人口150万人、75万世帯に給付金をできるだけ早く届けなければ
※本記事の内容、お客さまの役職、当社社員の役職および旧社名は、取材時の情報に基づいています。
新型コロナウイルス感染症によって経済活動を止められてしまい、多くの人が困窮する事態になったのは説明するまでもありません。2020年4月20日に緊急経済対策として、1人につき10万円を支給する『特別定額給付金』が閣議決定されました。
10万円を少しでも早く住民に届けようと、どの自治体も特別な体制をつくるべく動きだします。それは、人口150万人を有する神戸市でも例外ではありませんでした。
担当係長である箱丸様は、「特別定額給付金は市民が待ち望んでいるものですから、神戸市としては6月中には90%の世帯に給付するという目標を掲げました」と言います。しかし、課題は山のようにあったようで、その一つを口にしました。「事業規模が大きく、市の内部で体制を考えるような時間もありませんでした」
神戸市
福祉局政策課 担当係長
箱丸智史 様
市の内部で体制を考える時間がないということにも理由があり、一般的に市区町村の職員は定期的に異動があるため「内部にノウハウが蓄積されにくい」のだといいます。ただ、その代わりに『公民連携』を進めていました。神戸市は、1995年の阪神・淡路大震災以降、行財政改革の一貫で職員数を減らしてきたそうです。その頃から徐々に民間委託を進めており、民間の力を積極的に活用する雰囲気が醸成されていた、ということでした。
「そこで、できるだけノウハウを持った信頼できる事業者さんにお願いできればと思いました」と箱丸様がいう通り、すぐに外部委託へと動き出したようです。
「早く給付するためには、パーソルテンプスタッフさんにお願いするのがベストだ」
実は、リーマンショックの翌年である2009年にも「定額給付金」はあったのです。その際に定額給付金事業を担当していたのがパーソルテンプスタッフでした。その後も、臨時福祉給付金事業やマイナンバー制度が導入される際の事務も担当させていただいており、現在も、さまざまな申請の処理やお問い合わせを一括して対応する「行政事務センター」の事業を担当していました。
また、行政事務センターなどに寄せられる電話でのお問い合わせは、同じパーソルグループであるパーソルワークスデザインの宮崎第1アウトソーシングセンターで対応していたため、「給付金の事務処理」だけでなく、「市民からの電話対応」についてもすでに経験があったのです。
「給付金のノウハウを持っていることもありますし、早く給付するためにはパーソルテンプスタッフさんにお願いするのがベストだと判断しました」と箱丸様は言い、早々に随意契約での委託へと進みました。
依頼を受けたパーソルテンプスタッフは、すぐに神戸市内に給付事務局を置きます。そして、最大で1日あたり250人の体制を組めるよう進めていきました。さらに、電話窓口もパーソルワークスデザインが宮崎に1次コールセンターを開設していったのです。
1日に2トントラック3台分の申請書が――。「これは大変だな、と」
郵送での申請が始まると、毎日のように大量に申請書が届くことになりました。多い時で1日に25万通届いた日もあったといいます。箱丸様は、当時のことをこう振り返ります。「その日に届いた申請書は、2トントラック3台分です。あの25万通を見た時は、『これは大変だな』と思いました。」
昼間は約200人のスタッフが事務局で業務をしていましたが、25万通の申請書を開封するのは難しい状態。とてもじゃないけど間に合いません。そこでパーソルテンプスタッフは、夜間にも50人ほどの体制を整え、夜間のスタッフには開封作業だけに専念してもらうようにしたのです。
また、業務に使用するパソコンも当初は70台あまりで対応する予定でしたが、「早い給付を目指す」ということもあり、計算し直すと200台必要になることが分かりました。しかしスケジュールがタイトなこともあり、リース会社から「これ以上は無理です」と断られてしまうことも。それでも、なんとか工面しながら進めていったのです。
神戸市様が「6月中に9割の給付」を目指していたため、それを『どうすれば実現できるのか』と考えながら進めていきました。たとえば、スピードが求められる入力業務についても、スタッフ一人ひとりのスキルを確認して、途中からデータ入力の経験があるスタッフ中心に入れ替えていくなど、運用についても随時アップデートしていったのです。
問い合わせは1日で5万件になることも
市民からの電話窓口は、同じグループのパーソルワークスデザインが宮崎に1次コールセンターを開設しました。平日で50回線、多い時には55回線を用意したのです。人員はスーパーバイザーを含めて約80人。この体制で土日も含めて毎日対応をしていきます。さらに、構成としても2段階にしていました。
実は、1次コールセンターでは個人情報を取り扱っておらず、申請書の書き方や概要など簡単な問い合わせに対応するようにしました。そして、個人情報に関わるお問い合わせや、1次で解決できなかったものは、神戸市内にあるパーソルテンプスタッフの2次コールセンターに渡して対応するようにしていたのです。
しかし、コールセンターには最大で1日5万件の問い合わせが入ってくることもあり、さすがにすべての電話に対応することができません。オペレーターは会話が終わって電話を切ると、すぐに次の着信を受け、1日中ずっと話し続けている状態になりました。この状況をうけ、担当部署の方々とも度重なる打ち合わせを行い、申請後の受付について市民自らが申請者番号から申請状況などを確認できるサイトの導入を実施したのです。
箱丸様はこう言います。「サイトが立ち上がったのは、6月上旬です。6月10日には1日で25万件のアクセスがありました。申請者となる世帯主は76万人なのに、すごい件数ですよね」
また、コールセンター側でも窓口の営業が終了した午後5時30分以降にお問い合わせいただく方のために、質問に自動で応答するチャットボットを用意しました。
スピード給付が完了、問い合わせも98%対応。「安心してお任せできました」
2020年4月20日に『特別定額給付金』が閣議決定されてから、わずか3日後にはコールセンターを立ち上げることになった神戸市様。5月18日にはオンライン申請分、同月28日には郵送での申請分の給付を開始していきました。
そして、給付率は5月末に約80%、7月8日には99%となり、79日目にしてほぼ振り込みが完了。これは人口100万人以上の大都市の中では圧倒的に早いスピードであり、多くのメディアでも取り上げられ、全国で話題となりました。
例)毎日新聞デジタル(2020年7月27日掲載)
コールセンターに殺到していた問い合わせについても、6月には1次コールセンターで82%を解決。2次コールセンターでは98%を解決して、残りの2%を神戸市様に依頼する形になりました。神戸市様がつくった「サイト」とパーソルワークスデザインが用意した「チャットボット」により、問い合わせ件数を抑える効果は確実に出ていたといえます。
短期間のプロジェクトではありましたが、多くの結果を残すことができたパーソルテンプスタッフ。とはいえ、これまでの経験だけでは対応できない部分もたくさんありました。そういった壁にぶつかった際には、自社がこれまで担当してきたいくつものプロジェクトの進め方について社内で聞きながら、よりふさわしい運用方法を模索していったのです。
この点については箱丸様からも次のように評価いただけました。「パーソルテンプスタッフさんがバックボーンとして社内にさまざまなノウハウを持っていることが大きかったですね。職員だけでやろうとしても無理だったと思います。」
箱丸様にコメントいただいたように、これまで官民のプロジェクトで多くの運用を行ってきたなかで『トータルソリューションのノウハウ』を保有していたことや、『大量の処理業務を行うための運用ナレッジ』を保有していたことが、今回のスピード給付に繋がったのではないかといえます。
箱丸様も「安心してお任せできましたね。短期間ではありましたが、密に連携させていただいて、とても濃い業務が一緒にできたと思っています。」と笑顔を見せてくださいました。
担当者コメント
パーソルテンプスタッフ株式会社
西日本OS事業本部 本部長
藤原理絵
給付に向けて動き始めた頃は、総務省からの通達内容も日々変わるため、なかなか前に進まない場面もありました。そんな時でも神戸市様から「この点は絶対守ってください」と指針を出していただいたので、そのなかで運用を変えていくことができ、助かりました。
パーソルテンプスタッフ株式会社
西日本OS事業本部
西日本第二BPOサービス部 西日本BPO運用三課
上西邦彦
神戸市様からは丸投げされるのではなく、「このように進めたい」と方向性を示していただきましたので、その方向で「私たちが最大限できることはなんだろう」と、対応を考えやすかったです。
パーソルテンプスタッフのBPOは、今後も皆さまの業務改善や生産性UPをサポートしてまいります。お困りごとやご相談があれば、お気軽に電話やフォームからご連絡くださいませ。