導入前の課題
マイナンバーカード交付について、市民の利便性を向上させなければ
平成28年からスタートしたマイナンバーカードの交付。全国の市区町村がマイナンバーカードの交付業務に追われましたが、それは京都市様も同様でした。
京都市様では、マイナンバーカードの交付業務を各区役所、支所の「市民窓口課」で行っていました。マイナンバーカードの受取りは、お住まいの区役所、支所に行く必要がありますが、区役所、支所は平日の9時から17時までしか開いていません。
地域自治推進室の山上様は、市民からの要望について次のように語りました。「平日は仕事などで窓口に来られない方から『なかなか取りにいけない』『休日にもやって欲しい』というご要望もありましたし、カード交付の促進をしていかないといけないこともあり、土日でも受け取っていただける場所を作らなければならない、ということが重要な課題となっていました」
『カード交付の促進をしていかないといけない』というのは、まさに国からのお達しでもありました。「国からも“円滑化計画”を策定し、令和4年度末までに全国民マイナンバーカードを保有してもらえるようにやりなさい」ということで、それに基づいてカード交付を進めていかないといけないわけです。そうなった時に、“平日しか取りに行けない”というのは利便性が良くないわけです」と山上様は眉をひそめます。
京都市には、地下鉄の駅や阪急の駅など5ヶ所に『証明書発行コーナー』が設けられていました。そこでは「住民票」や「印鑑証明」が土日も発行されていたわけですが、その『証明書発行コーナー』でマイナンバーカードの交付もやっていこうということになったのです。
「市民の利便性を向上すること。それから、円滑な交付に努めていこうということで、土日や平日の夜間19時までカードを受け取ってもらえるようにしよう、と。そのためにも、証明書発行コーナーで『カードの予約制での交付』というのを始めることになったんです」と山上様。そうして京都市様は、『カードの予約制での交付』に係る業務について委託先を検討していきました。
取り組み内容
宮崎のアウトソーシングセンターで『予約電話』を受け付ける
京都市様が出した公募型プロポーザルに対しては複数の企業から応募があり、以下のポイントに沿って選定が行われていきました。
- システム自体が“市民の利便性”に配慮しているか
- 京都市側が実際に業務をするうえで、“状況の把握”が簡単にできるか
- システムが安定的に稼働しているか
- セキュリティ対策ならびに安全性が確保されているか
- コールセンターの運営において、“予想される受電数”に対応した体制が取れているか
- 効率的かつ効果的な体制が組まれているか
- これまでの実績があり、ノウハウの蓄積があるか
- サービスを維持していくためのレベルが保てているか
これらのポイントについて選定委員会で点数をつけ、点数の高かったところを選ぶという形で進められ、最終的に選ばれたのがパーソルビジネスプロセスデザインでした。パーソルビジネスプロセスデザインは、宮崎県にある『宮崎アウトソーシングセンター』で電話を受けていくことになったのです。
しかし、マイナンバーカード自体の歴史は浅いため、制度への理解が浅く、十分な知識を備えておりませんでした。ただ、万が一「案内ミス」が出てしまうと大きなトラブルに発展してしまう業務でもあるため、京都市様との連携を密に取りながら業務を構築していったパーソルビジネスプロセスデザイン。
そうして「証明書発行コーナー」の予約電話を1日に30件ほど受け付けていくようになりましたが、京都市様はさらに利便性を高めようと動きます。マイナンバーカードに係る業務を1か所に集約させるため、『マイナンバーカードセンター』を立ち上げることになったのです。
「『土日でも開いてます』という場所を用意する市区町村はあると思いますけど、1か所に集約したセンターを設ける市区町村は、全国でもあまり無いと思いますね」と山上様が言うように、東京や横浜などの大都市以外ではなかなか無い取り組みを進めた京都市様。
2021年9月、烏丸通の「カラスマプラザ21」内に『マイナンバーカードセンター』が開設されると、区役所でのカード交付もすべて予約制に切り替わり、コールセンターへの入電も増加していったのでした。
導入の効果
入電数は30件から100件まで上昇するも、安定的に運用
それまでは「証明書発行コーナー」のみの予約電話を受け付けていましたが、『マイナンバーカードセンター』が立ち上がったことで、区役所でのカード交付もすべて予約制に切り替わり、コールセンターへの入電も100件近くまで増加しました。
電話対応のスクリプトを修正しながらも、柔軟に業務をアップデートしていったパーソルビジネスプロセスデザイン。そんな同社の対応について山上様にお伺いすると、次のように回答いただきました。
「マイナンバーカードの電話対応は初めての業務なので比較対象がないんですけども、それでもしっかりと各種案内をしていただいている印象ですね。カード交付以外のお問い合わせも結構かかってくるんですが、それらにもしっかり対応いただけているので、とても助かっています」
さらに、京都市様から「問い合わせが増えてきたので体制を変えて欲しい」、「やり方を変えたいので、新しい運用で行ってほしい」といったさまざまなご要望をいただいたパーソルビジネスプロセスデザイン。しかし、業務を変更しながら形を変えてアップデートさせていく運用スタイルは、まさにパーソルビジネスプロセスデザインの得意とするところでした。
体制を変えられずに電話が繋がらなければ市民の皆さまにご迷惑をお掛けすることになり、クレームもいただいてしまいます。しかし、増員するとか体制を柔軟に変更させてもらえるといった環境は非常にやりやすく、現場としてもパフォーマンスを最適化していきやすかったのです。
業務の今後について、「カードの取得率が100%に近づいてきたあと、今度は『更新』ですとか、また違う業務が増えてくるということになると思います。それを、“どこまで外部に委託できるのか”なども考えていく必要がありますね」と、山上様は次のアップデートも見据えていらっしゃいました。
お客様プロフィール
京都市役所
京都は794年から1000年以上にわたって都が置かれ、歴史の中で日本の中心として栄えてきました。神社仏閣や史跡が今でも色濃く残り、世界中の人々を魅了する都市が京都市です。第二次世界大戦の戦災被害を一部のみ免れた神社仏閣、古い史跡、町並みが数多く存在し、さまざまな歴史的文化や祭りが国内外の観光客を惹き寄せる観光都市。旧市街地を中心に建物の高さ規制や広告表示の制限がなされ、古い街並みが保全されているのが特徴です。さらに、旧帝国大学の京都大学をはじめとする多数の大学が集積し、国内外から学生や研究者が集まる日本有数の学園都市にもなっています。
本社所在地 | 京都市中京区寺町通御池上る上本能寺前町488 |
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設立 | 1889年 |
代表者 | 門川 大作 市長 |
従業員数 | 1万8,628名(2021年4月1日時点) |
担当者コメント
本プロジェクトの成功要因の一つに、相互の改善意思の合致があると考えています。弊社の本業務における強みは、業務上の課題・問合せ状況・予約場所や規模の変化をタイムリーにキャッチし、体制や運用にすぐに反映させることです。京都市様からも、「業務をより良く」「市民様のために」という視点で、課題やご要望を積極的に共有していただくことで、その強みを最大限発揮し、業務を常にアップデートし続けることができました。
今後も京都市様と協力しながら、市民サービスに最大限貢献していく所存です。
※掲載内容は取材当時の情報です。