『電話応対』も『チャット応対』も自動評価で効率的に品質向上!「その仕組みは内緒にしておきたいほどです」

ソニー銀行株式会社

業種
金融
導入部署・部門
カスタマーサポート企画部

課題・背景

ソニーフィナンシャルグループ傘下にある、“個人のためのインターネット銀行”のソニー銀行様。口座数の急増に伴い問い合わせも増えており、カスタマーサポート企画部の皆様は「品質を維持すること」に懸念を抱いていました。それは電話応対に限らず、これから増加が見込まれるチャット応対についても同様であり、“効率化”も最重要課題でした。そのようななか、プレスリリースをきっかけにパーソルビジネスプロセスデザインを知り、コンサルティングを依頼。電話応対の自動評価に加えてチャット応対の自動評価も実装することができました。

Before

・問い合わせの増加により応対品質管理に懸念
・増加するチャット問い合わせの応対品質評価を実施したいがリソース不足
・一部のチャットに対する応対品質評価の実施

After

・電話もチャットも自動評価が十分に機能
・自動評価の活用により、少ないリソースでも運営が可能
・すべてのチャットに対する定期的な応対品質評価の実施

目次

    導入前の課題

    問い合わせの増加により「効率的な応対品質評価」が求められた

    ソニー銀行様は、ソニーフィナンシャルグループ傘下にある個人のためのインターネット銀行です。実店舗を持たないこともあり、お客さまとの接点は電話とノンボイス(メールやチャット)対応となります。しかし、口座数の増加に伴っていずれのチャネルも問い合わせは増加の一途をたどっていました。

    カスタマーサポート企画部の企画課長である宮澤様は「口座数の増加」について、次のように説明くださいました。

    「ありがたいことに口座数は増えており、2022年度末で約178万件となりました。右肩上がりで増えてきたことと連動し、『ログインができない』『パスワードを忘れてしまった』といったお問い合わせも増加している状況でした」

    問い合わせが増加してくると、対応するコミュニケーターの稼働が増えることになり、同時に新しい人員も増えていきます。それゆえに、業務量や人員増加による「応対品質の低下」を非常に危惧されていました。

    宮澤 様
    ソニー銀行 カスタマーサポート企画部
    企画課長 宮澤 様

    ソニー銀行様の顧客応対は、商品・サービスに応じて複数の部署に分かれており、応対品質をチェックする際には、音声を聴き、書き起こしをし、添削をし、ブレが生じないよう添削者同士で『カリブレーション』と呼ばれる“目線合わせ”も行っていました。加えて、顧客応対部門ごとに評価担当者が各部署で制定した評価軸を利用しての品質管理を行っていました。

    この状況についてカスタマーサポート企画部のマネージャーである樫村様は次のように語ります。「私たちはスピード感に欠けていました。応対品質管理とは評価をすることが目的なのではなくて、振り返っては修正して取り組んで、という『PDCAサイクル』を回すことが重要です。複数の部署の応対内容であっても、自動化をすることで均一化した評価をスピーディに出し、その結果を定期的に電話応対者に還元し、改善を促すことが全社の品質の底上げにつながる。と思っていました。」

    その後、工数の無駄を省くために品質評価部署は統一され、その当時の担当役員からは「全社で評価基準を統一し品質管理に取り組もう」「もっと高みを目指すために効率化していこう」という方針がしめされたといいます。

    「応対品質の低下を危惧していた」というのも、もともと応対品質を高い水準で維持できていたからこそでした。サポートサービス業界の国際機関であるHDI(ヘルプデスク協会)の日本法人『HDI-Japan』が実施する格付け評価でも、昔から“三つ星”を獲得していたのです。

    カスタマーサポート企画部の加藤様は、「以前は普段通りに業務をしていても三つ星を頂戴していましたが、部署が統一されてからは『積極的に評価を取りにいこう』というスタンスに変わりました」と当時の様子を振り返ります。

    “高い品質を維持・向上”しながら、“応対品質評価の効率化”。そして、“HDI-Japanの格付け評価への積極的な取り組み”など、ソニー銀行様の課題は数多くあったのです。

    取り組み内容

    電話応対の自動評価と、有人チャットの自動評価システムを導入

    『効率化』という最重要課題に対して「どうしたら良いのか?」「どのように自動化ができるだろうか……」と悩んでいた樫村様でしたが、ある時に運命的な出会いがありました。

    「何日も何日も模索しながら、インターネットでも“電話応対の自動評価”について調べていました。すると、まさにそのタイミングで『自動評価モデルが開発された』というプレスリリースを見つけたのです。それがパーソルビジネスプロセスデザインのものでした」と樫村様。

    パーソルビジネスプロセスデザインは、2019年にMS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社様と電話応対品質の自動評価モデルを開発し、ちょうどそのリリースを発表したところだったのです。※1

    樫村 様
    ソニー銀行 カスタマーサポート企画部
    マネージャー 樫村 様

    「『既に電話応対品質の自動評価を手掛けている会社がある!』と、すぐに連絡をしました」と樫村様はその日のことを振り返ります。そして、自動化において課題になりそうな部分を既にクリアしている点や、HDI-Japanともつながりが強い点を評価していただき、「ぜひパーソルビジネスプロセスデザインと足並みを揃えて一緒にやっていきたい!」と感じていただけたのだといいます。

    また、加藤様も「HDI-Japanとつながりが強いので多くのノウハウをお持ちですし、そのような会社が自動評価モデルも開発しているとは、本当に運の良い出会いだったと思います」と笑顔を見せます。

    そうして、試しに“PoC”※2から始めてみたのでした。最初の結果を見た際に「是非導入したい!」と心が動いたそうです。

    ※2:PoC=Proof of Concept(概念実証)……新たな取り組みの実現可能性を検証すること

    このようにして、電話応対の自動評価は運用を開始しました。自動評価は予想以上に浸透し、応対品質の効率化を実現しました。しかし、自動評価の安定稼働もつかの間、もう一つの課題が浮き彫りになりました。それがチャット応対の評価です。口座数の増加に伴い、電話での問い合わせだけではなく、チャットの問い合わせも増加していたからです。
    さらに、チャットの問い合わせが増加しているのは業界的にも同様で、HDI-Japanの格付け評価でも「チャットサポートの調査」が入ってくるようになっていたのです。

    「『樫村さん、加藤さん、次はチャットの品質評価の効率化を検討してみては?』と上司から言われました。でも、担当は私たち二人しかおらず、明らかにリソースが足りません。しかも、私たちはチャット応対の経験がまったくなかったので、どうしたら良いのか不安でいっぱいでした」と樫村様は顔を曇らせながらいいます。

    チャットの対応履歴はログとして残るため、「電話と同じように自動評価ができるかもしれない」と考えた樫村様は、すぐにパーソルビジネスプロセスデザインに相談をしました。パーソルビジネスプロセスデザインも当時はチャットの応対品質自動評価の実績がない状態だったため、「できると思います。もしよければ一緒にやってみませんか?」とお返事をしたのでした。

    樫村様は「『できると思います』と回答してもらい、『さすが先駆けの会社だな』と思いました」と振り返ります。その後パーソルビジネスプロセスデザインとソニー銀行様の共同プロジェクトが始まり、有人チャット自動品質評価システム『AQchat』の開発・導入が開始されました。

    導入の効果

    少ない人数でPDCAを回せて、外部機関からも高評価を獲得!

    既に運用を開始していた電話応対の自動評価ですが、当初は少なからず、機械での評価を現場のコミュニケーターがすぐに受け入れてもらえるのか心配だったようです。しかし、その心配は杞憂でした。

    宮澤様はこう解説します。「従来の“人”による応対品質評価では、その評価のロジックや基準がブラックボックス化しがちですが、自動評価は加点・減点の要素を明確にしているため、コミュニケーター側にも挑戦する気持ちが生まれました

    加藤様も続けていいます。「ゲーム感覚といいますか、仕組みを理解して主体的に業務に取り組む人が多かったです」

    一方で、「お客さまへ寄り添う姿勢」といった点は自動評価だけでは評価しにくいものです。そこでソニー銀行様では、お客さまにアンケート形式で『満足度』を問うことで、顧客満足度を図ることを取り入れました。樫村様が次のように説明してくださいました。
    機械による定量評価と、お客さまに直接聞く定性評価の2つでバランス良く運営することが“鍵”なのだと思います」

    加藤 様
    ソニー銀行 カスタマーサポート企画部
    加藤 様

    電話応対における自動評価では、評価の仕組み上、同意語や、活舌・早口によるテキスト化がなされない事象など、一定の誤評価が生じる点が課題でした。しかし、経験や実績のないなかで始めたチャットの自動評価については、このような課題を解消するよう作りこみがされており、驚きを隠せなかったようです。

    我々の業務を理解して、誤評価が起こりやすい部分も分かってくださったうえで構築していただいているので、『AQchat』は評価精度が高くてすごいですね」と樫村様。「今までの経緯を知らず、評価ノウハウがない会社に開発をお願いしていたらこうはならなかったと思います」と目を輝かせて語ってくださいました。

    また以前より行っていた、人による品質評価の取り組みは、工数がかかるため必然的に、不定期かつ限定されたチャットに対する評価となっていました。ところが、自動評価を導入することで、顧客応対者全員へ同一基準による全チャットの応対品質評価を、定期サイクルで行えるようになったのです。

    業務拡大に伴い電話とチャットによる顧客応対の場面も増加しているといいますが、品質管理については依然として、二人体制で行っています。「PDCAサイクルを少ない人数でも回せているのが大きな成果です」と、続けて述べてくださいました。

    さらに、HDI-Japanの格付け調査においては「問合せ窓口」「Webサポートポータル」ともに三つ星を獲得するなど、高い品質を維持することに成功しています。加えて、その他の評価機関からも『第1位』の評価を獲得されました。※3
    ※3:2023年 オリコン顧客満足度®調査 住宅ローン 12度目総合1位(2011年~2021年、2023年)  
    2023年 オリコン顧客満足度®調査 外貨預金 4年連続総合1位(2020年~2023年)

    そんな自動評価に関して、加藤様は「パーソルビジネスプロセスデザインの評価軸はとても信頼ができますね。私が長年現場で培ってきたことを、自動評価が実現してくれたと感じています」と語ってくださいました。

    樫村様も、「人による評価を続けていたら大変でした。今ごろ私は対応しきれず、この業務を続けていられなかったかもしれません。たまたま検索して見つけたのが最大の運。人生のほとんどの運を使ったのだと思います」と冗談交じりに語ります。

    そして宮澤様は、パーソルビジネスプロセスデザインに対して「2019年から始まったお付き合いですが、着実にパートナーとしての絆が深まっていると感じます。今後も一緒に高みを目指していきたいですね」と強い期待を寄せてくださいました。

    最後に樫村様からも、「生成AIを使った取り組みなども、私たちのことを知り尽くしている皆さんだからこそ、先駆けて開発を進めて欲しいです。そして、また一緒に成長していきたいですね」と嬉しい言葉。そして、「お付き合いが長く“同じチーム”という気持ちが強いですが、こうした記事で自動評価の仕組みを公開してしまうと、植草さんがますますお忙しくなるのではないかと心配。実は内緒にしておきたいです」と笑顔を見せました。

    お客様プロフィール

    ソニー銀行株式会社

    ソニー生命保険やソニー損害保険などとともに、「ソニーフィナンシャルグループ」の一員で、2001年に設立されたインターネット銀行です。高度な技術と信頼性を兼ね備え、個人向けに利便性の高いサービスと多様な金融商品を提供しています。日経金融機関ランキングやオリコン顧客満足度®などで何度も1位を獲得している銀行です。
    ※2023年 オリコン顧客満足度®調査 住宅ローン 12度目総合1位(2011年~2021年、2023年)
    ※2023年 オリコン顧客満足度®調査 外貨預金 4年連続総合1位(2020年~2023年)

    ソニー銀行株式会社ロゴ
    本社所在地 東京都千代田区内幸町2丁目1-6 日比谷パークフロント
    設立 2001年4月2日
    代表者 代表取締役社長 南 啓二
    従業員数 592名(2023年3月末時点)

    担当者コメント

    ソニー銀行様はHDIの格付けベンチマークにおいて三つ星獲得の常連企業でした。そのため、当初は「果たして自動評価がマッチするのだろうか?」と心配したこともありましたが、今では電話応対と有人チャット応対の自動評価を余すところなくご活用いただいています。自動評価の落とし穴は「自動評価の結果だけに頼ってはいけない」という点なのですが、ソニー銀行様は「自動評価」と「お客さまの評価」をうまく活用して、顧客応対者に前向きで情熱的なフィードバックを行っていることが本当に素晴らしいと思います。今後も良きビジネスパートナーとして、一緒に先進的な取り組みに挑戦していきたいですね。

    植草 健吾
    パーソルビジネスプロセスデザイン株式会社
    サービスデザイン本部 サービス戦略部
    サービスイノベーション課
    植草 健吾

    ※掲載内容は取材当時の情報です。

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