導入前の課題
年間400万件の問い合わせ対応。全員の応対品質を十分にサポートしきれない。
引っ越しをする際に、ガスの閉栓や開栓を依頼したことは誰しも経験があるのではないでしょうか。そういった問い合わせを受け付けるのが、東京ガスカスタマーサポート株式会社様のお客さまセンターです。
問い合わせ内容について、育成・品質グループの綾香様は次のように説明してくださいました。「私たちは、平たく言えば『東京ガスのお客さまセンター』です。エネルギーの自由化に伴ってガスだけでなく電気も扱いますし、非常に幅広いお問い合わせに対応しております」
センターの特徴としてお客様の属性は多岐にわたっており、年齢層・性別・家族構成・国籍・個人/法人などを問わず、大変多種多様な属性のお客様から電話が入ってくるような状況なのだと言います。
問い合わせ数の変化については、同じく育成・品質グループの古田様が次のように説明してくださいました。「昨年は年間で400万件を超えるお電話をいただきました。各種手続きのWeb化を進めているので入電は減りつつありますが、受付チャネルが拡充されていることもあって、全体のお問い合わせ数としては増えています」
入電数が年間で400万件を超えるような状況にあって、東京ガスカスタマーサポート株式会社の皆様が感じている課題としては大きく次の2つがあったようです。
- 元々業務範囲が広くて深いうえに、エネルギー自由化・ビジネス拡大に伴い東京ガスの新しい施策も急速に増えていくため、コミュニケーターは業務知識を追うことに精一杯で“応対品質向上”にまでなかなか注力できない
- 育成・品質グループは、全センターの品質管理を担う部署として、会社が目指す「お客さまに寄り添い、満足を感じていただける応対の実現」がミッションだが、コミュニケーター数が非常に多く、年間でコール1本しか評価・フィードバックを実施できない
特に、年間でコール1本のフィードバックとなると、コミュニケーターがその内容を意識して維持していくのも非常に難しくなり、なかなか効果に結びつきにくかったようです。育成・品質グループのグループマネージャーである田中様は次のように語ります。
「ブース数が1,300以上あり、入電数は季節によっても変動があるんです。引っ越しシーズンなどは短期の方を採用して研修をし、受付できるようにしています。そのような人員の変動も含めて、どのように品質を安定させていくかというのも課題でした」
続けて綾香様も次のように語られました。「私たちが品質基準をしっかり理解していても、それを全てのSVが同じレベルで理解できるよう支援しきれているわけではありませんでした。『評価結果の根拠』や『良い通話・課題のある通話の基準』が、どうしても伝えきれていなかったんです」
「ただ点数を上げればよいだけと捉えられたくない」という意図からコミュニケーターに対して評価の点数を開示していなかったこともあり、コミュニケーターからすると「何が良くて、何が悪いのか」が理解しにくい状況になっていたのです。
さらに、「多くのコミュニケーターを受け持つ“SVの負荷”も課題の一つとしてありました」と古田様が口にすると、綾香様も続けて「私達品質担当も、コミュニケーターの応対品質評価業務に追われていました。センターをサポートするための、応対品質に関する施策立案も思うように進められない状況になっていました」と、次々に課題を口にされました。
他にも、SVの経験の差によるフィードバック内容のばらつきや、20年以上のベテランと新人との話し方の違いなど、規模の大きさゆえに課題は山積だったようです。「10ブースくらいであれば品質は揃えやすいかもしれませんが、1,300ブース以上という規模になってくると、全センターの全コミュニケーターに対し、公平にきめ細やかなサポートを行うことは困難で……」と綾香様は表情を曇らせました。
取り組み内容
話を聞いて感動。自動評価のサンプルレポートを見て衝撃。
いくつもの課題を解決することとは別で、受付内容の拡大に伴い、入電を切り分ける『IVR』の導入が進んでいきました。その電話設備のリプレースのタイミングで、「音声認識ができるシステムを入れよう」という話も浮上してきたのです。
綾香様は当時を振り返りながら口にされました。「全社の施策のなかで音声認識システムを検討し、最終的に3社残ったうちの1つがアドバンスト・メディア社の『AmiVoice』でした」
各社の機能について説明を受けながら検討していくなか、アドバンスト・メディア社から「『AmiVoice』には応対品質自動評価機能がありまして、これに先進的に取り組んでいる会社があるんですよ」と紹介されたのがパーソルビジネスプロセスデザインだったと言います。
「ご紹介いただいて訪問しお話を伺ったのですが、その時のことは本当に忘れられません」と綾香様は言います。その理由として、「品質担当として、私達と同じ立場で、同じように考え、同じように感じられてご苦労されたご経験のもとで応対品質自動評価に取り組まれているということがすごく伝わってきて、心の底から共感でき、本当に感動したんです」とのことでした。
その後、システムは正式に『AmiVoice』に決定しましたが、すぐに自動評価導入支援をパーソルビジネスプロセスデザインに依頼したわけではありませんでした。綾香様は次のように言います。
「『AmiVoice』が導入されてすぐ、自動評価の仕組みを古田さんと二人で作ってみようとしたんですけども、試行錯誤した結果、やはり『どうしていいか分からないですね』という結論に至りました。気持ちとしては、“装備なしでエベレストに登る”ような感覚。その時に、パーソルビジネスプロセスデザインの皆様の顔が浮かんだんです」
また、時を同じくして東京ガスカスタマーサポート株式会社様は、HDIが実施する「格付け調査」の対象になり『三ツ星』を獲得したのです。それによりこの頃、社内に「HDI格付け調査で三ツ星を獲得することの意義・重要性」への理解が広がり、「外部審査機関からも良いと評価されるような応対を目指そう」という機運も高まっていったと言います。
「パーソルビジネスプロセスデザインさんがHDIの国際スタンダードに基づいたセンター運用をされている点もこの社内の波にフィットして、『自動評価導入の構築支援をぜひパーソルビジネスプロセスデザインさんにお願いしよう』ということになったんです」と綾香様。
そこで、まずパーソルビジネスプロセスデザインは何本かの自動評価を“サンプル”として実施して、レポートを提出していきました。そのサンプルレポートを見た時の感想について綾香様は次のようにコメントくださいました。
「試しに自動評価をしていただいた時に、私たちがこれまで手動で評価していたものとほぼ同様の結果がハッキリと出たので、『やっぱり自動でも的確に評価できるのか!』と衝撃を受けました」
そうして、「これは本格的に導入していくべきではないか」ということになり、正式にパーソルビジネスプロセスデザインへ構築支援のご依頼をいただくことになったのでした。
導入の効果
評価件数は100倍になり年間900時間の工数削減。センター全体がポジティブに変化。
2021年の2月から、パーソルビジネスプロセスデザインによる初期構築支援がはじまりました。その時の様子を古田様は次のように振り返ります。「本当に基本の『キ』からアドバイスをいただいて、しかもアドバイスもすごく的確で、とにかく勉強になりました」
綾香様も続けてこう言います。「初期構築時から多岐にわたる内容をご提案・ご教示いただきました。加えて、自社センターからの実際の反応や、納得感のあるご経験談も適時教えてくださるんです。私たちは、パーソルビジネスプロセスデザインさんのこうしたきめ細やかで具体的なご支援がなかったら全く上手くいかなかったと思います。パーソルビジネスプロセスデザインの皆様が先人として歩んでくださって本当に助かりました」
綾香様が「先人」と言うとおり、パーソルビジネスプロセスデザインは自社のセンターでも自動評価の運用を行っており、品質管理についても同じように悩みながら克服してきた経緯がありました。また、古くからHDIの“ストラテジックパートナー”であり、HDIの評価基準を熟知しているため的確なノウハウのご提供が可能だったのです。
綾香様は笑顔でこう語ります。「最初は装備なしでエベレストに登るような思いでしたけれど、パーソルビジネスプロセスデザインさんのご支援によって『ロープウェイができた!』ような気持ちに変わりました」
パーソルビジネスプロセスデザインによる初期構築支援を受けて自動評価が導入された後、東京ガスカスタマーサポート様では応対品質のレポート(8コール分の評価結果)が月に1回コミュニケーターに渡されることになりましたが、その様子について綾香様は次のように説明してくださいました。
「これまでは点数も開示していませんでしたし、どこが良い・悪い等も全てを具体的に伝えられていませんでしたけれども、自動評価導入後はレポートが渡るようになり、コミュニケーターにとって大変インパクトがあったようです」
具体的には、レポートに各評価項目の点数が明記されること、AmiVoiceの画面にて該当通話の加点・減点状況を確認できるようになったことで、「何ができて、何ができていないのか」という点が明確になり、各自の目標設定にも繋がったと言います。「全体的に応対品質への意識が向上していると感じます。実際、自動評価導入時からの各チームの変化を見てきていますが、どのチームも総合評点平均値が上がっているんです」と綾香様は声を弾ませました。
また別の成果として、“応対品質評価作業の工数削減”も挙げてくださいました。年度によって対象コミュニケーター数に変動があるものの、年間でおよそ900時間の工数が削減できたと言います。そして、それにより「自動評価導入後は、これまでできていなかった応対品質に関する施策立案等に着手できたことがとても良かった」と笑顔を見せました。
具体的には、「東京ガスの新施策に関するトーク例の検討や各種ツール制作、研修企画等、他業務にも幅広く取り組むことができるようになりました」とのこと。また、SVから応対品質上の課題について「コミュニケーターにどのように指導すればよいか」等の相談も多く寄せられるようになり、全センターで応対品質への関心度が明らかに高まってきていると感じると言います。
さらに「今年度はセンター向けに自動評価を活用した事例共有会も開くことができたんです」と古田様は言います。“事例共有会”とは、各センターのノウハウを共有する会合で、自動評価に関して様々なことが話し合われたようです。
実際に同席されたマネージャーの田中様は「この言葉を使うとこのように自動評価される、という具体的な事例をたくさん聞けて、応対品質の考え方もよく伝わり、大変感動しました。センターの管理者からも質問をしやすい雰囲気ができていましたし、品質担当2名の入念な準備の甲斐があって、センターと品質担当との距離がぐっと縮まる、とても良い事例共有会だったと思います」と嬉しそうに話されました。
綾香様は「この時の事例共有会の資料も、パーソルビジネスプロセスデザインの皆様に事前にご相談し、最終チェックまでしていただきました。本当に至れり尽くせりで助かっています」とお褒め下さり、古田様も「本当に、かゆいところに手が届くという感じですよね」と共感されました。
今後の展望について綾香様は、「引き続き相談をさせていただきながら、自動評価に関わるギャップ分析や定期メンテナンス等を自社で完結できるようにしたいと思っています。また、有人チャットなどを活用したセンターの“オムニチャネル化”や各種研修についても相談に乗っていただきたいな、と思っております」と口にされました。
また、古田様も「現在は、社内で何か課題が出ると、『いったんパーソルビジネスプロセスデザインさんに聞いてみようか』という流れになっています。今後も頼りにしていますので、末永くサポートしていただきたいですね」と期待を寄せてくださいました。
お客様プロフィール
東京ガスカスタマーサポート株式会社
東京ガスグループの一員として、ガス・電気・サービスに関する受付業務から契約・料金業務・マーケティング業務などのバックオフィスを担う東京ガスカスタマーサポート株式会社様。エネルギー自由化の進展による“お客さまのニーズの多様化”など変革の時代の入口に立ちながらも、新たな挑戦に臨み続けています。
本社所在地 | 東京都新宿区西新宿3-7-1 新宿パークタワー |
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設立 | 1995年1月6日 |
代表者 | 代表取締役社長 田中 浩 |
従業員数 | 2,077名(2022年8月1日現在) |
担当者コメント
自動評価導入前は弊社内でも東京ガスカスタマーサポート様と同様の悩みを持っておりました。電話応対の評価を人手で行うことは非常に労力がかかり、品質管理担当者へ大きな負荷がかかります。システム評価が可能な範囲を自動評価することで、人でしかできない評価や業務に注力することができます。今後も様々な企業様に自動モニタリングを導入いただき、自動評価を有効的にご活用いただけるよう初期構築から運用定着まで支援させていただきたいと考えております。
※掲載内容は取材当時の情報です。