導入前の課題
会場での試験運営が大きな負担。採点は「“めまい”がする」
一般社団法人 日本免震構造協会様では、建設業及び免震部材製造業、設計事務所等の企業会員や学識経験者の個人会員から構成された、300名程の委員が委員会活動を行っています。委員会活動は多岐にわたり、資格制度委員会もその中の一つです。
資格制度委員会は、20年前より『免震部建築施工管理技術者』という資格試験を実施していました。
この資格は、1級建築士か1級施工管理技師という国家資格を持っていないと受けられません。そのため、多くの受験者を相手にしているようなものではありませんでしたが、それでも受験者数は毎年400名から500名ぐらいの間で推移。多いときで550名ぐらいほどになったと言います。
しかし、400名から500名ぐらいの規模であっても、試験運営においては苦労の連続だったようです。試験の方法としては、全国の受験者が東京・渋谷の大きな試験会場に集まり、まず、講習を受けてもらいます。そして講習内容をある程度理解してもらったうえで引き続き試験を行う、というやり方をしていたのです。
また、400名から500名ぐらいの規模であっても、試験となれば席に余裕を持たせる必要があるため500名以上のキャパシティで考えなければなりません。しかし、渋谷でも500名以上を集められる会場はそんなに多くないうえ、あってもコストがかなり高くなっていたようです。
さらに、コストだけでなく『準備』が特に大変だったと言います。委員長の舘野様は、当時を振り返って次のように語ります。
「会場の設営準備や受付は大きな負担でした。それと、厳格性が問われますので、試験問題と解答用紙の管理、運搬は特に気を使いましたね」
くわえて、受験者のコントロールも大変だったようで、「400名~500名を制御しなければならないので、我々委員も含めてスタッフ15名ぐらいで当日は会場入りして運営していました」と続けます。
そしてさらに、当日は「受験者にも負担があった」と説明くださいました。
「北は北海道、南は沖縄まで、全国から集まりますので受験者も大変でした。前泊をしなければならない人達もいましたし、当日に遠くから来る方だと交通機関の影響も絶対あるわけです。当日は、そうしたイレギュラーな事態も発生します」
また、一番大変だったのは『採点』だったようです。
採点は、「試験が終わった後に8人~9人の委員で、3日を掛けて採点をしていた」とのことでした。
「採点して家に帰ってベッドに入ったら、“めまい”がしていたぐらいですよ」と、苦笑いを浮かべながら振り返ってくださいました。
取り組み内容
コロナ禍を機に、IBTへ舵取り。重視したのは『厳格性』
コロナ禍がやってくると、“試験会場に受験者を集める”ということができなくなり、必然的に「業務変革」や「デジタル化」を余儀なくされることになりました。
しかし、「しばらく中止して、立ち止まって考えよう」ということができない事情もあったようで、舘野様はこう説明します。
「ゼネコンが仕事を受注するにあたって『資格者を配置する』ということが義務として明示されている場合があるんです。『この資格を取って、来年の春の現場の所長をやる』といった計画をしている人達もいますので、安易に『今年はやめます』と言える資格ではないんですよ 」
そんななか、事務局のスタッフが「なにか良い方法はないか」とリサーチをしているなかで見つけたのが、パーソルビジネスプロセスデザインの提供するIBTでした。特にポイントとなったのは、「監督員がリアルタイムに受験者を監視する」という『厳格性』の部分だったようです。また、既にある程度の人数規模による実績があったため、その点についても安心いただけたようでした。
パーソルビジネスプロセスデザインのサービスについて興味を持っていただいた点について、舘野様は次のようにコメントくださいました。
「実績がないと私たちも採用できないので、それなりの人数規模で実施されていたのは大きかったです。あと、他社とも比較もしましたけれども、他社は全部『AIでやっている』ということでした。しかし、本人確認や監視については、やはり『直接、人間が見てやる』というのが泥臭いですけど確実で良かったんですよね」
そうして正式にご依頼をいただくことになりましたが、実装する際にはいくつか苦労もありました。ひとつは“試験問題の表示”です。
今回の『免震部建築施工管理技術者』の試験では、それぞれ試験問題に意図を持たせて作っており、紙の状態であれば受験者が試験の意図を把握して答えやすくなっていました。しかし、それがPC画面上になった場合に「その意図が伝わるのか」を懸念されていたのです。
「ディスプレイ上で表示された時にどうなのか、というのはすごく気にしましたね。画面をスクロールしないと追えないような内容にしたらダメですし、持ってるPCのパフォーマンスに起因するところもありますので。そこでパーソルビジネスプロセスデザインさんには、本当に申し訳ないんですけど、『画面の構成はこうならないか』『こうすることはできないか』ってしつこいぐらいお願いしました」と舘野様。
実際、運用をはじめて1年目ではなかなか解決できなかったところもありましたが、2年目になるとほぼ解決できました。そのくらい、時間をかけて進めていったのです。こうした対応について舘野様は、「この辺りの作り込みをパートナー企業さんとしてやってもらえるかどうか、というのは大きいですよね。『これ以上はできません』と言われてしまうと、ちょっと我々も仕事がしにくいので」と評価してくださいました。
導入の効果
採点は“半日以下”で、ストレスは半減。「悪いところが全くない」
IBTを導入して2年が経過すると、格段に変化が出てきたようです。舘野様は「僕のストレスはもちろん、事務局のストレスも半減しましたね」と声を弾ませます。
さらに、『8人~9人の委員で、3日をかけていた』という採点作業については、「今は3人で、半日以下で終わらせることができています。これは業務効率として大きいですよね」と続けます。
採点業務については、やはり「記述問題の採点」がかなり短縮されたようです。以前は受験者が書いた文字を解読するのに時間を要していましたが、画面に文字入力をしてもらうことで判読の時間が激減したのです。
そして、試験前に行っていた「講習」については、日本免震構造協会様が動画を制作して『動画受講』という形式に切り替えていました。「自分の空いてる時間にいつでもどこでもコマ割りで受けられるので、ユーザーにとってもメリットがあると思います」と舘野様。
受講者が一か所に集まることもなくなったため、感染対策にもなりますし、移動のコストは大幅に下がる。そして、ユーザーの利便性は上がり、運営側としても業務効率が上がる。舘野様はそういったメリットを列挙しながら、「悪いところがないですよね。デメリットはゼロではないですけども、あっても小さいものですから、トータルで考えたら悪いところが全くない」と断言されました。
逆に「会場での試験実施は、もうやることはないのでしょうか?」と舘野様に質問してみると、「いえいえ、もう元には戻れませんよ。嫌です。もしどこかの偉い人が『会場でやりなさい』と言ったら、私は降りますね(笑)それくらい、この免震の資格についてはIBTが合っている」と語気を強めながら口にされました。
ただ、今後の改善点について伺うと「監視画面が少し見にくいので、もう少し分かりやすくなるといいかな」といったアドバイスもいただきました。舘野様も「使いながら進化させていくものですよね」と言いますが、まさにパーソルビジネスプロセスデザインとしても様々な意見を頂戴しながら改善を進めているところです。
最後に、今回のような建設業界×IBTという組み合わせについて舘野様は「これから広がると思う」と口にされました。その理由として、建設業界には資格試験が多いこと。そして、成功しているIBTの事例がまだ多くないこと。そういった点から「建設業界におけるIBTの市場は拡大するから、パーソルビジネスプロセスデザインさんには頑張ってもらわないとね」と激励のお言葉をいただきました。
お客様プロフィール
一般社団法人 日本免震構造協会
日本免震構造協会様は、建物の免震構造等の適正な普及と技術の向上に努めている団体です。日本という国は、世界でも有数の「地震国」です。地震による災害は、国民の生活においてはもちろんのこと、社会的にも大きな影響を与えるものです。そのなかで『免震構造』というのは、地震動からくる破壊的な力を免震部材によって柔らかく受けとめ、軽減させることができます。近年、この『免震構造』が注目されており、様々な技術開発が行われ、免震構造の建物が次々に実現しています。日本免震構造協会様は、この『免震構造』を広く普及させて国民生活を向上させようと、日々尽力されていらっしゃるのです。
本社所在地 | 東京都渋谷区神宮前2丁目3番18号JIA館2階 |
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設立 | 1993年(平成5年)6月17日 |
代表者 | 会長 中澤 昭伸 |
担当者コメント
日本免震構造協会様と同様に、IBT試験導入の際にどのお客様も一番気にされるのは、試験の『厳格性』の担保です。我々は、“人の目によるリアルタイム監視”で、そのお悩みにお応えしています。AIではなく“人”が対応することは、受験者の心理的な抑止効果が期待でき、さらには、柔軟性と即時性を持たせることができるため、『厳格性』を担保する有効な手段と考えています。今回のインタビューを通して、お褒めのお言葉だけでなく、これからに向けての貴重なご意見も頂くことができ、大変うれしく思います。今後もお客様のお悩みに寄り添い、IBTサービスをより良いサービスとしていけるように進化し続けてまいります。
掲載内容は取材当時の情報です。