そもそも経理業務とは
経理担当者の主な仕事には、経費精算や帳簿への記録、決算のまとめや年末調整などがあります。日々対応が必要となる業務と、年に数回のみ対応が必要となる業務に分かれているのが一般的です。
日次、月次、年次ごとの経理業務は次のとおりです。
日次 | ・現金の出納管理 ・立替経費の精算 ・伝票整理 ・小口現金の管理 ・売上集計 など |
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月次 | ・給与計算と支払い ・社会保険料の納付 ・取引先への請求や支払い ・試算表の作成 ・在庫管理 ・未回収金の回収 など |
年次 | ・残高と帳簿とのすり合わせ ・決算のまとめ ・在庫計上 ・賞与計算 ・年末調整 ・税金納付 など |
社外コミュニケーションが主となる営業部門とは異なり、経理は社内で完結しやすい業務が多くあります。また、仮に経理業務が1日ストップしたとしても、顧客対応が必要ないため会社運営に直接大きな影響を与えることはないでしょう。
一方で、経営判断を行う重要な情報を扱う部署であるため、「業務の精度は高くなくてはならない」という特徴もあります。
経理業務の4つの課題とは
次に、経理業務の課題について4点を解説していきます。
課題(1)属人化しやすい
経理業務には簿記などの専門知識が必要です。そうなると、対応できる人材が限られているため“属人化しやすい”という課題があります。
経理業務を担当できる人材が不足していて、長年同じ従業員が担当しているケースも少なくありません。その人でしか把握できない業務が増えると、管理が行き届かなくなり業務がブラックボックス化してしまいます。
さらに、経理の知識やスキルがなければ担当替えも難しく、担当者が退職すると品質が落ちてしまうケースもあります。担当者がマニュアル化することなくイレギュラー対応をしていれば、引き継ぎが難しくなるからです。このように、経理業務は「属人化しやすい」ことが課題のひとつと言えます。
以下のコラムで、「属人化が起こる4つの原因」や、「標準化するための4ステップ」をご紹介しております。ご興味ございましたら、ぜひご覧ください。
属人化とは?原因やリスクを学んで業務標準化で属人化を解消する方法
課題(2)経理担当者の数に対して作業量が多い
経理部門に配置する人員数を最低限に抑える企業は少なくありません。企業によっては、経理担当者が1人しかいなかったり、他の業務と兼務したりするケースもあるでしょう。そのため、経理担当者の業務負担が大きく、オーバーワークに陥りがちになってしまうという課題もあります。
経理担当者の数を抑える企業が多い理由は、経理部門は“間接部門”と呼ばれ、直接的に利益を生み出す部門ではないからです。多くの企業は、売上に結びつく営業やマーケティング、製品開発部門に人材リソースを多く割く傾向にあります。
しかし、経理部門に人員が不足すると、当然ながら担当者に過剰な負担がのしかかります。特に請求処理が集中する月末や月初、年末調整の時期は業務が膨大になり残業時間が長くなっているケースも多いでしょう。その結果、ストレスを抱えて退職につながり、さらに人員不足に陥ってしまうリスクがあるのです。
課題(3)心理的負担による作業の遅延が起こる
経理業務は会社のお金を扱うため、「ミスが許されない」という心理的負担から作業の遅延が起こりやすいのも課題のひとつと言えます。
経理の仕事には経営判断に必須の「決算資料」の作成が含まれています。経理業務にミスがあれば、経営陣は事実と異なる経営計画を作成してしまうかもしれません。また、税務調査で指摘が入ったことが発覚すると社会的信用を失い、取引先から契約を打ち切られる事態に陥る可能性もあります。そのため、経理担当者は心理的プレッシャーを抱えがちで、慎重になりすぎるあまり作業スピードが落ちる傾向にあるのです。
しかし、このような状況を放置していると、決算資料の作成業務に遅延が生じ経営判断まで遅れるリスクがあるでしょう。スピードが価値を生む今の情報社会では、少しの遅れが大きな損害につながる恐れがあります。したがって、企業にとって経理業務の効率化への対応は喫緊の課題だと言えるでしょう。
課題(4)紙でのやりとりが多い
経理部門は請求書や納品書、伝票など紙でのやりとりが多い傾向にあります。デジタルデータに比べて紙の管理には手間がかかり、保管スペースが必要になるなど、業務が煩雑になるのも課題です。取引先へ送付する請求書だけでなく、社内伝票や精算書なども紙で運用している企業が多いのが現状なのです。
資料を社内外の関係者に送付する場合、資料を印刷し送付状を添えて封筒に入れ、宛名書きをして投函するといった一連の作業が必要となります。もしメールなどでデータ化した資料を送信できるなら、このような煩雑な作業は必要ありません。「紙の使用」は経理担当者の業務効率化を妨げている要因と言えるので、早急な対応が必要でしょう。
経理業務の自動化については、こちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひ併せてご参照ください。
経理の自動化は可能?自動化するための課題やポイントなどを徹底解説
経理業務の6つの改善方法
一般的に経理担当者が費やす業務時間の80%は、経費精算や支払業務といったルーチン作業だと言われています。つまり、「同様の業務」を日々繰り返し行っているので、改善しやすい側面があります。
さらに、経理業務は他部署と比較すると社外への影響も大きくないため、経理業務を改善しても問題が起こってしまうリスクは低いと言えるでしょう。
ここでは、6つの改善方法をお伝えしながら解説していきます。
改善方法(1)社内でフォーマットを統一する
伝票や請求書など、部門ごとに異なるフォーマットを使用していると、経理部門に渡されたときに処理が煩雑となってしまいます。ですから、まずは社内で書類フォーマットを統一し、他のフォーマットの使用を禁止することが大切です。
フォーマットを社内システムにアップロードし、誰でもアクセスできるよう設置しておきましょう。同じフォーマットを使用していれば、経理部門でのミスを防止しやすくなります。また、チェック時間を短縮できますので、業務効率化にもつながるでしょう。
改善方法(2)経理業務を可視化する
経理業務を改善するには「可視化」をする必要があります。どの担当者がいつ、どのような作業をしているか、といった部分を把握することで、経理業務の属人化やブラックボックス化を防止できるためです。
ですから、経理業務の改善にあたって、まずは経理担当者がどのような作業をしているかを洗い出すことから始めていきましょう。作業を全て書き出し、それぞれの工程にかかる時間までをヒアリングします。
もしひとりだけで作業している箇所があれば、複数によるチェック体制を組むことで不正防止になります。逆に、人数をかけすぎている工程があれば、どのように効率化できるか改善案を検討できるでしょう。
このように、これまでは見えづらかった経理業務の全体を可視化し、改善すべき点を見つけ出すのが重要なのです。
改善方法(3)ITツールを導入する
経理業務に経理ソフトやクラウド会計システムといったITツールを導入することで、大幅な業務効率化が実現します。
従来の経理業務は表計算ソフトを使用することが一般的でした。しかし保存ミスが発生しやすいほか、煩雑な業務に対応しきれないケースも増えてきています。そこで現在は、経理業務のIT化を進める企業が増加傾向にあるのです。
経理ソフトやクラウド会計システムを利用すると、入金が自動でツール上に反映されたり、税金計算も経理ソフトが判断したりするので、経理担当者の負担やミスが軽減される点が大きなメリットです。また、帳票出力についてもツール内のフォーマットを使えば簿記知識を補完してくれるなど、従業員の経験を問わず一通りの業務が遂行できるでしょう。
改善方法(4)ペーパーレス化を促進する
社内でペーパーレス化を促進すると、経理業務の改善に繋がります。特に最近は電子帳簿保存法が改正され、国税関係の帳簿や書類のデータ保存への対応が必要となりました。
ペーパーレス化を実現するとさまざまな書類管理を効率化できるだけでなく、コスト削減にもつながります。電子データで保存できれば紙代や印刷代をカットでき、書類管理にかかる人件費も削減できるからです。
さらに、紙媒体を保存するには管理スペースが必要で、盗難や紛失といったセキュリティ上のリスクがありました。その点、電子データで保存すれば管理しやすく、セキュリティ上のリスクを軽減することができるでしょう。
また、ペーパーレス化が進められるとリモートワークにも対応しやすくなり、働き方が変わることで従業員満足度の向上も期待できます。
経理業務は日々多くの書類を処理する必要があるので、ペーパーレス化が進むと大きなメリットがあると言えるでしょう。
改善方法(5)キャッシュレス化を促進する
キャッシュレス化も経理業務の効率化に有効な方法です。経理部門に小口現金がある場合、「現金の補充」や「両替」、「現金出納帳の管理」といった細かい作業が生まれます。金庫にある残高と現金出納帳の記載が合わなければ、原因を見つけ出すのに無駄な時間を費やしてしまうでしょう。
そこでキャッシュレス化の導入で小口現金を廃止することで、煩雑な業務がなくなり業務効率化につながります。これまで立替経費を小口現金で精算していたのであれば、給与支払とまとめて銀行振込にすることで、釣り銭や管理が不要となり経理担当者の負担が軽減されるでしょう。
改善方法(6)経理のアウトソーシングを利用する
経理業務の改善には、アウトソーシングの利用も効果的です。最近では、経理業務を外部委託する企業が増加傾向にあります。
経理アウトソーシングとは、経理アウトソーシング業者や税理士事務所などに経理代行を依頼できるサービスです。記帳、給与計算、売掛金や買掛金の管理、年末調整などをまとめて依頼することができます。プロの経理担当者に業務を依頼することになるので、業務は効率化され、社内担当者はより重要な“コア業務”に専念できるでしょう。
さらに、経理業務を委託するには一度社内で業務を洗い出す必要があります。その際にブラックボックス化していた業務が明確となり、外部の担当者が請け負うことで不正防止にもつながるというメリットがあります。
経理業務を負担に感じているのであれば、経理アウトソーシングの活用を検討しましょう。
また、経理代行サービスを利用するメリットやデメリットが気になる方も、いらっしゃるのではないでしょうか。
以下のコラムでは「経理代行サービスの概要」などについて、ご紹介しております。
経理代行サービスとは?サービスの概要やメリット・デメリットを徹底解説
経理代行の料金相場について詳しく知りたい方は、こちらの記事も併せてご参照ください。
経理代行の料金相場は?業務内容ごとに目安をピックアップ
経理業務改善によるメリット
経理業務改善によるメリット
続いて、経理業務の改善によってもたらされる4つのメリットについて解説していきます。
メリット(1)ヒューマンエラーを防止できる
まずは、経理業務が効率化されると「ヒューマンエラーを防止できる」というメリットがあります。たとえばITツールの導入で、入力や計算といった単純作業が自動化されると人が処理する工程が減り、ヒューマンエラー削減につながります。
入力や計算といった単純作業は、人が行うとどうしてもミスをゼロにするのは難しいものです。しかしITツールなら、正確に作業できるだけでなく迅速に対応することもできます。人が対処するよりも速く正確に業務が完了するので、担当者の負担も減少するはずです。
メリット(2)コア業務に集中できるようになる
経理部門において本来取り組むべきコア業務は、「資金計画」や「予算管理」です。その他の日常業務が改善され効率化が実現すると、担当者はこれらのコア業務に専念できるようになります。
これまで経理担当者は日々の作業に追われ、予算管理などに向けた勉強やスキルアップが難しい傾向にありました。しかし、業務が改善されればコア業務に取り組む余裕が生まれ、「予算実績の報告」や「資金繰りを経営陣に提案する業務」などにも取りかかることができます。また、財務指標の作成や有益なデータの提供など、経営分析にも向き合えるようになるでしょう。
メリット(3)経理業務のコストカットができる
経理業務を改善すると、コストカットにつながるのもメリットのひとつです。社内担当者の残業時間を短縮できたり、紙や切手の経費削減ができたりするためです。
アウトソーシングの利用やITツールを導入する場合、初期費用や維持費用は発生します。そのため、短期的に見るとコストがかかるように思えますが、中長期的な視点で見ると業務効率が改善し、費用対効果が高まることがわかるはずです。
したがって、業務改善プロジェクトに取り組む際は、コストについて中長期的に判断することが大切です。
メリット(4)経営陣へ素早く情報提供ができる
経理業務が効率化することで、経営陣へ有益な情報を素早く提供できるようになります。精度の高い月次決算は、的確な経営判断に必須と言えます。リアルタイムで業績を把握でき、今後の利益を予測するために使われるからです。
また、数字を毎月確認することで、改善点や原因を特定して対策を講じられるようにもなるでしょう。
先行きが不透明で予測が難しい“VUCA”と呼ばれる現代においては、迅速な経営判断が欠かせません。品質の高い月次決算を経営陣に提供することで適切な「次の一手」を打てるようになるのです。
経理業務を改善する4つの手順
経理業務を改善するメリットをご説明してきましたが、続いては実際に改善するための『4つの手順』について解説します。
手順(1)業務内容を全て洗い出す
まずは経理業務を全て洗い出すことから始めましょう。洗い出して「可視化」することで、何が非効率の原因となっているかを特定しやすくなります。担当者一人ひとりが時系列で書き出すことによって、漏れなく把握できるはずです。
手順(2)経理部門内の業務フローを作成する
次に、経理部門の業務フロー全体を作成します。経理責任者が個別の担当者に確認しながら、お金や業務の全体の流れを「見える化」していきましょう。
手順(3)課題を発見し改善案を出す
手順(1)と(2)で個別業務とフローを洗い出すことで、次のような課題が浮かび上がってくるはずです。
- 同じ書類が重複してチェックされている
- ITツールの自動計算機能を活用できていない
- 特定業務に「属人化」が発生してしまっている
このような課題を発見するには、『ECRSの原則』に沿って考えていくことが大切です。『ECRSの原則』とは、業務効率化の際に使用されるフレームワークで、次の項目を示します。
- E(Eliminate)…排除できないか
- C(Combine)…まとめられないか
- R(Rearrange)…順序の変更ができないか
- S(Simplify)…単純化できないか
これを「経理業務の効率化」に当てはめてみると、例として次のようになります。
- E(Eliminate)…無駄な資料チェックや作業をなくせないか
- C(Combine)…小口現金による立替経費の精算を、給与振込にまとめられないか
- R(Rearrange)…経理業務の担当替えや順序替えはできないか
- S(Simplify)…ペーパーレス化によって紙処理をシンプルにできないか
以上のようにECRSの原則で考えていくと、次で解説するような具体的なプランにつながっていくので、ぜひ使ってみましょう。
手順(4)具体的なプランを実行する
最後に、具体的なプランを実行します。預金通帳をひとつにまとめたり、ITツール導入で入力作業を減らしたりするなど、アクションを起こしていきましょう。
実行後に、施策が上手くいっているかを定期的にチェックすることも大切です。改善点があれば再考し、PDCAサイクルを回していきましょう。
経理業務のアウトソーシングならパーソルビジネスプロセスデザインへ
経理業務を改善するには、まず原因を特定する必要があります。経理業務が非効率となる要因として、属人化や作業量の多さ、心理的プレッシャーや紙媒体の煩雑な管理が挙げられます。そこで経理のITツールを導入したり、アウトソーシングを利用したりすれば、業務負担が大幅に改善されるでしょう。
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また、お客様の業務に合わせて「請求」や「支払の照合業務」や「入金消込業務」などを自動化できるシステム開発をすることができます。書類や帳票を高精度で読み取り、自動処理ができますので、業務効率化が促進されるのが大きなメリットです。
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