導入前の課題
年間25,000件以上の問い合わせ。職員が対応するだけで必死
「ゴミが不法投棄されている」「道路に穴が開いている」「ペットが亡くなってしまった」……市区町村には日々、本当に様々な問い合わせが寄せられてきます。神戸市様にもこういった問い合わせが年間で25,000件以上あり、職員の皆様が事務所で電話対応をしていました。
広報戦略部の係長である藤田様は次のように振り返ります。「もう、電話対応だけでものすごい時間をとられて……。例えば道路であれば、現場に行って状況を見て、修繕をしていくというのが本来の業務です。でも、電話を取って対応するだけで必死っていう、そんな状態でしたね」
電話を取る対象になるものとしては、下記のような窓口がありました。
①道路公園110番……道路の陥没や、街灯の電球切れについての通報
②クリーン110番……不法投棄や野外焼却についての通報
③生活衛生ダイヤル……飲食店や理美容店の許可、ペットの登録、不衛生施設の通報
現場では多くの残業が発生しているなか、「外部コールセンターに業務を委託しよう」という話が持ち上がった神戸市様。しかし、“懸念もあった”と言います。その懸念というのは、『たらい回し』です。
『たらい回し』は、コールセンターでよく顧客から起こりがちな代表的なクレームの1つ。同じ企業に問い合わせをしているのに「こちらの窓口ではありません」「あちらのコールセンターに聞いてください」と、対応を顧客に任せてしまうものです。そうした『たらい回し』を危惧していた神戸市様は、「委託するのであれば、一か所に集約できて、なおかつ業務改善もしてもらえる会社に」という考えがあったようです。
広報担当の三浦様は次のように語ります。「ただ電話を受けるだけでいいのではなくて、『市民サービスを向上していくためにはどうしたらいいか』を考えてもらいたい。だから、きちんと分析ができる業者じゃないといけないですし、“提案”をしてくれるような会社が良かったんです」
そのような視点で公募型プロポーザルが実施され、手を挙げた3社の企業から選定されたのがパーソルビジネスプロセスデザインでした。
取り組み内容
前向きな提案と、自己完結。「この会社やったら、任せて大丈夫や」
窓口の1つである『クリーン110番』は、もともと別のコールセンターで対応していましたが、ちょうど契約も終わるタイミングだったため、公募を機に集約させることになりました。また、4つ目として次のサービスも追加されました。
④アプリ「KOBEぽすと」……神戸市が所管する施設や設備の不具合についての投稿受付
このアプリは、位置情報が容易になったり、市民の皆様と情報を共有できたりするのが特徴です。ただ、内容としては『道路公園110番』という道路の通報を受け付けるダイヤルと内容も重複するため、同じFAQを用いれば『KOBEぽすと』への対応も実施でき、相乗効果が図れると考えたのです。
アプリも加えた「4つの窓口」を受託したパーソルビジネスプロセスデザイン。実は、以前よりテンプスタッフと協働で「行政事務センター」の対応を行ったり、神戸市職員向けの「PCヘルプデスク」も任されたりしていました。そして、そのPCヘルプデスク運用の特徴として「なるべくエスカレーションをしない」という点があったのです。
受託をしたのに、分からないことがあるたびに担当の社員などにエスカレーションをしていては、委託をしていただいた意味がありません。なるべく自分たちで完結できるように動き、どうしても聞かなければならない点だけを確認する。そして、情報をもらったら、次からは自分たちで回答できるようにする。そういった運用を続けていたのです。
そして今回、この『通報一次受付コールセンター』も受託したため、同様の運用を進めていきました。その特徴について、三浦様は次のようにコメントしてくださいました。
「一次受けはもう、完璧にパーソルビジネスプロセスデザインさんがさばいてくれました。分からないことが生じても所管に確認をしたうえでコールセンター側から市民に回答してくれるんです。職員も必要な内容だけを伝えればいいので、すごく楽になりましたね」
一方で、『実は不安もあった』と三浦様は言います。「多分、委託した当初は各所の担当者は『大丈夫かな』って思っていたはずなんですよね、正直。ただ、月次報告会でお話しするうちに、『この会社やったら、任せて大丈夫や』という雰囲気になっていきました」と言います。
月次報告会というと一般的に、過去1ヶ月の状況報告などが行われ、その情報を共有する場と捉えられがちです。しかし、当初から三浦様より「単なる数値の報告はいらないです」と言われていたパーソルビジネスプロセスデザイン。問題があった案件を取りあげ、ひざを突き合わせながら「こうした方がいいんじゃないか」としっかり議論をすることにしており、そのような議論を積み重ねていくなかで、信頼関係を育んでいったのです。
導入の効果
改善を続けて件数を減少。85%以上の職員が、「今後も必要だ」
運用をはじめて2年以上が経過し、三浦様に“効果”を伺ってみると、「いやあ、このコールセンターはすごく良かったなと。直通で入ってくる件数は確実に減っています。」とコメントくださいました。
実際、神戸市様が各事業所に向けてアンケートを取り、パーソルビジネスプロセスデザインが行っているコールセンターについて『今後も必要だと思うか』という質問を投げかけたところ、『必要』と答えた職員は85%以上になっていたと言います。
「コールセンターがあるから楽になったとか、コールセンターに助けてもらっているっていう意識がかなりあることが分かりましたね」と三浦様。具体的にどういった点が助かっているかと伺うと、やはり当初の公募でも仰っていた『改善』の部分だと言います。
「ホームページや様々な通知物の改善提案もすごくやってくれていて、例えば『この案内だと電話が増えてしまいますよ』と提案してくれるのは、すごく助かります。他にも、『こういった仕組みを導入すると、電話をするよりも簡単に問題解決できるんじゃないでしょうか』という提案をいただいたこともあります」
『電話をするよりも簡単に問題解決できる』という提案は、具体的には「チャットボットのカスタマイズ」がありました。既存のチャットボットの中に問い合わせフォームを埋め込み、チャットボットで問題が解決できなかったとしても問い合わせフォームに打ち込めばコールセンターに連携され、コールセンターから回答できるようになる、といった改善提案を実施していたのです。
「そういった、我々が想定してなかった仕組みも色々とご提案いただいてます。それを持ってして市民サービスがどんどん上がっていってるという面からも、『やっぱり委託して良かったな』と感じていますね」と三浦様は仰ってくださいました。
また、一方的に提案を出していくだけでなく、神戸市様からの要望にもいち早く対応していることにも言及いただきました。
「結構、無茶振りをしてしまうんですけど、その無茶振りにすぐ回答してもらってるっていうのは、すごい大きいところなんです。やっぱり何か聞いた時のスピード感が圧倒的に早いですよね」と三浦様が言うと、続けて藤田様も「事実の報告に加えて、ほぼ同時に改善策も出していただいているので、本当にそれはありがたい」と口にされました。
通報受付を外部に委託するという今回のサービスの建付けについては、「多分うちだけですね」と胸を張る神戸市様。通報という形でアプリを展開する市区町村は他にもあるようですが、その内容を結局は職員が対応しているのが実際だといいます。通報を受け、それをさばいていくコールセンターまで丸ごと委託している成功例は、これまで見かけたことがないようで、「この作業が本当に助かるんですよ」と藤田様も笑みを見せました。
今後についても「様々なソリューションを提案いただきながら、市民サービスを向上し続けていきたいですね」と三浦様は希望を口にされました。
お客様プロフィール
神戸市役所
神戸は、海と山の迫る東西に細長い市街地を持ち、扇状の入り江部に発展した理想的な港湾・神戸港を有する日本を代表する港町です。大正から戦後までの高度経済成長期にかけて、東京市・横浜市・名古屋市・大阪市・京都市と共に『六大都市』の一角でした。そして開港以来、舶来品や西洋文化の流入する『日本の玄関口』となり、今なお旧居留地や北野異人館街などの西洋風の街並みに、その歴史や影響を見ることができます。「観光地」としても、その街並みだけでなく、神戸ハーバーランドや有馬温泉など、多くの場所が挙げられます。また、その都市としての美しさは、ユネスコの『デザイン都市』にも認定されるほどです。
本社所在地 | 兵庫県神戸市中央区加納町6丁目5−1 |
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設立 | 1889年(明治22年)4月1日 |
代表者 | 久元 喜造 市長 |
従業員数 | 20,801名(2021年4月1日時点) |
担当者コメント
神戸市様の通報一次受付コールセンター業務については、神戸市様が課題とされていた「市民サービス向上」「職員様の業務負荷軽減」という相反するミッション、パーソルビジネスプロセスデザインが得意とする「運用からの課題洗い出し」「改善施策の提案と推進」が見事にマッチして、成功に繋がっている事例と考えております。神戸市様から「こうしたい」「こういうことはできないか?」というご相談を多くいただくことで、パーソルビジネスプロセスデザイン側も「ではこういうプランはどうでしょうか?」「最近はこういう機能も効果を発揮していますよ」という次の提案につなげやすい環境、ともに運用をより良く改善させていただくという関係性が積み上げられており、これが更なる運用改善につながる「プラススパイラル」になっていると強く感じております。
通報系の窓口についてはスピード感が求められるケースもあり、総じて職員様の負荷が大きくなる傾向にありますが、「職員様がやらなくてもよい部分はパーソルビジネスプロセスデザイン」にて運用することで、職員様の負荷軽減だけでなく「問合せ窓口の集約化=連絡先を迷わない」など、市民サービス向上にもつながりますので、今後も運用改善に注力するとともに、より多種多様な分野の窓口集約なども、実現を目指していきたいと考えております。
※掲載内容は取材当時の情報です。