導入前の課題
期限までにナレッジツールの移行を混乱なく実施したい
SBI新生銀行様は、東京都中央区に本店を置く、SBIホールディングス傘下の普通銀行です。SBI新生銀行グループの個人顧客対応窓口であるコールセンターでは、ある課題を抱えていました。
SBI新生銀行様のコールセンターは東京や福岡を中心に200席前後が稼働しており、電話だけでも一日1200件ほど入電があります。金融商品を数多く扱うため、問い合わせの種類も多岐にわたっていました。
そのため、コールセンターシステムの中にあるナレッジツールには多くのマニュアルやスクリプトを格納しており、それらを活用しながら日々の対応をしていたのです。その状況について、チャンネルサービス部の妙田様は次のように説明くださいました。
「やはり、間違ったことを言ってしまいますと事故にも繋がりますので、やはり、とにかくスクリプトに沿ってお客様に寄り添い、正確なオペレーションをしましょう、ということを徹底していました」
そんななか、コンタクトセンターシステムの刷新に伴ってナレッジツールの移行も余儀なくされました。移行期限も決まっていましたが、それに伴って「この機会に今までのスクリプト中心の運用を脱却しよう」ということになったのです。
「どうせツールを移行するのなら、今のままの運用ができるものを探のではなくて、スクリプトの脱却ができるような仕掛けと一緒に考えようよ、というのがスタートラインでした」
脱却したい背景として、HDI-Japanが実施する『格付け調査』の影響もありました。SBI新生銀行様は長い間“二ツ星”の状態であり、「“三ツ星”を獲得するためには、今のままの運用では厳しい」と考えていたのです。
ただ、ツールの移行には懸念事項がいくつかありました。同じくチャンネルサービス部の矢吹様は次のように言います。「ツールを変えると、見た目だけでなく入り口も変わってしまうので、それだけで電話対応者が混乱してしまい、確認のための保留やエスカレーションが増えます。お客さまをお待たせしてしまうことに加え、運営としてはAHT(Average Handling Time:1コールあたりの平均処理時間)が伸びてしまうことも心配していました」
さらに続けて、『スケジュールの問題』もあったと言います。「ツールの移行期限である3月末までに数千件あるスクリプトを全て移行することができるのか、という不安もありました。少し調べてみたところ、中身をそのまま移行できるツールは無いことが分かってきて、話が頓挫してしまったのです」
取り組み内容
「ナレッジの移行」と、「スクリプトからの脱却」に向けたKCS運用へ
実は、ツール選定が難航しているタイミングで妙田様は中途入社してきており、その状況を見て気に掛けていたと言います。
「私は前職でもコールセンターの業界でしたので、頓挫している状況が気がかりでした。それで『そもそもどんなセンターにしたいんだっけ?』という問いを投げかけたのです」と妙田様。
矢吹様は「妙田さんから問いをもらって、『お客様からの問いに対して、答えを探し出すような運用はやめたい』『FAQを自動で作っていけるような仕組みが欲しい』というように、やりたいことを挙げていきました」
そして、“やりたいこと”をまとめた妙田様は、「こういったことを実現するためには、何かのツールというより『KCS※』のような考え方の軸となるものが必要ではないか」という答えを出します。
※KCSとは、米国NPOサービスイノベーションコンソーシアムが10年以上の年月をかけ、多数の大手IT企業参画のもとに開発されたナレッジマネジメントのベストプラクティスです。
ただ、いきなり運用をKCSに転換するのは混乱を招いてしまうため、『今あるナレッジを全部移行できること』『スクリプトからの脱却を見据えてKCSを活用すること』という2つの要件にまとめて、RFP(提案依頼書)としていくつかの企業に出していくことにしたのです。
コンペに参加する企業の選定を進める中で、派遣の取引先として繋がりのあったパーソルテンプスタッフより紹介され、パーソルビジネスプロセスデザインとも繋がりができていきました。
そうしてRFPに応じたのは、パーソルビジネスプロセスデザインを含め5社でした。プレゼンを通して最終的にパーソルビジネスプロセスデザインが選ばれましたが、その理由として妙田様はこう説明されました。
「多くの企業が“ツールベンダー”だったので、機能としてナレッジの移行については問題なさそうでした。ただ、『KCSでの運用を見据えていく』ということに対しての相談相手としては、パーソルビジネスプロセスデザイン以外に無かったですね。金額的な面も含めて一番でした」
また、信頼度についても次のように話されました。「以前、パーソルビジネスプロセスデザインの宮崎のセンターにお邪魔した際に、音声認識も組み込んだKCS運用をされているのを目の当たりにしました。その時に、ただ口で言うだけでなく『実装されている』からこその信頼度というのがあるなと」
しかし、そうしてパーソルビジネスプロセスデザインに決定したものの、契約手続きなどを行っているうちに『スケジュールの問題』として危惧していた“3月末”まで、残り2ヶ月程度になっていました。
導入の効果
ツールの移行は混乱もなく完了し、KCSでの運用にも着手
定例会での様々なアドバイスを活かし、移行を進めた結果、最も心配されていたAHTの増加といった“生産性の低下”も起きることはありませんでした。
不安視していた「3月末までに数千件あるスクリプトを全て以降することができるのか」という件に関して、矢吹様は結果を次のように振り返ります。
「2ヶ月ぐらいしかなかったですが、数千件あったナレッジは無事に移行することができました。すごいですよね。もう本当に助かりました」
また、『スケジュールの管理』についても「よく見てくださっていました。私たちは自分たちのやることに一生懸命になってしまっていましたが、広い視野でスケジュール管理をお手伝いいただきました」と続けました。
「ツールベンダーじゃなくてパーソルビジネスプロセスデザインを選んで良かった」とも口にしてくださいましたが、その理由については妙田様が次のように付け加えます。
「ツールベンダーだと『こんな機能があります』とか『このマニュアルをご確認ください』となるのですが、パーソルビジネスプロセスデザインの場合は自ら検証したうえで『こうするとできます』とか『別の方法が良いのでは』と教えてくれる。こちらで調べる工数も減りますし、とても価値を感じているところですね」
さらに、パーソルビジネスプロセスデザインに依頼した効果として『進めやすさがある』と妙田様は続けます。
「社員だけでは、なかなか進まない部分がどうしてもあります。KCSがいかに優れていても、それをしっかり伝えて動いてもらわなければなりません。その点、KCSに長けた企業から直接説明してもらうことで、社内の皆の理解を揃えやすいという面もありました」
また、「プロでいらっしゃるパーソルビジネスデザインの皆さんにご支援いただけると、『こういう方向性でいいんだ』という安心感を持ちながら進めていくことができました。それもまた、進めやすい点ですね」とも付け加えてくださいました。
まさに現在の状況は、『KCSの概要』について講義などを通じて関係者に伝えたり、相談に乗ったりするフェーズとなっています。そのため、具体的な数値の効果としてはこれから出てくることでしょう。ただ、内部FAQの閲覧数は右肩上がりに増加していますので、“ナレッジの使いやすさ”についてはコンタクトセンターの皆様にも実感いただいているのだと考えています。
最後に矢吹様は、今後への期待について「ここからFAQの活用や作成を進めて、三ツ星も目指しながらお客様の満足度を上げていきたいです。そして、ブレる部分があれば適宜フォローしていただきつつ、今後もお付き合いいただければと思っています」と笑顔で語ってくださいました。
お客様プロフィール
株式会社SBI新生銀行
日本長期信用銀行を前身とし、2000年6月に新生銀行へと名称を変更。さらに、2021年12月にSBIホールディングスの子会社となったSBI新生銀行様は、銀行とノンバンクの機能を併せ持つハイブリッドな総合金融グループです。グループが持つ金融機能を組み合わせて、従来の金融サービスでは満たされない顧客ニーズに対応する商品・サービスの提供を行っていらっしゃいます。
本社所在地 | 東京都中央区日本橋室町二丁目4番3号 日本橋室町野村ビル |
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設立 | 1952年(昭和27年)12月 |
代表者 | 代表取締役社長 川島 克哉 |
従業員数 | 単体:2,288人/連結:5,650人(2024年3 月現在) |