「企業誘致」「移住施策」の更なる推進へ“ワーケーション”に着手。延べ1,100名の方が訪れ、満足度は95%に!

日向市役所

業種
官公庁
導入部署・部門
商工観光部

課題・背景

宮崎県の北東部に位置する日向市は、多くの地域が取り組むように「企業誘致」や「移住施策」を進めてきましたが、課題を抱えていました。日向市に関心をお持ちの方の移住や企業誘致が順調に進む一方で、日向市を知らない方に向けた効果的な情報発信の方法を模索していたのです。そこで、パーソルビジネスプロセスデザインから提案を受けたのを機に、3年がかりでワーケーションに着手していきました。その結果、およそ80社・延べ1,100名の方に足を運んでもらえることになり、日向市の知名度も向上。「また来たい」と答えた人が90%に上るなど、多くの人に満足いただく結果になったのでした。

Before

・日向市に足を運ぶ「関係人口」を増やしていきたい
・通過点ではなく、日向市に足を止めて魅力を知ってもらいたい
・展示会に出展するだけでは企業誘致も難しい

After

・80社、延べ1,100名の方に足を運んでもらえることに
・満足度も高く、「また来たい」と答えた人は90%
・県外の企業がシェアオフィスに登記をする、という事例も出てきた

目次

    導入前の課題

    「企業誘致」「移住施策」「観光」に共通する課題も多い

    宮崎県の北東部に位置する日向市は、『日向灘』に面しており日照時間は日本でトップクラスの自治体です。その日向市では、全国の地方に共通する「人口の緩やかな減少」という課題がありました。そこで、以前より「移住施策」として『サーフィンによるまちづくり』に取り組んできたといいます。

    ただ、日向市を知らない全国の人達にいきなり「うちに移住をしてくれませんか?」と言っても難しいのではないかと感じていたようで、日向市の商工観光部に所属する新玉様は次のように語ってくださいました。

    「総務省が示す『交流人口』と『定住人口』の考え方の中で、多くの地方自治体が一足飛びで『定住人口』を求めてしまっているのではないかと感じる部分がありました」

    新玉 様①
    日向市 商工観光部
    商工港湾課 係長
    新玉 様

    しかし、実際には「そんなに簡単なものじゃないだろう」と感じた新玉様は、「もっとステップを踏んで積み上げていくような施策をしなければ」という考えに至ったようです。

    『交流人口』と『定住人口』のちょうど中間に位置づけられるのが『関係人口』です。その『関係人口』を増やすためにも、まずは入り口として“ワーケーション”に取り組むと良いのでは、と考えていったのです。

    また、「企業誘致」についても都市部で開催される『企業立地フェア』などの展示会に出展していたようですが、そういったイベントでも課題を感じていたようです。新玉様は、出展後の心情をこう語ります。

    「大勢が集まる場所にいきなり行って、ブースで『日向市、いかがですか?』とPRをしても、名前も知らない自治体にいきなり進出しようとは思わないはずです。ですから、まずはライトな形で実際に足を運んでもらって、『ここ、いいね』と感じてもらう必要があると考えました」

    さらに、日向市の「観光」としても課題があったようです。景勝地はいくつかあるものの、長期滞在よりも「少しだけ観光して次の目的地へ」という印象が強かったのです。新玉様は続けて言います。

    「空港から宮崎市に入って、ドライブがてら日向に来て海沿いを見て帰る、とか。熊本から高千穂へ行くために宮崎に来て、少しだけ足を延ばして日向を見て帰る、とか。そういった『通過点』のような側面があったんです」

    そうした中で、少しでも日向に滞在してもらう、という観点からも「ワーケーションで実際に滞在してもらって、観光もしてもらう」といった課題解決のアプローチがあるのではないか、と考えていたようです。

    時を同じくして、パーソルビジネスプロセスデザインの社内で事業が立ち上がろうとしていました。それは、『時間と場所を自由に選択できるはたらきかたの実現』を目指して、全国にワーケーションオフィスを展開していく事業でした。

    そして、「趣味や遊びを満喫したいから、生きる場所やはたらく場所をより自由に選びたい」と考える人をターゲットにして、拠点選びをしていたのです。

    パーソルビジネスプロセスデザインは以前より宮崎県に拠点を構えていることもあり、「海岸沿いのオフィスでサーフィンをしながら仕事ができる場所」という観点から、日向市にアプローチしようと考えていきました。

    そうして2019年5月、初めて日向市にお邪魔し、ディスカッションをさせていただいたのです。そこで「ワーケーション」の事業が日向市様の抱えている課題にもマッチしていることを確認させていただきました。

    取り組み内容

    3年がかりで「ワーケーション」を実装し、徐々に変化が

    日向市様で最終的に予算化されたのは、2020年の6月。そう、既にコロナ禍が始まっていたタイミングでした。コロナ禍は、いみじくもワーケーションのスタートとしては追い風になっており、2020年の7月に当時の官房長官だった菅義偉氏が、まさに『ワーケーション』というキーワードを口にしていたのです。

    それまでは、和歌山県や長野県など一部の地域だけで「ワーケーション」は進められていました。ただ、この時期を境に国の予算も増え、その後、全国的に広がりを見せることとなりました。日向市の動き出しは、それらの動きに少しだけ先行する形でスタートしたのでした。

    しかし、新玉様は不安を抱えていました。当時のことを次のように振り返ります。「スタートしたものの、『こんな田舎にニーズはあるのかな……』という不安を感じつつ動き出していった、というのが正直なところでした」

    そこで、初年度からいきなりハードを整備していくような流れではなく、都市部から離れた環境で仕事をしたいと思うニーズがあるのかを測るため「まずは実証実験をやってみよう」ということになりました。具体的には、「パーソルビジネスプロセスデザイン」とエンジニアの派遣に特化した「パーソルテクノロジースタッフ(現:パーソルクロステクノロジー)」の2社による実証実験です。

    フルリモートワークの勤務形態がワーケーション構想とマッチすることもあり、「パーソルテクノロジースタッフ」に登録している派遣エンジニアに向けて、「モニタリング調査の一環として、日向市でワーケーション体験をしてみませんか」と募集をしました。そうしたところ、12名の枠に対して応募が100件以上も来る反響を呼んだのです。

    厳正なる選考を行ったうえで12名の方に実際に体験していただき、地元の方との懇親会なども開催し、最後にアンケートを実施しました。その結果は非常に好評で、新玉様は目を丸くしながら次のように言いました。

    「まず、反響の大きさには率直に驚きました。それに、アンケートの中で『日向の人がとても良かった』というコメントをたくさんいただいて、手ごたえを感じましたね」

    実際、次の2年目には予算が大幅に増額となるなど、日向市様の内部的にも期待が強まっていたようでした。また、全国的に見て“先行事例”ということもあり、メディアで取り上げられることも多く、「広告宣伝」の効果としても計り知れないほどだったと言います。

    そして実際の2年目には、1年目よりも長期の実証実験をやっていくことになりました。新玉様は、こう振り返ります。「ワーケーションをより深いものにしていくために、行政としても色んな部分をバージョンアップするための施策を考えていったのが2年目でしたね」

    パーソルビジネスプロセスデザインとしても2年目にサービスの拡充を図っていきましたが、コロナ禍が今度は向かい風となってしまいました。相次ぐ「緊急事態宣言」により外出が自粛され、苦戦を強いられる1年となってしまったのです。

    そして3年目について、新玉様は次のように語ります。「3年目からは、単なるブームとしてのワーケーションで終わらせず、『はたらき方』というところまで昇華した、“ひとつ先に進んだ形”を目指したいなと考えていました」

    実際、地元の人たちもパーソルビジネスプロセスデザインとのコミュニケーションが深くなっており、3年目はそういった地元の方々にも「“自分事”としてワーケーションに携わってもらおう」というのが、日向市様としてのテーマになっていたようです。

    導入の効果

    80社、述べ1,100名に足を運んでいただき、満足度も95%を達成

    もともと、日向市様との委託・受託の関係は3年で終わることになっていたパーソルビジネスプロセスデザインのワーケーション事業。4年目以降も、自分達で日向市に根付いた事業を確立させることを目標としていました。具体的には「サービスとしての実績を残し、次の期につなげよう」と考えていたのです。

    そして、実際に3年間での参加者の実績を集計すると、延べ1,100名に上りました。2021年度は240名でしたが、2022年度には約3倍の727名となったのです。企業数として数えてみても、1年間で41社の企業にお越しいただくことになりました。

    これは、モニターツアーも含む結果ではありますが、ビジネスとして見た場合でも、8社の企業に「費用を出して日向市に来ていただいた」ということになり、大きな前進となったのです。

    新玉 様②

    また、来ていただいた方へのアンケート結果を集計してみても満足度は95%に上り、「また来たいと思いますか?」という質問には「はい」が90%という数字になりました。観光の場合には「次は別の場所へ行ってみよう」となりがちですが、ワーケーション事業であるため「再訪していただけるかどうか」を重要ポイントとして考えていたのです。

    これらの数字に関しては、新玉様も満足気に語ってくださいました。「ワーケーションという切り口で純粋にゼロから増えた数なので、3年間で延べ1,100人の参加者があったというのは、すごいことですよね」

    また、宮崎県日向市として“知名度が向上している”点も肌で感じることが多かったようです。「ワーケーションに関するイベントに登壇をする機会も増えたのですが、『宮崎県日向市です』と言った時点で分かってもらえるんです。以前なら、“日向市”の読み方すら分からない方も多かったんですけどね」

    さらに、総務省が主催する『ワーケーション・コレクティブインパクト』という地域課題解決型アイデアソンでは全国から6地域が選出されたようですが、他の5地域は「都道府県」だったにも関わらず、唯一、市区町村として「日向市」が選ばれたと言います。

    ※「アイデア」と「マラソン」を組み合わせた造語。主な目的は新しいアイデアによるイノベーションの創出です。

    一方、「企業誘致」については、「成果はまだまだこれからですが、すでにシェアオフィスに登記をするという事例も出てきているので、形になりつつある感じです」と新玉様は前向きなコメントをしてくださいました。

    プロモーションの動画を作ろうとすると市長自らが率先して出演してくださるとか、1年目には戸惑っていた地元の事業者様が「こういうのを体験してもらったら喜んでもらえるのでは」とアイデアを出してくださるなど、多くの人の意識が変わっていくことも実感されたようです。

    また、「日向市と言えば、パーソルさんと一緒に……」というように、周囲からの認知も高まっているようで、パーソルビジネスプロセスデザインとともに進めてきたメリットについても新玉様は語ってくださいました。

    「座組みとしてはパーソルの皆さんが『仕事』という点に重きを置いたうえで、そこにエッセンスとして交流などの『デザイン』を上手に織り交ぜてくださいました。それによって『パーソル×日向市』という認知が進んでいる、というのはすごく感じられるようになりましたね」

    そして2023年3月、パーソルビジネスプロセスデザインは宮崎県日向市様とワーケーション共創に向けた包括連携協定を締結しました。ワーケーションを通じた“共創”の取り組み推進としては日本初となります。

    今後について新玉様は、「今回は節目として『包括連携協定』というひとつの形にさせていただきましたが、この関係性はこれからも続いていくんだろうと思いますし、今後もますます地方創生のために活躍いただきたいと思っています」と語ってくださいました。

    お客様プロフィール

    日向市役所

    日向市(ひゅうがし)は、宮崎県の北東部に位置しており、温暖な気候と美しい山々、黒潮踊る太平洋など、雄大な自然が感じられる市です。日向灘に面していて温暖な気候であり、日照時間は全国トップクラス。細島港という天然の良港に恵まれ、古くから宮崎県のゲートウェイとしての役割も担っています。豊かな自然を活かした様々なレジャーを楽しむことができますが、なかでもマリンスポーツ、とりわけサーフィンは県外からも多くの方が季節を問わず訪れて楽しんでいます。

    日向市役所様ロゴ

    担当者コメント

    日向市のワーケーション事業に携わって約3年間、新玉様をはじめ日向市の皆さまのお力添えもあり、ゴールできたと思っております。今後も、ワーケーションによって「はたらく場所を自由に選択できる」だけでなく、「共創によって新しい価値を生み出す」取り組みを進めてまいります。そうして、日本全国からみても先進的な成功事例にしていきたいと考えております。

    長野和洋
    パーソルビジネスプロセスデザイン株式会社
    人事ソリューション本部
    ヘルスケア企画部 部長
    長野和洋
    (日向市ワーケーション共創アドバイザー)

    ※掲載内容は取材当時の情報です。

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