BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)とは
BPOとは「ビジネス・プロセス・アウトソーシング」を意味し、企業活動の業務プロセスの一部を専門業者に外部委託することを指します。委託するにあたり、単なる業務の実施だけでなく、業務の企画や設計まで一括して依頼することも可能です。
社内で対応しきれない業務を専門業者に依頼することで、企業は人的リソースをコア業務に割けるようになるのが大きなメリットと言えるでしょう。
なお、混同しやすい用語に「アウトソーシング」がありますが、アウトソーシングには「業務すべてを外部委託する方法」が含まれます。一方、BPOは「一部分のみを外部委託する」という点で違いがあります。
BPOの種類
BPOは大きく分けて、IT系と非IT系に分類できます。それぞれの詳細は、次のとおりです。
IT系 | ・IT関連のシステム運用 ・データセンターやクラウドサービスなどが含まれる |
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非IT系 | ・人事、総務、経理などバックオフィス ・営業、コールセンター、マーケティングなどフロントオフィス |
BPOサービスの市場規模
続いて、BPOサービスの市場規模を見てみましょう。
矢野経済研究所が実施した「国内BPO市場規模推移・予測」によると、「2023年度のBPOサービス市場は委託業務内容の拡大に加え、官公庁においても外注化機運が高まっている」とし、「今後も拡大基調で推移する」と予測されています。
下図からも分かる通り、BPOサービスは今後も拡大していくといえるでしょう。
※参考:矢野経済研究所「引用国内BPO市場規模推移・予測」
市場規模が拡大している理由として、「DX推進」や「働き方改革」で業務改善に取り組む企業が増えた点が挙げられます。業務オペレーションを根本的に変革する企業が増え、BPO需要が増加しているのです。
また、次で解説する「政府による電子化の推進」も、BPOを検討する企業が増加したきっかけとなったと考えられます。
電子化によりBPOの活用が広まっている
今後、本格的なデジタル化社会を迎えるために、政府は企業活動に対してデジタル化を推進しています。その一環として、2021年1月に電子帳簿保存法が改正されました。これにより、帳簿書類を電子的に保存する際の手続きなどが見直され、今後はデータ保存が義務化されることになったのです。
電子化のメリットやデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。電子化が進むなかでBPOの活用が広がる理由についても、あわせて触れていきます。
電子化によるメリット:業務効率化が実現する
企業内で電子化が進むと、業務効率化が実現するというメリットがあります。紙の原本を廃棄できるため保管スペースが必要なくなり、管理コストの削減が可能になります。さらに、データで書類の送受信ができれば、紙を印刷する手間やコストも減らせるでしょう。
また、電子データならキーワード検索が容易にできるので、必要なデータの検索性が向上します。書類を探す無駄な時間がなくなり、作業が効率的になります。
電子化により『仕訳』『入金消込』『経費精算』などの業務を効率化できます。
下記コラムで経理を効率化させる方法について解説しておりますので、ぜひご覧くださいませ。
経理の自動化は可能?自動化するための課題やポイントなどを徹底解説
また、昨今では『SDGs』が重視されており、環境に配慮した取り組みが企業にも求められます。そこでペーパーレス化を徹底して社内浸透させると、地球環境に配慮した企業として社会的に認知されることにもなります。これも、電子化によるメリットのひとつと言えるでしょう。
電子化によるデメリット:現場負担が大きい
一方で、電子化によるデメリットもあります。これまで紙媒体での業務遂行が当たり前だった企業にとって、電子化による書類のデータ保存やペーパーレス化への切り替えは大きな負担です。ベテラン従業員のなかには、手書きメモに慣れていて電子化に抵抗を示す人も少なくないでしょう。
さらに、会計ソフトで作成した帳簿や国税関係の書類をデータ保存したり、紙の請求書をスキャンしたりするなど、さまざまな現場対応が迫られることも事実です。
そこで、担当者の負担を減らしながら抜本的な業務改革をするために、経理やコールセンターといったさまざまな部門でBPOが導入され始めているのです。
経理業務のBPOサービスとは
それでは、経理業務においては具体的にどのような業務でBPOサービスが活用できるのでしょうか。いくつか挙げてみましょう。
伝票入力 | 精算書などの取引内容を会計ソフトに入力。経理業務の基本的な作業なので外部委託しやすい。 |
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支払い | インターネットバンキングに取り込むデータを作成。実際の送金は発注企業が巻き取るケースが多い。 |
請求書作成 | 請求単価や消費税、支払い期限や振込先などを記載した請求書を作成する。 |
入金消込 | 取引先から入金されたら売掛金の消込を行っていく業務。 |
決算 | 損益計算書や貸借対照表といった決算書類の作成を行う。 |
これらの業務すべてではなく、一部の業務プロセスを委託できるのがBPOの特徴です。効率的に活用するためにも、まずは社内で「委託する業務」の選定を行いましょう。
経理業務でBPOを活用するメリット
経理業務でBPOを活用するメリットとしては、主に以下の5点が挙げられます。
- (1)人材不足を解消できる
- (2)コストを削減できる
- (3)ブラックボックス化が解消される
- (4)コア業務に注力しやすくなる
- (5)経理のプロに任せられる
ここでは、それぞれについて解説していきます。
(1)人材不足を解消できる
経理業務の一部でBPOを利用すれば、人材不足の解消は期待できるでしょう。
そもそも経理業務には専門知識が必要なので、人材不足が慢性的に発生する傾向にあります。そのため、採用活動を実施して人材の育成を行うよりも、BPOを利用したほうが必要な人材をすぐに補うことができます。
特に、煩雑な作業になりがちな伝票整理や経費精算といった経理業務を委託すると、担当者の負担が大幅に減少して人材不足の解消につながりやすくなるのです。
(2)コストを削減できる
BPOの導入は、コスト削減につながるのもメリットのひとつです。経理業務は繁忙期になると人員不足が顕著になりますが、人員を増やすと閑散期にコストがかかりすぎるという課題があります。
そこで、繁忙期にBPOを活用して外部委託することで、人材不足が解消されます。そうすると、閑散期には余計なコストをかけることなく業務の効率化を進めることができるようになるのです。
(3)ブラックボックス化が解消される
BPOを導入すると、自社の経理業務に社外からのチェックが入るので“ブラックボックス化”の解消につながります。
通常の経理業務は、担当できる人材が少ないことから属人化しやすい傾向にあります。「誰が、どのような業務を行っているか」を把握しづらく、ミスの隠蔽や不正が発生しやすいというリスクが存在しているのです。
そこでBPOを活用して経理業務を外部委託すれば、業務が『可視化』され不正が起こりにくい企業体制を構築できるでしょう。
パーソルビジネスプロセスデザインの経理アウトソーシングサービスでは、作業手順書や工程管理表を作ることでブラックボックス化を防いでおります。
詳細につきましては、以下のページよりご確認くださいませ。
経理業務アウトソーシング
(4)コア業務に注力しやすくなる
経理担当者の本来の業務とは、「予算管理」と「資金繰り」です。BPOを導入して煩雑な業務を外部委託すれば、時間を使うべきこれらのコア業務に注力しやすくなるでしょう。
つまり、『ノンコア業務』とされる伝票入力や支払い、請求書の作成など煩雑な作業から解放されることで、企業の人材リソースをより重要な業務に使えるようになるのです。
経理は“間接部門”にあたり、直接売上に貢献するわけではありません。しかし、経営判断に必要な情報を多く扱う部署であるからこそ、コア業務に集中して品質を高める必要があると言えます。
(5)経理のプロに任せられる
経理業務にBPOを導入することで、専門的な知識が必要な仕事をプロに任せられるというメリットがあります。経理のプロから業務効率化に向けたアドバイスが受けられたり、税法の改正など最新情報の提供を受けられたりします。
もし税理士事務所に業務を外部委託する場合には、「節税に関するアドバイスがもらえる」というのも大きなメリットと言えるでしょう。
経理業務でBPOサービスを選ぶ際の4つのポイント
経理業務においてBPOサービスを選ぶ際のポイントについて、4点を挙げて解説していきます。
(1)実績があるか
BPOを利用して経理業務を外部委託する際は、「実績の確認」が重要です。実績といっても数だけでなく、企業規模や業種、委託された業務範囲をヒアリングし、自社の要望と類似しているかをチェックしましょう。自社の要望や課題に近い実績があれば、スムーズに対応してもらえる可能性が高くなるからです。
また、可能であれば「BPOの導入でどのような効果がもたらされたか」を確認できると、自社にとって有益かどうか判断しやすくなります。
加えて、実績件数はもちろん、継続年数や継続率の確認も必要です。特に継続率を知ることで、信頼できる業者かどうかを判断しやすくなるでしょう。
(2)希望のサービスがカバーされているか
BPOを提供する業者によって委託できる業務範囲は異なりますので、BPOサービスの内容と自社が依頼したい内容が一致しているか確認しましょう。
経理業務においてBPOでよく利用されるものとしては、記帳代行、残高照合、売掛金や買掛金の管理、月次決算などがありますが、これらがカバーされているかを事前に確認しておくことが大切です。
また、単に経理業務を依頼するだけでなく、業務フローの整備や手順書の再設計といった「電子化に向けた業務改革のアドバイス」などが受けられるかどうかも相談してみると良いでしょう。
記帳代行の業務範囲については、こちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひ併せてご参照ください。
記帳代行とは?経理代行との違いや、メリット・デメリットまで徹底解説
(3)費用対効果が高いか
導入を検討しているBPOが、費用対効果が高いサービスかどうかも確認が必要です。経理業務を外部委託するにあたってコストが気になるのは当然ですが、十分に検討をせず格安な業者に飛びついてしまうのは賢明な判断とは言えません。コスト重視で依頼すると、品質や対応に満足できない可能性があるからです。
そこで費用面だけでなく、高品質の業務対応が期待できるか、業務のカスタマイズは可能か、緊急時に電話対応はしてもらえるかなど、総合的に見て費用対効果を考えていくことが重要になります。
(4)セキュリティ対策が講じられているか
委託業者内でセキュリティ対策が講じられているかという点も重要項目と言えるでしょう。経理業務では会社にとって重要な情報を取り扱いますので、セキュリティ面に配慮した業務フローの構築が必須になります。
BPOを導入する際は、守秘義務契約を結び、「プライバシーマーク」の取得や「ISO」などの国際セキュリティ規格の認証を受けているかを確認しましょう。このような認証を保有する企業は適切に情報セキュリティを管理しているので、情報漏洩といったリスクを避けやすいと考えられます。
経理業務でBPOサービスを導入するためのステップ
それでは次に、経理業務でBPOサービスを自社に導入するためのステップを見ていきましょう。
- (1)委託する目的を明確にする
- (2)委託する業務を決める
- (3)サービス会社を選定する
これら3つのステップについて、それぞれ解説していきます。
(1)委託する目的を明確にする
まずは、委託する目的を明確にすることが大切です。社内で電子化を推進したいのか、それとも特定業務の効率化を目指したいのか、人材不足を解消したいのかなど、それぞれの課題によって解消方法も異なってきます。
委託する目的が曖昧なままでは「手段」や「委託先の業者」も定まりにくく、実際にBPOを導入するまで時間がかかりすぎてしまう恐れがあります。ですから、どのような課題を解消したいのかを明確にし、組織改革に向けて社内で戦略を立てておくことが重要です。
(2)委託する業務を決める
委託する目的が明確になったら、次は業務範囲を決定します。実際に業務に携わっている担当者にヒアリングし、何を外部委託すべきか話し合いましょう。
大切なのは、現場で働く従業員の声を反映しながら、社内で取り組む業務と外部委託する業務を分けることです。委託したい業務内容を明確にすることで、次のステップである「サービス会社の選定」が行いやすくなります。
(3)サービス会社を選定する
依頼したい業務内容が決まったら、それらに対応しているサービス会社を選定していきます。
選択するにあたっては、依頼できる業務範囲やサービス料金の確認が必要でしょう。複数の会社から見積もりを取って提案を受け、自社にとって最適なサービス会社を選択しましょう。
経理業務のBPOサービスならパーソルビジネスプロセスデザインへ
昨今、企業は電子化への対応に迫られており、現場担当者の負担を減らすため、経理業務にBPOの導入を検討する企業が増えています。BPOを利用すれば、経理部門における業務効率化やペーパーレス化の促進、人材不足の解消が実現できるでしょう。
わたしたちパーソルビジネスプロセスデザインは、BPO専業として50年の実績があります。経理業務アウトソーシングサービスを提供しており、さまざまな業種のお客様にご利用いただいています。
ルールや運用方法の見直しによる業務の標準化も支援していますので、幅広く業務を委託していただくことができるのです。
お客様のご要望に応じて業務範囲をカスタマイズすることも可能ですので、ぜひお気軽にパーソルビジネスプロセスデザインまでお問い合わせください。