導入前の課題
問い合わせへの『未回答』が600件に膨れあがり、休日出勤でも足りず
富士フイルムサービスクリエイティブ様は、もともと前身の「富士ゼロックス」時代からエリア別に拠点がありました。そこでは担当者が1人で問い合わせも受け、契約書も作り、請求書の処理もする、というように何役もこなしていたといいます。その当時は生産性、業務量のバラツキなどが課題でした。そこで、問い合わせや事務処理を完全に分けた「機能別の組織」へと変わっていったのです。
しかし、機能別の組織になっても課題は残りました。機能を分けたとはいえ、問合せ対応を専門でやってきたわけでは無かったため、『環境』が整っていなかったのです。「個人のスキルや頭の中、それに虎の巻みたいなものを必死で参照しながら回答していましたけど、限界があって……。回答品質、回答時間、回答のバラつきが課題だと感じていました」と青木様は当時のことを振り返ります。
高瀬様も続けて振り返ります。「もともとエリア別の組織だったこともあって、東京支社や福岡支社などに、それぞれのお作法があったんです。それが、組織の変更で『福岡の担当者が東京からの問い合わせも受ける』といったことになりました。でも、地域ごとの特性やお作法が見える化されていなかったので、どうしても対応に時間が掛かってしまって……」
各々が持っていた「虎の巻」のようなものが点在しており、探しに行くのに時間が掛かる状況。効率も非常に悪く、業務量も膨れあがっていきました。回答が遅れていることに対して問い合わせが来てしまい、その対応に追われて本来の回答がさらに遅れる――。そういった負のスパイラルにも陥ってしまったのです。
「多い時には未回答の問い合わせが600件までに膨れあがりました。休日出勤をして対応しましたけど、それでも最大で5日も遅れている案件まで出てきてしまって……」青木様は苦悶の表情を浮かべながら続けます。「我々だけじゃ休日出勤でも足りず、ほかの部署にも応援を頼みました。それでもまだ残っていたんです」
取り組み内容
パーソルビジネスプロセスデザインのサポートを受けながら『KCS』を導入
そんな苦しい状況が続くなか、社内のカストマーコンタクト部が「問い合わせを削減するために『KCS※』という取り組みをしている」と耳にしました。「実績もあるから、事務サービス部も取り組んだらどうか」といわれ、まずは情報交換をすることに。その情報交換会に参加していたのがパーソルビジネスプロセスデザインでした。
「話を聴いて、『こんなものがあるのか』『ぜひやってみたい』って思いました」と青木様は声を弾ませます。そこからすぐ「導入しよう」ということになり、経営層からもGOが出て、2020年7月から進めていくことになったのです。
情報交換会に参加していたパーソルビジネスプロセスデザインが担当者に対し、『KCSファウンデーション』の研修を実施。そこから12月ぐらいまで、富士フイルムサービスクリエイティブ様は「委員会」を立ち上げるなど準備を進めていきました。
そして12月からは、CADグループという組織で運用を開始するなど順調に進んでいきます。しかし、当初は現場も半信半疑だったようです。「KCSの考え方のなかには初めて聞く言葉も多いので『これ、なんだろうね……』『本当に上手くいくのかな?』という感じでした」と青木様。
また、「問い合わせ件数をまず5%減らそう」という目標を掲げてKCSを導入したものの、なかなか結果が出てこない時期が長く続きました。「色々悩みながらの時期ではあったんですけど、そもそもナレッジの存在を知らない営業が多い、ってことが分かったんです」と高瀬様はいいます。
また、「問い合わせ件数をまず5%減らそう」という目標を掲げてKCSを導入したものの、なかなか結果が出てこない時期が長く続きました。「色々悩みながらの時期ではあったんですけど、そもそもナレッジの存在を知らない営業が多い、ってことが分かったんです」と高瀬様はいいます。
そこでパーソルビジネスプロセスデザインは、プロモーション施策などの助言を行います。その施策を実際に現場で進めていくと、FAQへのアクセスは増加していくことに。しかし、決算月となる3月を迎えると、またしても問い合わせは増加してしまいました。疲弊した現場からは「もうナレッジは作ってられませんよ」「一旦ナレッジはやめましょうか」といった声も出てきてしまったようです。
そんななかでもパーソルビジネスプロセスデザインは伴走を続けました。委員会に参加してアドバイスをしたり、コーチや公開者へのレクチャー会でレクチャーをしたり、毎週のように会話をしながらサポートをしていったのです。青木様が「この辺りは、しんどい時期ではありましたね」と振り返ると、高瀬様は続けて「でも、パーソルビジネスプロセスデザインさんに伴走していただけたのは大きかったですね」と笑顔を見せました。
導入の効果
営業部門のFAQ利用率があがり、問い合わせも削減、社員のモチベーションも向上。組織全体にも良い影響が
「実感できたのは、FAQを公開して1年後ぐらいですかね。データでも効果が表れてきたんです」と高瀬様が言うように、1年が経つと「問い合わせを5%減らす」という目標は達成しており、セルフヘルプのFAQも拡充されるなど、営業との接点も豊かになっていきました。
実際、途中で大きなイベントとして『社名変更』がありましたが、既にKCSを導入して運用していたため、大きな混乱も起きなかったようです。複数のガイドが出てきても、分かりやすくナレッジ化され場所も整理しているため、すぐにアクセスして回答できるようになっていました。
「KCSを導入しないまま『社名変更』を迎えていたら乗り切れなかった。それぐらい、KCSを導入したのは大きな意味があることでしたね」と青木様は胸をなでおろしながらいいます。
また、対応がラクになっていくにつれ現場のスタッフにも「やるといいことがある」という意識が広がり、その意識がさらにナレッジの拡充につながっていく、という好循環の動きが生まれていったようです。高瀬様も「今までは降り注いでくる火の粉を振り払うような仕事でしたけど、国際的に認められたナレッジマネジメントを自分たちで構築できたことで、自信を持ってやっている感じがすごく出てきました」と口にしました。
実は以前は、対応が遅れたことで営業から怒られてしまい、モチベーションが下がっていた若手も多くいたようなのです。しかし、KCSの導入によってモチベーションは一転。「問い合わせが多くなる3月でも誰一人として弱音を吐く人はいなくて、『さあナレッジを作ろう』とか『更新しよう』という声に変わっていましたね」と青木様。富士フイルムサービスクリエイティブ様では社員の“やりがい”を可視化するため『エンゲージメントスコア』を計測しているようですが、KCSを導入した部署はエンゲージメントスコアも高く、「やっぱり、いい影響が出たんじゃないかな」と高瀬様も笑顔を見せました。
また、1年前の3月は“他のグループに応援を依頼する”事態になっていたCADグループですが、KCSを導入して1年が経った同じ3月には、“別のグループに応援に出ていく”ほど余裕が生まれていたといいます。「他のグループにすごく感謝されました」と青木様は仰っていましたが、『いち部署のKCSの導入』が組織全体にも貢献する動きになったようです。
さらに勢いはとどまることがありません。富士フイルムサービスクリエイティブ様は、ITサポートサービスにおける世界最大の団体であるHDI-Japanより『KCSアワード』も認定されることになったのでした。
今後の展望として、「蓄積したナレッジをお客様にも展開していきたい」「DX化として、チャットボットだとか自動回答みたいなものにも取り組んでいきたい」とお二人は意欲的に語り、「引き続きパーソルワビジネスプロセスデザインさんにサポートいただけたら」と期待を口にしてくださいました。
お客様プロフィール
富士フイルムサービスクリエイティブ株式会社
富士フイルムビジネスイノベーションおよび販売会社のバックオフィス業務を担う会社として、2011年に誕生した同社。契約・売上計上・請求関連の事務サービスを提供する「事務サービス部」、富士フイルムビジネスイノベーション製品に関する問い合わせや消耗品の受注に対応する「カストマーコンタクト部」、営業の生産性向上をサポートする「SBO統括部」を構え、富士フイルムグループの発展を支えています。
本社所在地 | 東京都中野区本町2-46-1 中野坂上サンブライトツイン |
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設立 | 2011年4月1日 |
代表者 | 加藤 純一 |
従業員数 | 約1,500名(2022年7月時点) |
担当者コメント
CADグループの皆さまの印象として、驚異的なスピードでKCSを取り入れ、実践なさっているということに尽きます。社内外問わずご相談いただき、ナレッジマネジメントについて伴走してきた経験から、通常、3年はかかると思われる計画のところ、わずか1年で駆け抜けてこられたと言えます。成功要因の一端は、まぎれもなくCADグループの皆さまの純粋さ、組織統制の強さが挙げられます。これらが礎となってグループ内の強固な関係のうえに成りたつ実績だったのではないでしょうか。CADグループの皆さまにおかれましてはナレッジを中心として、これまでよりも同社の経営目的に資する活動へ躍進なさると確信しております。
※掲載内容は取材当時の情報です。