしかソフトを使えません。
▼クラウド型とインストール型の違い
クラウド型 | インストール型 | |
---|---|---|
インストール | 不要 | 必要 |
ネット接続 | 必要 | 不要 |
入力 | 自動反映ができる | 原則として手入力 |
最近では、クラウド型の利便性が注目されていて、導入を検討する企業も増えています。インターネット環境とアクセスの権限があれば、どのパソコンでも使用できるので、テレワークにも活用できます。
インストール型の会計ソフトを使用している場合、パソコンを家に持ち帰ればテレワークも可能です。しかし、持ち運ぶ途中での紛失リスクを考えると、このケースに関しては会社で使用したほうが安全だといえるでしょう。
ポイント(2)パソコンのセキュリティ対策を万全にする
ポイント(2)パソコンのセキュリティ対策を万全にする
先ほど紛失リスクについて触れましたが、テレワークにおいては使用するパソコンのセキュリティ対策を万全にすることが重要とされています。セキュリティ対策が不十分な状態で情報漏洩した場合、企業の信用が失墜してしまうからです。
そこで、セキュリティシステムやVPNの導入、パソコンの操作ログを管理するソフトをインストールするなど、対策を講じていく必要があります。
経理担当者のなかには、デジタル化が進められているとはいえ「紙で印刷した方が数字の確認がしやすい」という人もいます。その場合、自宅で紙を印刷するならパソコンだけでなく、プリンターにもセキュリティ対策が必要です。印刷情報がプリンターから削除されるかを確認し、印刷した紙の処理方法もルール化しておきましょう。
どのようにテレワークを実施すれば良いか、ルールをしっかりとマニュアル化し共有することが重要です。そうすることで、セキュリティリスクを抑えながら経理のテレワーク化が図れるでしょう。
ポイント(3)コミュニケーションツールを使用する
ポイント(3)コミュニケーションツールを使用する
テレワークでも円滑なコミュニケーションを取るためには、ツールの導入が必要です。テキストで会話でき、添付で書類や画像が送信できるチャットツールがあれば、業務連絡を取りやすくなるでしょう。
電話で頻繁に連絡を取る必要がある場合には、会社がスマホを用意する必要があります。スマホの代わりにオンライン会議ツールを導入すれば、相手の顔を見ながら話すことも可能です。定例会議をオンラインツールで開催すれば、自宅からでも参加できるようになります。
また、スケジュールを共有し進捗状況を可視化できるツールを導入すれば、テレワークでも従業員の業務管理がしやすくなるでしょう。
ポイント(4)アウトソーシングを利用する
ポイント(4)アウトソーシングを利用する
経理業務にアウトソーシングを活用するのも有効な手段のひとつです。会計処理や伝票作成、会計データ作成や入金額の照合など、幅広い業務を経理のプロに外部委託できます。
アウトソーシングを利用すると、コア業務とノンコア業務をすみ分けでき、業務フローの改善や最適化が図りやすくなります。業務負荷が重かった経理のルーチンワークをアウトソーシングすることで、従業員がテレワークを検討しやすくなる点は、大きなメリットといえるでしょう。
紙やデータで送られてくる精算書や領収書をアウトソーシング事業者に送付すると、データ入力や照合、仕訳などを対応してもらえます。プロに依頼できるので業務品質が向上し、テレワーク化を含め人員配置を最適化できるでしょう。
経理アウトソーシングの料金相場について詳しく知りたい方は、こちらの記事も併せてご参照ください。
※参考:『経理代行の料金相場は?業務内容ごとに目安をピックアップ』
経理業務のアウトソーシングはパーソルビジネスプロセスデザインへ
経理は紙ベースの業務が多くあるため、テレワーク化が難しい部門だといわれています。しかし、デジタル化やアウトソーシングを推進することで、経理業務もテレワークを実現しやすくなります。
パーソルビジネスプロセスデザインでは、「経理業務アウトソーシング」と「経費精算アウトソーシング」のサービスをご提供しています。
長年にわたる豊富な実績とノウハウをもとに、証憑のシステム入力、仕訳処理、照合、ファイリングや電子化など、ご要望に応じて幅広い業務をお任せいただけます。ご希望があれば、サブシステムを開発し高精度で書類の読み取りができ、データ化を支援するDX化もご支援可能です。
経理のテレワーク化を実現するには、業務フローを整備しデジタル化の推進が欠かせません。そのようなご要望も承っていますので、経理や経費精算業務のアウトソーシングをご検討の場合は、ぜひパーソルビジネスプロセスデザインにお気軽にご相談くださいませ。