ノウハウが積みあがらず、“休めない”プレッシャーが増大
※本記事の内容、お客さまの役職、当社社員の役職および旧社名は、取材時の情報に基づいています。
福澤諭吉が江戸に開いた『蘭学塾』を起源とする、慶應義塾大学様。現在は小学校から大学・大学院までを擁する、日本で最も長い歴史を持つ総合学塾として幾多の人材を輩出しています。
歴史と伝統が刻まれた「三田キャンパス」や、7学部3研究科の学生が通う「日吉キャンパス」、最先端技術と自然が共存する「湘南藤沢キャンパス(SFC)」など、いくつものキャンパスを有し、学生数は2万8千名(学部生のみ)を超えています。
その慶應義塾大学様では、奨学金の申請に対応する職員が疲弊していました。そもそも学生も初めて申請する場合がほとんどのため、必要な書類をしっかりと揃えられるわけではありません。不備がある場合には、あとで気づいたものに関してメールや電話で個別に連絡していたのです。
三田キャンパスで年間100人ほどの学部生に対応していた山口様は、その状況を次のように説明します。「日中は日本学生支援機構以外の通常業務もやっていますので、出された書類についてダブルチェックをするということは、結局窓口が閉まってから行うことが多くなります。ですから、基本的には“残業の時間帯から業務がスタートする”といった部分がありましたね。職員の残業時間も膨れあがっていて、肉体的に大きな負担になっていました」
慶應義塾
大学学生部 福利厚生支援
課長
山口 徹 様
高等教育の修学支援新制度に採用された学生への授業料減免にともなう返金の対応もしていたため、「減免額分を早く返金しなければならない」にもかかわらず処理がスケジュールどおりに進められないことがあり、「保証人にご迷惑を掛けてしまうこともあった」と山口様は俯きながら口にされました。
そのため、その時期は短期の派遣スタッフ1名に来てもらい、3名体制で業務を行っていたといいます。しかし、短期の派遣スタッフをお願いするだけでは問題があったようで、池畠様は次のように説明くださいました。
「毎年、同じスタッフの方に来てもらえればノウハウも積みあがっていくんですけど、そういう訳にもいかず……。そうすると奨学金の業務をイチから説明しないといけません。奨学金の業務はどうしても専門的な知識が必要であったり、学生によって提出してもらう書類も異なったりします。ですけど、その辺りを短期間で的確に判断してもらえるようになるのは難しく、受付もスムーズにはいかなかったんです」
慶應義塾大学
経理部
池畠 紗彩 様
奨学金の申請受付は、“受付”と言っても単に書類を受け取ればいいというわけではない難しさがあったのです。もちろんマニュアルは用意されていたと言いますが、現実的にマニュアルだけを見てすぐに対応できるかというと難しく、職員の皆様も対応に追われてしまったようです。
「4月には1ヶ月間ずっと受付をしている感じで、その間は『これは、休んでしまったら終わりだな』というプレッシャーが正直ありましたね」と池畠様は、当時を振り返りながら苦々しい顔をされました。
非効率な業務と難しい対応に追われ、ストレスが掛かる状況
一方で、日吉キャンパスでも奨学金の申請については同じような問題を抱えていました。
慶應義塾大学様の日吉キャンパスは、最も新入生が多いキャンパスです。そのため、「日本学生支援機構の奨学金を初めて利用する」という申込者が最も多いキャンパスでもありました。
日吉キャンパスでの申込者数は、1年間で延べ500~600人。昼休みともなると、窓口には学生が溢れかえってしまう状況になっていたようです。窓口を担当していた双石様は、その対応に追われていました。「事務室には他の部署もありますので、職員から『学生がここに留まらないようにしてほしい』という要望もありました。それで、日本学生支援機構の奨学金については、別の場所を設けて受付を行う形にしたんです」
慶應義塾大学
日吉学生部
主任
双石 哲人 様
しかし、別の場所を設けることで一次的な混雑緩和にはなったものの、場所が離れたことで事務室と行ったり来たりすることになり不便を感じることも多かったようです。また、その他の対応として三田キャンパスと同様、「集中する時期に、増員して対応する」ということも行っていたと双石様は語ります。
「決まった期間に一気に来る書類を確認しなければいけませんので、特定の時期だけ厳しい状況でした。それで、普段は日本学生支援機構奨学金業務については2名の職員でやっていましたけども、その時期だけ応援として3名の派遣スタッフにも来てもらっていました」
受付の場所を増やし、対応できる人も増やして対応していた日吉キャンパスの奨学金業務。しかし、苦労があったのはそれだけではなかったようで、双石様は眉をひそめながら続けます。
「窓口対応に追われていただけでなく、電話もたくさんかかって来るわけです。しかも、お金に関する話ですし、逼迫された状況の方もいて対応が難しくて……。それがストレスになってしまう職員も多くいましたね」
なんと、肉体的にも精神的にも負荷がかかり、体調を悪くしてしまって休暇を取らざるをえない職員の方も出てきてしまったようです。そして、その状況は他のキャンパスにも伝わっていくことになりました。当時三田キャンパスにいた加来様は次のように言います。
「双石だけでなく、奨学金を担当する何人かの職員は、結構イライラしていましたね。キャンパスが違うので直接は接していないんですけど、電話で話したりしているとそれが伝わってくるわけです。彼らの健康状態が気になりましたし、奨学金の業務に支障が出ていないかどうかも離れていながら心配なところではありました」
慶應義塾大学
湘南藤沢事務室
学事担当
課長
加来 信人 様
三田キャンパスから試し、成果を確認。そして全キャンパスへ
そんな苦難に直面していた慶應義塾大学様ですが、実は以前よりパーソルテンプスタッフとは懇談の機会がありました。実際に会話をしていた加来様は次のように振り返ります。
「他の大学さんが『日本学生支援機構の奨学金業務を外部に委託している』というのは知っていました。そして、その業務委託の多くをパーソルテンプスタッフさんが大学構内にてスタッフ常駐の形で請け負っているということも耳にしていたんです。営業の方ともよく話をしていて『慶應さんもどうですか?』とは言われていたんですよね」
しかし、慶應義塾大学様にはひとつ悩みがありました。それは、「キャンパスの多さ」です。
「職員が分散していますし、それぞれ扱う学生数も違います。スタッフ常駐という形の委託は、スタッフ人数が多くなってしまうことでコストが大きくかかってしまうんじゃないか」と加来様も不安を口にされました。
そこで、パーソルテンプスタッフの営業は「費用対効果の面で不安があるようでしたら、一部のキャンパスだけでも業務委託を試していただければ」という話を雑談の中でしていたのですが、同時に、スタッフ常駐という形ではない業務委託の方法(オフサイト形式)について、双方で意見交換をしながらその可能性を模索していたのです。
一方で、日本学生支援機構の奨学金業務は徐々に制度が変わっていく側面もありました。毎年のように少しずつ制度が変わる部分に苦慮しながらもなんとか対応していましたが、加来様は「さらに新しい制度がはじまる」という話を耳にしたといいます。
「それまで人海戦術で何とかやっていましたが、『新しい制度が始まる』という情報を耳にしました。その時に『いよいよまずいな』と思ったんですよね」
そんななか、パーソルテンプスタッフから「以前から雑談で話していたことを具体化してみませんか?」と提案し、まずは三田キャンパスで1年間、オフサイト形式の業務委託の体制を稼働させてみることになったのです。
1年間、三田キャンパスで試しに業務委託をしてみた結果について加来様はこう語ります。「現場の感触としても効率が非常に良くなりました。ですから、他のキャンパスにも展開していこうということになったんです」
そして2022年より、全キャンパスに対応していくことになりました。パーソルテンプスタッフとしても、システムでの対応範囲を変えて全面対応することになり、受け持つ範囲も広くなったのです。対応については、“お試し期間”から引き続き、代々木にある拠点でオフサイトにて業務を進めていきました。
システムを導入したことで、学生が直接登録をするようになり、さまざまなデータと自動で紐づいてデータベースが構築されるようになりました。また、システムから申請書類の画像をアップロードしていただくことにより、不備があっても事前にオンライン上で指摘ができるようになったのです。それにより、差し戻しの手間や郵送費の負担を大幅に減らすことができるようになりました。
さらに、システムは8時から25時まで使えますので、昼休みに受付が溢れかえるということもなくなりました。学生自身の手が空いたタイミングであったり、親御さんなどと相談しながらだったり、好きなタイミングで申請を出していただくことができるようにもなったのです。
9割の業務を削減。ストレスからの解放。「本来の業務」に専念。
日本学生支援機構の奨学金業務を全面的にパーソルテンプスタッフへ委託した慶應義塾大学様。各キャンパスの現場での業務はどのように変わったのでしょうか。
まずは三田キャンパスの山口様から聞いてみました。
「“お試し”での稼働も含め、結果的にはかなり時間に余裕ができてきました。高等教育の修学支援新制度で授業料減免にともなう返金処理にもしっかりと時間を割けるようになりましたね。当初の計画に沿った期日に返せるようになって、保証人の方にご迷惑をお掛けすることもなくなりました」
続いて池畠様にお話しを伺うと、次のように回答いただきました。
「パーソルテンプスタッフさんにお願いしたことで、プレッシャーもなくなってストレスはだいぶ減りましたね。特にコロナ以降、国もさまざまな支援制度を設けるなど突発的な業務が増えました。でも、ルーティン業務を外部にお渡ししていたことで、そういった突発的な業務にも柔軟に対応できるようになりました」
さらに池畠様は「以前から『学生にもう少し寄り添った支援ができれば』と思っていたんですが、時間的にも精神的にも余裕が出てきたので、そういった動きもできるようになってきました」と、外部に委託することの効果を実感いただけたようです。
そして、日吉キャンパスの双石様に変化を聞いてみると、次のように回答いただきました。
「申請受付に関する部分や、来ていただく派遣スタッフの教育準備など、そういったものが丸ごとなくなりましたので、だいぶ効率化されましたね。今までやっていたものの9割くらいがなくなりましたから」
さらに双石様は、声を弾ませながらこう続けます。
「残業もだいぶ減りましたね。あと、以前はどうしてもイライラすることがありましたが、今は本当に天国と地獄ほど違います。毎日、心穏やかに過ごせていますよ(笑)」
そんな双石様の様子を三田キャンパスから窺っていた加来様は、業務委託の導入後の変化についてこう語ります。「全キャンパスで繁忙期対応の短期の派遣スタッフの人数は5名減らしました。職員は以前に比べ、『本来のやるべき業務に専念できるようになった』という感じですね。次々実施される新しい制度に対応しなければならないこともあり残業時間は今でもそれなりに生じてはいます。ですが、業務委託を導入しなかったら申請業務の分だけ時間は純増していたわけで、委託していなかった時のことを考えると恐怖でしかないですよね」
三田キャンパスから業務委託を試し、全キャンパスへと展開していった慶應義塾大学様。
今後の展望について加来様は「委託することで大学職員のスキルが低下してしまい、逆に、現場で必要とされる『学生に寄り添う支援』というサービスの質が低下しないように、大学側でも努力しないといけないですね。そのためのノウハウも、パーソルテンプスタッフさんと大学側で共有していけるとありがたいですね」と前向きな課題を口にしてくださいました。
担当者コメント
パーソルテンプスタッフ株式会社
第二BPO事業本部 東日本第二公共サービス部 第二公共運用三課
マネージャー
大久保 健
奨学金業務オフサイトセンター、2022年4月から運用開始となりました。ベースづくりへご協力いただいた慶應義塾大学様、誠にありがとうございました。オンサイトでの運用を行っている多数の奨学金業務ノウハウも活用しながら、大学様・学生の皆さんへさらに貢献できるサービス構築を進めてまいります。
パーソルテンプスタッフ株式会社
東日本第二公共サービス部 第二公共運用三課
プロジェクトマネージャー
日浦 淳子
お仕事では正しい精査をしながら納期を守ることを大切にしています。また学生さんとオンラインで直接会話する機会も少なくありません。会話の際は学生さんのお話に耳を傾けるだけでなく、『さまざまな選択肢』を示せるように心掛けています。奨学金を必要とする学生さんが学業を継続できるよう、今後もサポートに努めてまいります。
パーソルテンプスタッフのBPOは、今後も皆さまの業務改善や生産性UPをサポートしてまいります。お困りごとやご相談があれば、お気軽に電話やフォームからご連絡くださいませ。