そもそも属人化とは
そもそも「属人化」とは、特定の従業員が担当する業務の進捗状況や対応方法が、他の従業員に共有されていない状況を指します。社内で属人化が起こると業務が“ブラックボックス化”してしまい、特定の従業員がいなければ仕事が滞ってしまうリスクが生じます。
特に経理業務は、簿記の知識など専門スキルがなければ担当するのが難しく、属人化しやすくなるので注意する必要があるでしょう。
属人化を解消するためには、マニュアルを作成するなどして、他の従業員でも同じ品質で業務を遂行できるよう環境を整備していくことが大切です。このようにして属人化を解消することを「標準化」と呼びます。
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経理業務の属人化による4つのリスク
標準化することなく経理業務で属人化が進んでいくと、どのようなリスクがあるのでしょうか。ここでは、4つのリスクについて解説します。
業務改善が行いにくい
属人化が起こると、業務改善を行いにくくなるというリスクがあります。業務が属人化している状況では、業務フローや品質の客観的な評価が難しく、何を改善するべきか特定できないからです。
定の担当者に経理業務が集中し「決算業務はこの人しか分からない」「Excelを使った分析方法を他の担当者は把握していない」という状況だと、効率的な業務の進め方を検討することができません。
担当者が独自のやり方で工夫していてノウハウが明文化されていなければ、業務改善のメスを入れにくくなるでしょう。このような状態が続いてしまうと、業務が完全にブラックボックス化してしまい、下記で説明するような様々なリスクにつながってしまいます。
業務が滞る恐れがある
業務改善がされないまま属人化が続くと、従業員が突然休職や離職をしてしまうことで業務が滞ってしまう恐れがあります。他の従業員が業務の進捗状況や手順を把握しておらず、代わりに対応できなくなるからです。
担当者が長年培ってきたノウハウが社内に蓄積されなければ、別の従業員がまたゼロから積み重ねていく必要があります。そうなるとコストがかかるだけでなく、その期間は経理業務を遂行できなくなってしまう恐れもあるでしょう。
属人化は一見すると、スキルの高いベテラン従業員が実力を発揮しているように見えるかもしれません。しかし、その従業員がいなくなると業務停止の事態にも陥りかねないため、企業は属人化の解消に向けて取り組む必要があるのです。
一定の品質を保ちにくい
業務がブラックボックス化した状態では、上司や他の従業員による『品質チェック』を行うことが難しくなります。ミスがあっても気づきにくいため、品質低下につながりかねません。
「二重計上」や「記帳漏れ」、「支払いの遅れ」といった経理業務のミスが生じた場合、誰も気づかなければ指摘ができません。もしミスに気付いたとしても、特定の従業員だけが修正対応できる状態であれば業務負担も増加してしまいます。さらに、ミスが発生した正確な原因も突き止めにくいので、業務品質を向上させることが難しくなるでしょう。
このように、業務が属人化した状態が続くと改善することが難しくなるため、品質が安定しないというリスクも生じてしまうのです。
ブラックボックス化し不正が起こりやすい
属人化が進むと業務内容が上司や他の従業員から見えなくなり、不正が起こりやすい状況も生まれます。「誰も自分の業務プロセスを把握していない」という状況は、ミスを隠したり不正を行ったりしても発覚しない、という状態でもあるのです。
経理業務がブラックボックス化して誰もチェックする人がいなくなると、会社の預金を横領するなど不正行為に手を染める従業員が出てきてしまうかもしれません。属人化が長年にわたって続いている場合は、多額の横領事件につながるリスクも否定できないでしょう。実際、一人の経理担当者に権限を与え過ぎてしまい、不正事件に発展したケースも世の中には数多く存在します。
そこまで大きな不正事件に発展しなくとも、業務が可視化されていなければミスの隠蔽につながりかねません。そうした視点からも、企業は早急に業務の属人化を解消する必要があると言えるでしょう。
経理業務が属人化しやすい原因
そもそも、経理業務が属人化しやすい原因はいくつかあります。ここでは、3点を挙げて解説していきます。
人手が不足している
人手が不足している部門では、適切な人数の従業員を配置できず業務が属人化しやすくなってしまいます。特に経理業務は専門性が高いため、誰でもすぐに業務に取りかかれるわけではありません。そこで知識や経験のある従業員に業務が集中し、他の従業員や上司とも共有できず属人化が発生してしまうのです。
また、業務が属人化すると、ひとつのタスクが終わっても「誰にも報告せず、他のタスクに移る」という状況になりがちです。すると、従業員間でコミュニケーションが不足してしまい、ますます業務がブラックボックス化しやすくなってしまいます。
ですから、担当替えが難しい経理業務は“人手が不足して属人化しやすい”傾向にあるので、注意が必要なのです。
ベテラン従業員に知識が集中している
1つ目に近い話ではありますが、ベテラン従業員に業務知識やノウハウが集中している点も属人化の原因のひとつと言えます。経理業務では特に、年に1度の決算作成や予算編成といった専門知識を要する仕事がベテラン従業員に集中しがちなのです。
そもそもベテラン従業員に知識が集中する要因として、日本の企業体制が挙げられます。日本はこれまで終身雇用制度が一般的で、ベテラン従業員が習得した独自の知識を次に受け継ぐ文化がありました。そこでは、ベテラン従業員が重要な仕事に集中して取り組むのは自然だったのです。
しかし現在は、終身雇用制度は崩壊しつつあり、属人化を前提とした企業体制のままだと問題が生じるようになりました。「転職が当たり前」となると、担当者がいなくなった場合に業務が滞ってしまうリスクが高くなってしまうのです。
ですから、企業はベテラン従業員の業務を標準化して、速やかに属人化を解消していく必要があるでしょう。
経理業務がマニュアル化されていない
経理業務がマニュアル化されていなければ、他の従業員とノウハウを共有できず業務が属人化しやすくなります。経理担当者が数名いたとしても口頭で引き継ぐしかなくなり、引き継いだ担当者しか内容を把握することができません。
また、マニュアルがあったとしても最新のやり方が更新されていなければ、実際に運用されている業務の進め方を共有できなくなります。
マニュアルがないということは、短時間で効率的に仕事を引き継ぐ仕組みが整っていないことを意味します。ブラックボックス化を解消し、確実に引き継ぎを行うためにもマニュアルの整備は重要だと言えるでしょう。
経理業務の属人化を解消する4つの方法
属人化の原因やリスクについて説明してきましたが、それではどのように解消すれば良いのでしょうか。ここでは「経理業務の属人化を解消する方法」として、4つを挙げながら解説していきます。
マニュアルを作成する
前述したばかりですが、やはり知識やノウハウの共有を仕組み化するためにも、マニュアルは作成しましょう。
そして、マニュアルは作りっぱなしにせず、最新情報のアップデートを含め常に改善していくことが大切です。急に完璧なマニュアルを作成するのは難しく、加筆や編集を重ねることで完成度は上がっていくものです。
また、マニュアルを更新したら即座にチームメンバーに報告するフローにすると、全員が変更点を把握できるようになるでしょう。こういったルールを定着させることで業務の標準化につながり、属人化の解消に向けた第一歩が踏み出せるはずです。
ワークフローを可視化する
経理業務に限った話ではありませんが、ワークフローを可視化するのも重要です。「いつ、誰が、何を、どれくらいの時間で」処理しているかを把握できれば、無駄や改善方法が分かりやすくなるからです。
たとえば、ワークフローを見直すなかで「特定の担当者に業務が集中し長時間労働が発生している」ことが発覚した場合、業務を分散する方法を検討しやすくなります。また、担当者に日報を義務付けることで、日頃からワークフローを把握しやすくもなるでしょう。
このように、ワークフローを確認しながら手順書や作業チェックリストを再設計することで、属人化を解消して業務効率化が図れるようになっていくはずです。
ナレッジマネジメントを徹底して行う
『ナレッジマネジメント』も属人化の防止に効果的です。『ナレッジマネジメント』とは、従業員が保有する知識やノウハウを共有し、企業の競争力や価値を高めていく経営手法です。
属人化の発生を完全に防止するには、経営陣が属人化を“経営課題”として認識し、知識の共有を徹底して行う風土を作っていく必要があります。
具体的には、ベテラン従業員が保有している『専門知識』や『コツ』などを明文化することから着手します。文章にするだけでなく図解にするなど、他の人と共有しやすい形に変換していくのがポイントでしょう。
そして、文章や図をデータ化して誰でもアクセスできる場所に設置するなど、共有化を図っていきます。このように、ナレッジマネジメントの運用を浸透させていくことで、知識が一人の担当者に集中する事態を阻止することができるのです。
経理のアウトソーシングサービスを利用する
経理のアウトソーシングサービスを利用するのも効果的です。経理のアウトソーシングサービスとは、税理士事務所や経理アウトソーシングベンダーに経理業務のすべて、または一部を依頼できるサービスです。
経理のアウトソーシングサービスを利用すると、確実に業務の属人化を防止することができます。委託する経理業務を洗い出すなかで仕事内容やフローが明確になり、標準化につながるからです。これによりブラックボックス化が解消され、不正防止にも役立つでしょう。
また、経理のプロに業務を任せられるため、品質向上も期待できます。当然ながら担当者の退職や不在による業務の滞りも起きにくくなるでしょう。さらに、経理アウトソーシングベンダーのなかには研修を提供している企業もあります。そのため、効率的な教育や引き継ぎも期待できるのです。
このように、経理のアウトソーシング化には様々なメリットがあります。業務の属人化を解消するために、導入を検討してみても良いかもしれません。
経理業務を改善する4つ手順については、こちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひ併せてご参照ください。
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経理のアウトソーシングならパーソルビジネスプロセスデザインへ
経理業務は属人化しやすく、業務が滞るなど様々なリスクがあるので早急な対応が必要です。そこでおすすめしたいのが、先ほどもご説明した『経理アウトソーシング』の活用です。
パーソルビジネスプロセスデザインは、経理業務アウトソーシングサービスをご提供しています。会計処理や請求、消込など基本的な業務だけでなく、ご要望に応じて作業手順の見直しまで承っています。
また、書類や帳票を自動で読み取りデータ化するシステム開発にも対応できますので、経理業務の『標準化』を実現することができます。
お客様のご要望に応じて業務範囲をカスタマイズすることも可能ですので、どうぞお気軽にお問い合わせくださいませ。